複弦の魔法 | ショピンの魚に恋して ☆羽生結弦選手に感謝を込めて☆

ショピンの魚に恋して ☆羽生結弦選手に感謝を込めて☆

清冽な雪解けの水のようにほとばしる命の煌めき・・・
至高のアスリートにしてアーティスト、
羽生結弦選手を応援しています。

André Gagnon - un piano sur la mer

 

この曲に出会ったのは今から二十数年ほど前であったか・・・。

クラシック・ピアノを弾くことを諦めた私は、それでもピアノから全く離れることもできず、かといって若い頃のように夢中になることもできず・・・。

そんな時、比較的譜読みが易しいアンドレ・ギャニオンの曲がいつも寄り添っていてくれた。

その昔、日本のテレビドラマで使用されていたこともあるので、なんとなく懐かしく覚えている方も多いかも知れない。

作曲家であり、ピアニストでもあるアンドレ・ギャニオン(194281日生)は、カナダのケベック州に何と19人兄弟の末っ子として生まれた。

10歳でモーツァルトの曲を弾いてデビューしたほどの神童であった。モントリオール音楽院を経て、政府奨学金でパリに留学した、もともとはクラシック畑のピアニストである。

 

残念なことに最近は新しいアルバムはほとんど出されていないかと思う。

たくさんのCDが発売されてはいるが、まず1つお勧めしたいのはやはり「ピアノ・ソリテュード」。珠玉のアルバムである。

ピアノ・ソリチュード/アンドレ・ギャニオン

 

上述の「un piano sur la mer」は、日本語のタイトルで「潮騒」となっている。

日本で発売されているアルバムで多少残念に思うのは、仏語のタイトルと日本語のタイトルが、時に大幅にかけ離れてしまっていることがあるところかもしれない。

ただ、この「潮騒」に関してはこれもまた良いかなと思う。仏語を直訳すれば「海の上のピアノ」となる。

最も有名な曲は「めぐり遭い」かもしれないが、これも仏語は「Comme au premier jour」、「初めて出会った日のように」となるだろうか。

こちらからどうぞ↓
https://www.youtube.com/watch?v=0HMx9PYA-G8

いわゆるヒーリング音楽と呼ばれるものは、英米からもたくさん出されてはいるが、彼の音楽が独特な雰囲気を漂わせているのは、一つは、彼がフランス語文化圏の作曲家だということが関係しているように思う。

語圏とフランス語圏の違いというのはかなり文化的に大きなものがあるのではないかと感じている。

フランス語には英語の文化圏にはないような柔らかさ、ニュアンスを感じることがある。

直接的ではない、間接的な柔らかさである。英語が窓から直接差し込む光だとするならば、フランス語のそれはステンドグラスから差し込む柔らかな光かもしれない。

それがアンドレ・ギャニオンの音楽に、独特な光を与えているような気がする。

彼のピアノに合わせて結弦くんの素敵な動画を作ってくださっている方もいらしたが、結弦くんの持つ独特な柔らかさ、ニュアンスが彼のピアノ音楽にとてもよく合っている。

結弦くんといえばその名前の「弦」から、以前は、よくヴァイオリンを連想していたものだが、最近はその名前の「弦」はピアノの弦に、より近いかもしれないと思っている。ヴァイオリンの単弦に対し、ピアノは複弦である。

ピアノは88鍵だが、ピアノの弦の数は88本ではなく、230本前後である。つまりピアノは1つの鍵盤で、複数の弦を叩く構造になっている。

この複弦はトレモロ(イタリア語で震えるという意味。)の演奏を可能にするだけでなく、音量を増幅させ、さらに単弦よりも振動の減衰が遅くなって余韻音が残るのだそうだ。

複弦によるトレモロと余韻・・・。ピアノの音域は実は、クラシック・オーケストラの全音域よりも広い。

結弦くんのスケートは、ピアノのトレモロのように、時に繊細に銀盤を刻み、かと思うとクラシック・オーケストラのようなダイナミックなスケールを感じさせる。

演技を終えた後の余韻の広がりは、まさにピアノの「複弦の魔法」である。

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