ヘンリー・ジェイムズ『デイジー・ミラー』(新潮文庫)を読みました。


この作品は、先日読んだ『テヘランでロリータを読む』で取り上げられていた一冊です。


本書のあらすじは、スイスの豪華なホテルで休暇を過ごしていた青年・ウインターボーンが「アメリカのお転婆娘」とのちに呼ばれるデイジー・ミラーと出会い、デイジーの無邪気な美しさに惹かれてゆく物語です。


デイジーはアメリカの資産家の娘で、病気がちな母とやんちゃな弟を連れてヨーロッパ旅行に来ていました。


ウインターボーンはアメリカ人ではありますが、スイス滞在が長く、デイジー含めたアメリカ人家族の様子を新鮮な気持ちで眺めます。


デイジーはとても美しい見た目の少女で、ウインターボーンは弟との会話をきっかけにお近づきになろうとします。


ウインターボーンから丁重な扱いを受けたデイジーはまんざらでもない様子で受け答え、次第に「アメリカのお転婆娘」らしい無邪気な姿を見せるようになっていきます。


ウインターボーンとともにホテルに滞在していた伯母のコステロ夫人は、デイジーの無邪気さは「下品で卑しい」と評し、ウインターボーンに付き合いを控えるように忠告します。


しかしどうにも惹かれてしまったウインターボーンはデイジーとの付き合いをなるべく続けたいと思うのですが、一方のデイジーは「自分にはたくさんの異性の知り合いがいる」と言ったりウインターボーンにわがままを言ったりして、ウインターボーンを戸惑わせることばかりするのです。


やがて場所はスイスからイタリアのローマへ移り、ウインターボーンとデイジーは再会するのですが、ローマではデイジーの“悪評”が輪をかけて広まっていることをウインターボーンは知ります。


ウインターボーンはデイジーに目立つ行動を慎むように忠告しますがデイジーは聞く耳を持たず、さらにはウインターボーンの目の前でイタリア人美男子を連れて街を歩くのです。


周りから顰蹙を買ってしまっているデイジーをウインターボーンは呆れた目で見つめますが、しかし彼女には下品な狡猾さよりも「無邪気さ」を感じてやまず、呆れてもなお彼女のことが気になって仕方ありません。


ウインターボーンはこの感情を分析しようとつとめますがどうにもわからず、とうとうある悲劇が起こって物語は幕を閉じるのです……。


この物語を読みながらわたしもウインターボーンに感情移入し、デイジーの不可解さに悶々とさせられっぱなしでした。


けれど、わたしがデイジーを「不可解」だと思ったのは「品がない」「素行が悪い」からではありません。
彼女が周りからそう言われてもなお自己流の付き合いを貫いた心の内がわからなかったからです。


物語を読むかぎり、彼女のふるまいは品がなくて節操がないように映ります。
しかしそれはヨーロッパの人々が彼女のふるまいを見てそう判断している描写があるためです。
よくよく考えれば「ヨーロッパ的に品がない」というひとつの見方しかなされていないのです。


ヨーロッパ的なマナーを知らない(もしくは知っていてもマナーに沿おうとしない)デイジーはとても目立ちます。目立つゆえに悪評はさらに広まりますが、デイジーは評価をほとんど気にせず、ヨーロッパ旅行を存分に楽しもうとするのです。


「郷にいれば郷に従え」という言葉がありますが、それをまったくしなかったデイジーは、「資産家の娘」としてではなく「デイジー・ミラーというひとりの少女」として違う世界を目にしたかったのではないか、と思いました。


令和を生きるわたしですら郷にいれば郷に従ってしまうところがあります。笑
それなのに、20世紀ごろの階級社会の厳しそうなヨーロッパにおいて自分を貫いたデイジーは一体どれほどの胆力と勇気のある女性だったのだろうか・・いや、ただ単に「無邪気」なだけだったんだろうか・・とあれこれと考えさせられてしまいました。


この物語は「世間の目」という圧力が絶大な影響力を持つことも示唆しています。
けれど「世間の目」が必ずしも正義かといえばそうではありません。
「世間の目」が「自分の幸せ」と相容れないのなら、デイジーのような勇敢さ(もしくは無邪気さ)をもって、「世間の目」を跳ね返すことも必要になるのです。
デイジーはそれをわかっていたのかもしれません・・。


『デイジー・ミラー』は悲劇的な結末となりますが、デイジーは最後までデイジーらしく、華やかで無邪気なままでいます。


きっと、ウインターボーンはデイジーの無邪気さのなかにある勇敢さも無意識のうちに感じ取っていたのではないか。だからスイスを離れても彼女に惹かれたのではないか。そんな風に解釈が膨らみました。


そしてわたし自身をふりかえり、デイジーのような世間の目を跳ね返す勇気がほしい・・とひそかに憧れました。


先ほどもあげた『テヘランでロリータを読む』では、この作品が大学の講義で取り上げられ、デイジーの賛否について激論が交わされます。


デイジーを強烈に否定する学生もいれば、密かに心惹かれる学生もいて、こうした複雑な感情を呼び起こさせる物語こそ「傑作」なのだろうと改めて感じました。


100ページちょっとの短編ですが、唸らされるところの多い名作でした!


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