■TSSCの堀之内社長に聞く
――1992年の設立時は日米貿易摩擦があり、米国の車部品メーカーへの技術支援が目的でした。役割の変化はありますか。
「トヨタは創業当初から米フォード・モーターや米ゼネラル・モーターズ(GM)に勉強させてもらっていて、米国への恩返しが一番大きな目的だった。当時、米国トヨタの生産部門トップだった張富士夫相談役が豊田章一郎名誉会長に提案して設立したと聞いている。活動範囲は全米で、ケンタッキー州に拠点があり、米中西部を中心とした『ラストベルト(さびた工業地帯)』に顧客が多かった」
「90年代に支援したのは米老舗家具メーカーのハーマンミラーのミシガン州の工場。生産ラインのムダを省き、設備の床面積や在庫を減らした。生産能力は3割増え、受注から出荷までは60時間かかっていたが、4時間以下になった。2011年にNPO法人になり、企業からは費用を得て、社会貢献向けの活動を広げている」
――どういった支援先が増えていますか。
「病院からのニーズが高く、小児科、救急医療、眼科などの業務の改善支援をしている。米国でも高齢者が増え、医師と看護師は仕事はどんどん忙しくなっている。例えば手術ではメスなど道具の洗浄、準備が必要だが、そろえられなくて手術延期などもあった。カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)付属病院では効率化で、職員の帰宅時間が午後5時ごろになり、2~3時間早まった。診療できる患者数も増え、いまは医療機関だけで10程度のプロジェクトが進んでいる」
――経営コンサルタントとの違いは何ですか。
「コンサルは経営診断と解決の提案までで、やるかどうかは顧客の判断。我々は現場に入って、問題を『見える化』して改善する分野を絞る。そこから一緒に手を汚して改善して、成功体験を一緒につくるようにしている。業界ごとに自分たちの勉強にもなり、今後は自動車生産へのフィードバックも考えている」
――課題と今後のビジョンは。
「以前は車で1時間の場所にケンタッキー工場があり、3時間走ればインディアナ工場もあった。トヨタ生産方式を伝えることができる人材を採用しやすかったが、テキサス州の拠点が移り、工場まで5時間かかり、採用が課題だ。ただ18年はTSSCとして初めて、新卒が入る予定。社会貢献をしたい若者が増えている」
「今後は全業種を対象にして、これまで経験したことのない小売業や建設業にも支援を広げたい。最初はどの支援先も半信半疑。組織のトップがしっかり旗振りし、一緒に改善した従業員が居続けている支援先は効果が大きい。オーストラリアでのTSSCの立ち上げをサポートし、今後はほかの海外での拠点立ち上げの支援にも力を入れたい」
