祖父(東京在住、95歳)の不調は
かなり深刻なものだったようでした。
入院二日目に電話をしたときは
受話器の向こうに
祖父が出てはくれたのですが
私が何を言おうとも祖父は無言で、
その背後からヘルパーさんが
「Norizoさんが心配しちゃいますから!
ね、一言、何か一言だけでも
言ってあげてください!」
と懸命に励ましているのが聞こえ、
そしてその声援に背中を押されるように
祖父は必死の思いで力を振り絞り
「・・・ウウ・・・」
祖父よ・・・
頑張ってくださってありがとう・・・
その後しばらく
「ちょっと今は電話を取り次げません」
という状態が続きまして、
やっと再び話が出来たのが
祖父が病院に入ってからちょうど7日目。
ドキドキしながら東京からの音声に
耳を済ませていた私への
祖父の弱々しい第一声は
「・・・まだ生きてたよー・・・」
そ、祖父よ・・・
生きていてくださって何よりです!
「ところでお前な・・・お前の母さんには
もう言ってあるんだけどな・・・
俺に万が一のことがあったら・・・
お前は俺の残された貯金から
小遣いをもらうことになっているから」
「お祖父様・・・そういう話は・・・」
「まあ俺の治療費やら何やらで
俺の貯金がいくら残っているかも
実際怪しいもんなんだけどな・・・
でもな、勘定した結果、
金が少しでも余っていたら、
そこからお前に小遣いが出るから。
金額はお前の母さんに言ってある!」
どうしよう・・・
普段だったらここで軽快に
お金なんかいらないんですよっ!
とか笑い飛ばすのが常なわけですが、
状況が状況なだけに私は本気で
言葉と胸が詰まってしまうのですが・・・
「うん、お前に金のことを
伝えておけてよかった・・・安心した。
話が出来てよかった、うん」
「ええ、私もお話できて嬉しいですよ」
「だからな、お前が今度帰ってきたとき
お前が対面するのは俺の写真だとは思うが・・・」
「・・・お祖父様・・・
この状態でまさかの写真ネタ 、さては
相当元気になってきていらっしゃるでしょ?」
「いや、駄目だ。もう力がないんだ。
でもこれは仕方のないことだからな・・・
この世に名残はあるけれども、
あるけれども、
でもこればっかりは仕方がない」
「仕方がないとか言わないでくださいよ・・・」
「まあだから話を戻すと、
お前が今度会うのは俺の写真なわけだが」
「だから写真とか言わないでください。
もう少し頑張ってください。
私もまもなく帰国するんですから」
「まもなく帰国してくれても写真だよ」
「いいから!そこは根性で3Dで待っていて!」
「すりーでーって何だ?」
「だからほら、立体的な感じで!
二次元ではなく三次元でお会いしましょう!」
「お前となあ・・・会えたらなあ・・・
直接会ってもう一度話が出来るなら
話しておきたいことはあったんだが・・・」
「じゃあ話しましょうよ!
本当にすぐですから!私が帰るのも!」
「うん、でもとりあえず、
小遣いのことは忘れるなよ?」
そんなことを
念押ししてくださらなくても
私は結構なんですよー!
「ああ、でももう、これ、切るな。
俺は疲れた。でも話せてよかった。
電話してくれてありがとうな」
「ありがとうとか、そんなお礼の言葉、
言われるような真似はしていませんから!
また明日も電話しますから!ね!」
「明日か・・・うん、俺が話せたらな・・・
うん・・・明日な・・・うん、ありがとう!」
「こちらこそありがとうございます!
ではまた明日!明日も電話しますからね!」
祖父がヘルパーさんに受話器を渡す音を
ぐすぐすと鼻をすすりながら聞いておりましたら、
そこでヘルパーさんが電話口に出てきっぱりと
「というわけでNorizoさん、
貴方のお祖父様、明後日に退院ですから」
・・・はい?
「あの・・・祖父の容態は・・・?」
「あら、お母様からまだ
お聞きになっていらっしゃらないんですか。
お祖父様、回復なさったんですよ」
「か、回復・・・?」
「詳しくはお母様からお聞きになってください。
じゃ、明日の電話もお待ちしておりますから!」
回復ってどういうことですか!
とあわてて実家に電話をしましたら。
・・・祖父、全快したそうです・・・
もちろん年や体の不都合は
以前と同じく残ってはいるわけですが
数値的には問題なしの状態だそうで・・・
「え?でも本当にそれで
退院しちゃって大丈夫なの?」
「だってこのまま入院を続けていても
お医者は何もすることがないレベルまで
元気になってくださったんだもん、
入院を続ける意味がないじゃない」
「あの、一時期祖父の意識が
混濁したりしていた問題はさておき、
ほら、肺が相当弱っていて、
これからは酸素マスク必須だって
お医者様がおっしゃっていたんでしょ?
マスク付きで退院の予定なの?」
「ああそうそう、一時期はね!
でも肺の数値は完全に元に戻ったの!
だからマスクなしでご退院よ!」
電話を切ってからわが夫(英国人)に
事態の展開を告げましたら
「君のオジーサマはスーパーマンだねえ!」
ええ・・・本当に・・・
と、この話が数日前の出来事で、
さっき実家に電話をしたら
すっかりいつもの調子になった祖父が
「なんか気がついたら退院していた!
で、お前はいつ帰ってくるんだ?」
・・・ご復活、何よりです!
というわけで本日よりブログ再開!
皆様よろしくお願いします!
ちなみに夫は
祖父の写真ネタについても
「僕はね、そういう
不滅のユーモアのセンスって
得難い資質のひとつだと思うよ」
と心底感心しておりました
ええ・・・本当にね・・・
ちなみに祖父が私へのお小遣いに
ここまで執着するのは
たぶん前回のアレ のせいだったのでは、と
戦中派は義理堅くていらっしゃる
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ブログをお休みしている間も
かなりの数のクリックを
毎回いただいておりました
ありがとうございました!