私は今、59歳。
43年間、オーボエとともに生きてきた。
長い年月の中で、何千回という本番を経験し、たくさんの人と音を交わし、喜びも悔しさも、すべて音楽とともに味わってきた。
しかし、年齢を重ねるにつれ、ふとこんな思いがよぎるようになった。
「この先、自分はまだ演奏者でいられるのだろうか」
「もう誰も、私の音を必要としていないのではないか」
若いころは夢中で走り続けてきた。音楽は、私にとって“前に進むためのエネルギー”だった。
でも、今の私は、あの頃のようには吹けない。指は昔ほど滑らかには動かず、ブレスにも工夫がいる。
それでも、不思議と音楽は、今の方がずっと深く心に響いてくる。
最近よく思うのは、老いとは「衰え」ではなく、「別の音楽が始まる」ことなのではないか、ということ。
若さゆえの勢いや完璧さではなく、長年生きてきたからこそ出せる、**“語りかけるような音”**がある。
そしてそれは、聴く人の心に、静かに、確かに届くのだと思う。