毎日のように庭にやってくるその子たちのことを、
ボスとスネ夫と呼ぶことにします。
彼らは口は悪いし、
ちょっとしたことでけんかして友達に殴りかかったり、
物は散らかしっぱなしだし、
注意しても、ちっとも言うことをききませんでした。
ボスは5年生で、特にすぐに手が出ます。
スネ夫は4年生で、ボスほどけんかっ早くはないけれど、
口の悪さと言うことをきかないのは一緒でした。
スネ夫が小屋の中に置いてあった
ロケットストーブを見つけて、
「これなんですか~?」
と言うので、
「ロケットストーブって言って、
木が、よく燃えるストーブだよ。つけてみようか?」
と言って、剪定した木切れを差し込み、
火をつけて見せました。
しばらくすると、
木は、ゴ~という音とともに勢いよく燃え始めました。
「ゴーって言う音がロケットの発射の時みたいな音がするから
ロケットストーブっていうんだよ。」
スネ夫は、火に魅了され、晃とともに、
木の枝の先に火をつけて遊びだしました。
火のついた木の枝を振り回して危険なので、
声かけながら、注意しながら、火遊びを許しました。
火は危険なので、バケツに水を入れて用意すると、
火のついた枝をジュ~って、
繰り返し繰り返し火をつけては消し、遊びました。
スネ夫は、その後も、
「火つけて~」と、火遊びにはまってましたが、
「大人がいる時しか火はつけられないし、
私が忙しい日は、火はつけないよ」と伝えて、
時々のお楽しみとしました。
その子達が来るようになってから、
ノコギリとトンカチと釘を買い足し、
端材をもらってきて、子供たちに自由に使わせました。
男の子がまず作るのは剣。
近所の子達も集まって、
みんなで競うように剣を作りました。
女の子も、トンカチや釘を使うのが初めてなんだけど、
「やってみてもいいですか?」と言って、
なにやら作り出します。
ノコギリの使い方がうまくなかった子も、
「足で押さえて、引くときに力をいれてごらん」と、
ちょっとコツを教えてあげると、
どの子もだんだん上手くなっていきました。
ここはなんだか楽しいみたいだぞ!と
アンテナが立った子供達が、
だんだん集まってくるようになりました。
ある日ボスとスネ夫が体格のいい子を連れてきました。
その子は力も強く、
他の子に戦いを挑んでくるような子でした。
そのジャイアンが弟を連れて来るようになったり、
近所の子も次々集まり、
多い時で十人ほどの子供達が来るようになっていました。
ボス、ジャイアン、スネ夫のこの三人組、
ボスは乱暴で、口も汚く、言うことは聞かないし、
気に入らないことがあれば殴る蹴る。
でも、遊びを作り出すことに関しては天才的で、
次々、大人がびっくりするようなことを考えつくような子でした。
スネ夫は、口の汚さと、乱暴なところはボスと同じでした。
いつも誰かとつるんでいて、
自分からは主導権を握ることはしない、2番手タイプでした。
ジャイアンは、初めてうちの庭に来たときに、
「この土地、何円するの?」
「俺、大人になったら、こんな子どもの遊び場作る!」
と言ってくれた子です。
でも、ボスやスネ夫と同様に、
乱暴で、自分の強さを自慢するような子でした。
そのうち、
それまで平和に遊んでいた子達は、
彼らが来ると、距離を置いて、
遠巻きに見ているようになりました。
庭にはサクランボの木が2本あり、
一本は、小さいながらもたくさん実を付ける木で、
もう一本は、大きい実がなるはずなんだけど、
うまく受粉できなくて、ほとんど実をつけない木でした。
植えてから十年ほど経ち、
木もだいぶ大きくなっていたので、
2本の木を眺めながら、
実があまりならない方の木に、
子ども達に秘密基地を作らせようか!と、
主人と話し、
休日に、どの枝を残すか、
どことどこの枝に木を渡せばいいか、
吟味しながら木を剪定していました。
剪定してるところに、ひょっこりボスがやってきて、
「おれも手伝う!」
と言ってきました。
「じゃあ、木に登って、そこの枝を切り落として」
「次はこの枝」
と、指示を出しながら切ってもらいました。
暗くなってきたこともあり、
「あとは、土台になる木を固定するから、
基地を作るのは、この木を固定した後ね」
と話すと、その日は剪定だけしてボスは帰って行きました。
翌日、ボスは来ていなくて、
代わりに、ジャイアンとスネ夫がやってきました。
木の上に土台が出来てるのを見て、
「なにこれ!ここに基地作っていいの?」
と、嬉々として木の上に板を打ち付け始めました。
その日のうちに、
釘はあちこち飛び出してるけど、
子ども二人が乗るには十分な基地が出来ました。
ジャイアンは、
「おれんち、じいちゃんが大工だから、
大工仕事は得意なんだ!」
と言うわりに、あちこち釘は飛び出て曲がっています。

その翌日、
用事があって夕方車を走らせていると、
すごい形相で走っているボスの姿を見かけました。
その顔には、
「ちくしょ~!あいつら、
俺のいない間に勝手に基地を作りやがって!!」
と書いてあるようでした。
きっと、学校で、ジャイアンとスネ夫が、
「おれたち、昨日、秘密基地作ったんだぜ!」
って、ボスに自慢したんだろうな~と、
思うような顔でした。
