脱・自前 米から「シェルパ」自動運転・AIの開発加速 (2018/4/7 日本経済新聞 工藤正晃)
自動運転や人工知能(AI)は優秀な人材が決め手で、働きやすい環境や待遇の良さが競争力を左右する。「グーグルの人事制度も研究中。報酬や意思決定の仕組みをがらりと変えないと競争に勝てない」(トヨタ役員)と、新会社で脱・自前主義を加速する。
トヨタは1月の役員人事ではTRI代表のギル・プラット氏をトヨタ本社の副社長級「フェロー」に引き上げた。豊田章男社長はプラット氏を険しい山を登るときのパートナーである「シェルパ(案内人)」に例え、1万人規模の先進技術開発カンパニーのナンバー2という中枢に置いた。プラット氏は「燃費や性能をカイゼンし続けるトヨタの力は世界で最も優れる」とみるが、これまで技術面での車産業の変化は「ゆっくりだった」と指摘する。
だが車は油を燃料に走る「アナログ機器」から、多くの電子部品を搭載して外部とつながる「デジタル機器」に変わりつつある。この「100年に一度」といわれる激変期は巨大な車市場に他から新規参入するビジネスチャンスにもなる。
グーグル系は米国で地球200周分の公道走行テストを終え、英ジャガー・ランドローバーなどと提携し、年内に世界初の無人輸送サービスを始める計画だ。14年創業の仏ナビヤは無人運転車で既に米国などの約30都市で実証を始めた。開発担当役員のパスキャル・リクリユ氏は「1つのビジネスモデルに経営資源を集中し、車両とソフトの一体開発で大手に先行できる」と自信をみせる。
かつて日本メーカーが強かった携帯電話も、米アップルやグーグルがスマートフォンを武器に市場を席巻した。車市場も二の舞いになるリスクがある。
トヨタはラスベガスの家電見本市「CES」で1月、電気自動車(EV)のコンセプトを発表した。1台で宅配や物販など多様なサービスを提供でき、今までの「乗用車」とは毛色が全く違う。会場の米国人エンジニアは「実現性は分からないけど、保守的な印象のトヨタがこんな車を出すとは面白い」とつぶやいた。
主導したのは日本の開発部門ではなく、マイクロソフトとの合弁会社とTRIだった。他社の自動運転システムを載せることもでき、緊急時はトヨタの安全ソフトが作動する。日本本社では反対論もあったが、豊田社長は「過去の成功体験は捨て挑戦を応援しないと未来はない」との考えだ。
コツコツとカイゼンを重ねることの重要性は不変だが、イノベーションは非連続的な変化をもたらす。「登山の途中で別の山にジャンプし、谷に落ちて、また登る努力と勇気が必要」(プラット氏)。米国人のシェルパと力を合わせ、目の前に迫る道なき道を切り開いていく必要がある。
