こんばんはー!
経済とお金の本(投資)を読んでからというもの、最近の世界情勢に少しずつ興味が湧いてきました。
米中、日韓の貿易摩擦の行方、円高、消費増税…。
これまではただの「文字」としてしか認識していなかったのですが(^^;)、今はニュースを読み流さず積極的に追うようになりました。
興味を持つだけで脳みそがアンテナを張ってくれているのがわかります。
「意識する」ということが何より大事なのだということを改めて感じるここ最近なのでした。
さて、最近ビジネス系が続いたので今日はど文系の一冊を手に取りました!
『30代作家が選ぶ太宰治』
大人の夏休みの読書課題(?)にぴったりなタイトルです。
芥川賞作家の朝吹真理子さん、滝口悠生さん、津村記久子さん、村田沙耶香さん、直木賞作家の西加奈子さんなど30代の作家の方々が選んだ太宰の短編集です。
太宰治、学生時代はよく読みましたが社会人になってからはぱったりと手にとらなくなりました。
仕事にいっぱいいっぱいで、太宰の自意識の重さを受け止める余裕がなかったので。笑
久しぶりにしっかり太宰を読むと、年齢(太宰は38歳で自死)が近づいたからか、作品の「味」がだんだんわかるようになってきた気がしました。
成人したての頃はビールは苦くて飲めなかったのに、いまとなってはビールはもちろんウイスキーも飲むようになっちゃって、みたいな感じでしょうか。笑
自分自身、歳を重ねたことで学生時代には感知できなかったものを捉えられるようになったのだと思います。
社会人生活で人間のきれいじゃない面を見てきたからこそ、いろんな想像が働くようになり、そしていろんなことを受け入れることができるようになったのでしょう。
太宰作品の絶妙な苦みを味わいながらしみじみそう思ったのでした。
ここで各編の感想を備忘録的に書いていきます。
「新樹の言葉」(青木淳悟・選)
言葉のきれいさと現実の泥臭さとのギャップに何とも言えない感情が湧く物語です。
会話だけを読んでいると気品が感じられるのに、実際の生活は貧しく寂しいもので…。
見栄というわけじゃなく、心から滲み出る品の良さに現実が追い付いていないところが悲しいのですが、根をはる品の良さ、というようなものを感じて「ぶるぶる震えた」のでした。
「親友交歓」(朝吹真理子・選)
「私」の弱みに付け込み「私」の好意をどこまでも搾取しようとする自称「親友」が嫌な奴すぎてわなわな震えながら読みました。
「私」は自分のプライドを全力で振り絞って大人の対応につとめますが、自称「親友」の方が数枚上手で完全に呑まれてしまいます。
自称「親友」の狡猾さとともに「私」の情けなさも際立ち、ひたすらやりきれない気持ちにかられました。
この物語から強く感じるのは、「私」と自称「親友」どちらも持つ鉄壁のプライドです。
ラストの「名言」は、自分の財産をカラカラに絞り取られても気丈に振る舞う、つまりカッコつける「私」に自称「親友」のプライドがくすぐられて出たのだろうと想像します。
あの言葉はしばらく忘れられません。
「トカトントン」(佐藤友哉・選)
魔法の言葉、トカトントン。
やらない理由はトカトントン。
なんでもかんでもトカトントン。
リズムが素敵なトカトントン。
ことあるごとに言い訳に使ってしまいそうです。トカトントン。
「葉」(滝口悠生・選)
書きかけの日記、ブログ、ツイッターの下書きのような自意識の切れ端を集めたもので、これは「物語」というよりは「自意識の記録」という感じにとらえています。
これは太宰の小説メモなのか、意図的に(前衛的な作品として)書かれたものかはわかりませんが、登場人物(と呼んでいいのか?)の神経質さをひしひしと感じました。
いまから一年ほど前に自分も「自意識アレルギー」に見舞われていましたが笑、あのときの繊細さを思い出してしまい鳥肌が立っています。トラウマです。
「駆込み訴え」(津村記久子・選)
罪人は生まれながらにして罪人というわけじゃない。
ドフトエフスキー『罪と罰』や山田詠美『つみびと』を読んでつくづく感じたことですが、この物語も罪人の悲痛な叫びと弱さが描かれていて、人間の弱さについて考えさせられるのでした。
「皮膚と心」(西加奈子・選)
いちばん共感しました&読みながらぞわぞわしっぱなしでした。
肌にできた「柘榴」への恐怖と嫌悪感を的確に、いやらしく(ねちっこいという意味で)描いた物語です。ラストの霧が晴れたような描写も見事で、太宰の筆力に心をつかまれてしまいました。
これは奥様(津島美智子さん)との合作なのかしら。というかそうであってほしい。これを太宰の想像力だけで描いてたとしたら…言葉が出ない。
「おさん」(村田沙耶香・選)
なんて悲しくて、意地悪な物語かと思いました。
意地悪さは太宰治の人生年表を頭に入れた上で読むとわかります。
「あなたが一番好きだけれど、あの子を放っておけない」みたいなことを言って情けなく涙する夫と、それを飲み込む妻の悲哀ったら…。
それなのに全く別の愛人と心中された日には…。
人間ってなんて弱いんでしょう。
なんてダメダメなんでしょう。
情けない涙を「知らんがな!!」とバッサリ裁きたいところですが、人情というものは本当に白黒つけにくいもので、この物語をなかなか放っておけない気持ちになってしまったのでした。ああ悲しい。
この物語集は、全編通して人間の「弱さ」を強く感じます。
生まれながらにして悪人ってわけじゃなく、真面目にやさしく生きようとしたらこうなっちゃったのよ…という言い訳じみた弱さが滲み出ています。
でも、それは太宰だけの話じゃなく。
文学は、自分の弱さを乗り越えるのではなく「受け入れた」人たちの「言い訳の痕跡」の積み重ねなのかもしれないなぁとふと感じました。
なんだか歳を重ねるほどに文学の味わい深さを感じられるようになってきて(たぶん)、それがじわじわ嬉しいです。
でも学生時代にもっと太宰研究しとけばよかったと少し後悔しました!(専攻は別の作家でした)
太宰治のおもしろさに今更気づいた一冊でした!
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ちなみに「女性作家が選ぶ太宰治」シリーズもあります!
こちらも買い、少しずつ読み進めています!
