9月6日の深夜3時すぎに、大きな揺れで飛び起きた。
揺れの最中は正直あまり記憶にない。とにかく“音”が怖かったのが強く印象に残っている。
緊急地震速報のアラーム、家がミシミシしなる不吉な音、ガタガタと家中のものが騒ぐ音。
アラームは本能的に身を守らせるためにあえて「そういう音」を鳴らしていると聞いたことがある。地震から数日経ってもまだあの音の余韻がやまなかった。
とても怖かった。
その後のことはご存知の通りで、北海道全域で停電が発生し、全道民は丸一日〜数日間電気が使えない状況下に陥った。
言わずもがなだがこんなことは初めてだ。
わたしが北海道地震と停電の全容をきちんと把握できたのは東京に戻ってその日の新聞を読んだときだった。
うちは幸いにも被害は停電のみで、停電も丸一日で復旧した。
震源地付近の被害の甚大さに胸が痛む。関西の台風被害も続いているところがあると聞く。これほどの災害に見舞われた年があっただろうかと思うとともに、自分の防災意識の低さをおおいに反省させられた帰省の旅だった。
被害に遭われた方には心よりお見舞い申し上げます。はやく日常が早く戻ってきますように。
北海道には一週間近く居た。後半は地震でドタバタとしていたが、帰省する前から北海道を舞台にした小説を読もう! と決めていて、6冊の本を持ち込み移動の間にちまちま読んだ。
(※余談だが、北海道は移動がクソ多い。2〜3時間は基本で、乗り換えの接続がうまくいかなければ1日の半分が移動に費やされることもザラにある。札幌以外の道内の観光地へ行かれる方は暇つぶし用の本を必ず持っていくことをおすすめする。スマホはカメラなどで使うだろうからスマホいじりは避けるのが無難。というか移動途中で圏外になることもザラにあるので注意が必要)
……とは言え島本理生さんの小説が面白くてそっちばかりのめり込んで読んでしまい、北海道小説は有島武郎『生まれ出づる悩み』と村上春樹『羊をめぐる冒険』しか読めなかった。
村上春樹『羊をめぐる冒険』はちょうど地震が起きた日に読んでいた。上巻の途中まで読みかけていたところで地震。
その日は停電のため何もできず、わたしはひたすら読書をした。
村上春樹作品は「お約束」が多い。
教養のある器の広い青年、ミステリアスな女性(と性描写)、人里離れた土地での規則正しい生活、後半からの超展開などなど。
そういう「お約束」がくせになってファンになっている人も多いのだろう。わたしはそこまで村上春樹作品に触れてこなかったので「あらっ、この描写どこかで読んだことあるぞ!」とデジャブを楽しみながら読んだ。
この物語は北海道が舞台になっていると聞いて読んだので、いつ北海道が出てくるのかとワクワクしながら読んでいたら上巻ではほとんど出ず、ほぼ最後の方で出てきたため「まだかまだか」とディズニーの順番待ちのような気分になった。笑
『羊をめぐる冒険』は、1970年代にさしたる夢も明確な進路も持たない凡庸な青年の「僕」が「羊をめぐる冒険」に巻き込まれる物語だ。
「羊をめぐる冒険」とは何か、ていうかなぜ「羊」なのか、そして「僕」はどうなってしまうのかを一言で語ることはできない。
語ろうとするとあらすじを一から説明しなければならず、それこそディズニーの順番待ちくらいに途方もないため「とにかく読んでみて!!」という一言におさまってしまう。そんな種類の物語だった。
わたしは村上春樹作品の“規則正しさ”が好きだ。
読みながらわたしもランニングしよう、とか、コーヒーを味わって飲もう、とかいう気持ちになり背すじがしゃんとする。物語が超展開になっても規則正しさが損なわれないのも良いところだ。
はーい! これから「物語世界」という異次元にむかいまーす! 3Dメガネはくれぐれも外さないでくださいねー! みたいな感じでキャストに丁寧に案内され、異次元のアトラクションに“安全”にのめり込む感じがする。
わたしは村上春樹作品を読めば読むほどディズニーランドに行ったときと同じような気持ちにさせられるのだった。
『羊をめぐる冒険』を読んで、物語世界にのめり込むだけの読書って久しくしていないかもしれないと思った。
このごろは恋愛小説や私小説ばかり読み、なにかと自分の人生に紐づけてあれこれ考えてしまっていたなと思った。自分の悩みに引き寄せられて読んでしまったのかもしれない。
手に取ったのはたまたまだったが、『羊をめぐる冒険』を読んだタイミングはとても絶妙だった。
地震、停電という非常事態はなかなかにストレスで、我を忘れて物語にのめり込む時間がとれて本当に良かった。
ろうそくの灯さえあれば本が読める、という新たな発見もあった一冊だった。
北海道にいらっしゃるみなさま、余震にはくれぐれもお気をつけくださいませ。
写真はファーム○田の羊たちです。
