前回の話

リカティ伝説殺人事件を最初から読む

 

M田は物陰に身を隠し、クス男が部屋から出てくるのを待った。

 

10分経過。

 

クス男はまだ出てくる気配がない。

 

20分経過。

 

クス男はハブの部屋で一体何をしているのだろうか。

 

30分経過。

 

ハブの部屋の前に新たな人影が現れた。

 

翔子だった。

 

翔子は素早く辺りを見渡すと、サッと部屋に入っていった。

 

なぜ、クス男に続き、翔子まで?

 

M田はわけがわからなくなった。 

 

昨日、クス男があからさまに翔子を避けている態度が気になっていたが、

実はカムフラージュで、二人はグルだったとか?

 

もしかして、二人が事件に関わっているのだろうか。

 

5分後。

 

翔子と入れ違いに、クス男が部屋から出てきた。

 

M田は翔子が部屋から出てくるのをジッと待っていた。

だが、翔子はなかなか出てこない。

 

あの部屋には二人の遺体があるんだぞ。

翔子さんは一体部屋で何をしているのだろう。

怖くないのだろうか。

 

M田はハッとした。

もしかして、クス男が事件の真犯人で翔子を呼び出し、

彼女まで手にかけてしまったとか・・・?

 

今、ハブの部屋には、3人の遺体があるかもしれない。

そう考えると、ガクガクと震えた・・・。

 

しかし、M田の嫌な予感は外れた。

30分後に翔子が涼し気な顔をして、ハブの部屋から出てきたからだ。

 

M田はホッとした反面、背筋がゾクリとした。

 

翔子さん、あなた一体何者なんだ・・・。

 

とにかく、今のうちにサングラスを取り返さないと!

 

M田は、勇気を出してハブの部屋に足を踏み入れた。

 

すぐさま、二人の遺体が目に飛び込んでくる。

 

M田はなるべく遺体を見ないようにして、部屋を捜索し始めた。

 

部屋の奥のTV台のところに、見覚えあるサングラスを発見して、そっと手に取る。

 

あったぞ!

 

サングラスのアーム部分にはM田のイニシャルが刻まれていた。

 

これは、まぎれもなく私のサングラスだ!

 

サングラスの横には財布も置いてあった。

 

・・・もしかして、私から奪った3万円が入っているかもしれない。

 

いや、ダメだっ。

いくらハブが盗人でも、他人の財布を見るなんていけない!

 

M田はしばらく思い悩んだが、

誘惑に駆られて、そっとハブの財布を開けてみた。

 

「これは・・・一体・・・」

 

財布の中身は空っぽだった。

午前11時半。

昼食は12時からだが、一人で部屋にいるのも落ち着かないので、

M田は早めに食堂に行くことにした。

 

ラウンジを通りかかると、女性3人がテーブルで話し込んでいた。

 

「あら、M田さん」

 

莉多子に声をかけられ、M田は内心ドキッとした。

翔子の姿があったからだ。

 

M田は冷静を装いつつ、話しかけた。

 

「女性だけで、何を話していたんです?」

 

「翔子さんと和歌子さんと、婚活かるたについて話していたの」

 

「婚活かるた?」

 

「ええ。発見時、ハブさんは「し」、貴子さんは「ね」の取り札を握っていたじゃない」

 

「ああ、そうでしたね」

 

「それで、かるたの句を確認していたのよ」

 

莉多子は婚活かるたの読み札をM田に見せた。

 

信じるな!イケメンの甘い言葉

 

年賀状にモヤっとする
 

「なるほど、ハブさんはイケメンなので「し」の札と合致しますね」

 

M田が興味深げに札を手にとる。

 

「ただ、貴子さんが「ね」の札を握っていた意味がわからないのよ・・・」

 

「貴子は交友関係が狭くて、ここ数年、年賀状を出し合っている人はいませんでした」

 

和歌子が説明する。

 

「そうなると、やはり句の意味は関係ないのではないでしょうか。犯人は相手に殺意を抱き、単に「しね」という言葉を残したくて、この2つの札を使ったのだと思います」

 

M田が分析する。

 

「そしたら、やっぱり貴子がハブを恨んでこんな恐ろしい計画を・・・」

 

和歌子の顔が悲しそうに歪む。

 

「まだ部屋の鍵は見つかってないし、他に真犯人がいるかもしれないわ。警察が捜査を始めれば、すぐに犯人がわかるはずよ」

 

常に冷静さを失わない翔子。

 

翔子さん、一体あなたは何を知っているんだ。

M田はもどかしさのあまり、ついわけのわからないことを口走ってしまった。

 

「もしかすると、真犯人はリカティかもしれませんな」

 

「リカティですって?」

 

目を見張る莉多子。

 

「実は私、昨日リカティらしきものを目撃しまして」

 

「あ、そうだったわね。私も見ましたよ」と、翔子も反応する。

 

「えっ、そうなの?和歌子さんも見たの?」

 

「いえ、私は残念ながら見てないです」

 

「もしかして・・・リカティの祟りかもしれないわ」

 

サーッと青ざめる莉多子。

 

「リカティの祟り?」

 

M田が聞き返す。

 

「リカティは婚活の神様なの。だから、本気で婚活している人に対しては最強の婚活パワーを与えてくれるわ。だけど、同時に祟り神でもあるの。婚活を装った遊び目的など、婚活を利用して他人を不幸にする人はリカティに祟られてしまうのよ」

 

「ひょえー、リカティってそんな怖い神様だったんですね。でも私は本気で婚活しているから、絶対に祟られませんよ」

 

「そうね、カモさんは安全だわ」

 

「リカティの祟り…。もし本当なら、他にも被害者が出るかもしれないわね」

 

翔子が意味深につぶやいた。

 

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