ここのところ夏バテ気味で、今日はブログの更新は予定していなかったのだが、トロントの公開練習で結弦くんが見せてくれた最新のバラード第1番の映像を見て、はっと思い当たることがあり、おもむろに書き始めているところです・・・。
ここから先は私の個人的な妄想なので、お暇な方だけお付き合いくださいね。
昔、ソチオリンピックの前だったか、荒川静香さんが結弦くんに「自分を楽器に例えると何だと思う?」という質問をして、荒川さんも結弦くんも「ヴァイオリンだと思う」と意見が一致していた対談があったかと思う。「結弦」という名前がヴァイオリンを連想させるからだと。
今でも結弦くんは自分のことをヴァイオリンだと思っているだろうか・・・。今、結弦くんに同じ質問をしたら、彼は「ピアノ」と答えるのではないかという気がしてならないのである。
以前、結弦くんのスケートをリスペクトしてくださっているピアニストが少なくとも4人・・・という記事をアップさせていただいたことがあった。世界中で名乗りを上げてもらったら、実際、この数では収まらないであろう。
ヴァイオリンとピアノは全く異なる音色で、それぞれの良さがあるので単純な比較はできない。
弦楽器が伸びやかな抒情を表現するのに長けている一方、ピアノは氷の上に真珠を転がしていくような繊細さが特色と言えるかもしれない。
結弦くんのスケーティングの特徴がとても活かされる音色だと思う。
それに加え、今日、トロントの公開練習のバラード第1番をテレビで見てはっとしたのは、結弦くんの身体の動きにピアノ奏法との共通点?のようなものを感じたからである。
一口に楽器と言っても、ヴァイオリンやらフルートやらいろいろある訳で、それらすべての楽器に精通している訳ではないので、必ずしもそうとは言い切れないかもしれないが、ピアノは・・・特殊な楽器のような気がしている。
それは、ピアノ演奏者の間でよく言われる「脱力」・・・。
ピアノという楽器は見た目は指だけで弾いているように見えるが、実はそうではない。
たとえば難易度の高い曲になればなるほど、指の力だけで弾くことは不可能になる。それをすると腕が痛くなったり、指が動かなくなったり、ひどいときは腱鞘炎を引き起こしたりという結果になる。
ではピアニストはどのように演奏しているのか。彼らは不必要な筋肉の緊張を解いて、必要な部分だけを動かし、自由に指をコントロールしている。
上手に「脱力」して、柔らかい動きの中から一瞬にして心に響くような音を生み出している。指の力だけではこうした音は生まれない。
固いものを砕こうとして固い剣を振りかざしても、折れるのは剣の方だ。
しかし、しなやかな鞭なら折れない。柔らかくしなりながら、一瞬にして信じられないような力を集め、固いものを砕いてしまうだろう。
結弦くんの身体の動きには、このピアノの「脱力」奏法から生まれる柔らかさと強さを感じるのである。
結弦くんが滑ると、何となく氷の上でピアノを弾いているようなイメージが沸いてくるのは、このあたりのことかもしれない。
類まれな柔軟性があるからこそ、しなやかさの中から突然生まれる強いアクセントは際立ち、深い余韻を残しながら演技はよどみなく流れてゆく。
昨シーズンの終わりに、この曲の中できっと何かを掴みかけたのだろう。それをこれから始まるシーズンで、完全に掴むべきだ。この曲とともに・・・。
結弦くんは何かものすごいものを見せてくれるに違いない。
※photo: http://news.walkerplus.com/article/56857/