獅子丸君の新しい乗り物
久しぶりに、獅子丸君が店にやってきましたが、なんと乳母車に載っているではありませんか。
もしや病気にでもなって歩けなくなったのかと心配しましたが、そうではなく暑さ対策の為ということでした。
獅子丸君の飼い主さんが、いつも地下鉄でいえば数駅分くらい歩くので、長距離の散歩は疲れるだろうという配慮だったそうです。
でもあまり楽をし過ぎると太りませんか?
今でもボンレスハムみたいになってますけど・・・。
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シマポンママでも手を焼くハチワレ君
ハチワレ君の最近のタフさには、さすがのシマポンママも手を焼いているようです。
この日もシマポンママのお気に入りのソファーベッドに載ろうとしていたので、ポカリと猫パンチを浴びせたのですが、まったく平気でした。
気にせずソファーベッドの背もたれに飛び乗ってきました。
猫パンチ以上のことは、シマポンママもしませんので、ハチワレ君、屋内ではやりたい放題です。
でも外に出たら、ベッテルの前では大人しくしています。
そういう意味で、本当にタフなのはドロシーかもしれません。
ドロシーはベッテルから威嚇されようが、シマポンママから追い払われようが、すぐに元に戻ってきます。
ドロシーは一番大物かもしれません。
チビポンは、どこに行っても構わないことになっているので、猫同士の争いごとには関与しません。
ただ、今でもシマポンママにだけは遠慮します。
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ラノベ「抗いし者」第13話
回り道
回り道
「昨日の女は期待外れだったな……」
次の町へ向かう救済隊を率いながら、ガルビエスは独り言を言った。
彼の呪術は女から生気を奪い取ることだ。
その際に表層にある記憶や知識まで消去する。
さじ加減が必要で、あまりに強力にやりすぎると女の自我を破壊してしまうのだ。
昨夜、町長から提供されたシーフの娘は、かなり反抗的だったので、抵抗力があるとみて、きつく絞り過ぎたようだ。
結果、女の記憶は低層にある幼児の頃のものだけになり、今朝も行軍の準備中に泣きながら、まるで出陣する父親を止めるかのように、すがり付いてきた。
興覚めもいいところで、ガルビエスはホテルの支配人に女の処分を任せて来た。
「『恥乱の魔女』はもう少し抵抗してくれればいいが……。面白い存在であれば、なんとしても俺の物にしてくれよう……」
ガルビエスはそう決意した。
「それには彼女を処刑するつもりでいる狂信者のズバルトを説得せねばならんな」
あの堅物をどうやって動かすかを想像し、ガルビエスは苦笑いをした。
捕らぬ狸の皮算用ではないが、彼の脳裏には負けるという選択肢などなかった。
「とにかく早く『恥乱の魔女』に会いたいものだ。いったいどんな女だろう」
ガルビエスはにんまりと笑った。
その時、ガルビエスの頬をかすめて矢が飛んできた。
「ウオッ?」
ロバが驚いて身をよじった。
一瞬にして遠征隊に緊張が走り、兵が一斉に武器を構える。
見渡すと、街道脇の岩場から黒い影が数人、確認でき、次の矢をつがえていた。
兜首を狙った無頼の者か、フーラの反乱分子か。
判断する暇もなく、すぐに対応した味方の矢が、襲撃者一人の胸を貫いた。
残りも軽装兵が急斜面を駆け上がって追い詰め、切り伏せた。
「閣下、お怪我はありませんか!」
駆け寄った士官に、ガルビエスは冷たい目を向けた。
「バカめ。このような地形では、予め先遣隊が安全を確保しておくのが常識だろう」
バシュラムが怒りを爆発させ、腰の懲戒棒で士官の背を叩いた。
「やはり、フーラのテロリストがあちこちに湧いておりますな」
「ナラヤの大敗が、やつらを勢いづけたのだろう」
「ズバルト様が危惧された通りです。『恥乱の魔女』の討伐を急がねばなりますまい」
バシュラムは深いため息をついた。
行軍三日目、ピエストルを出た翌日、野営地で休む遠征軍の元に、モブリンという、この地方で最も人口が多い町から使者が来た。
中部方面軍所属・モブリン常駐の救済隊士官だった。
「ナラヤにお急ぎのこととは存じますが、モブリンに立ち寄って、フーラ教徒どもを蹴散らしてはもらえないでしょうか」
とガルビエスの前にひれ伏した。
ナラヤへの直行を望む副官のバシュラムは――、
「モブリンの治安維持には聖都に伝令を送り支援を養成すればよいだけのこと。我らは一刻も早く『恥乱の魔女』の討伐に向かいましょう」
と進言したが、ガルビエスは――、
「確かに少し遠回りにはなるが、モブリンを経由して進めば街道沿いに小さな町が点在している。このまま直線状に進んで野営を重ねるより良いではないか」
とモブリンに立ち寄ることを快諾した。
モブリン近郊の河原で行軍を一時留めたガルビエスは、町を偵察するために斥候を送り込んだ。
昨日のように、敵が遠征軍が来るのを察知して罠を貼っていないか調べるためだ。
さらに神経質すぎる推測かもしれないが、モブリンへの派兵を願い出た士官も、敵が化けていた可能性すらある。
ガルビエスはどこまでも慎重な男だった。
放った斥候はおよそ小一時間で砂埃を巻き上げながら戻ってきた。
息は荒く、その顔は汗で濡れている。
「ガ、ガルビエス様、モブリンは……!」
報告するのも躊躇われる。そういう表情だった。
「落ち着け。何があった」
「町の東半分がフーラの暴徒に占拠されております! 彼らは商店から香辛料や衣類をを略奪し、まるで祭りのように騒いでおります。踊り子が出て踊り、男も女も酒を飲んでおりました!」
予想を上回る内容にガルビエスは眉をひそめた。
「酒だと? それを女たちも飲んでいるというのか……」
バシュラムが驚いて叫んだ。
酒はダルーガの支配地域ではボホーラ法によって固く禁じられている。
所持しているだけで罰則の対象になり、飲んでいることが分れば男でも鞭打ちの刑になる。
まして女が酒を飲んでいることが分れば……、
「そのとおりです。やつらは公共の場で禁じられている酒を飲み、タウリンから流れてきた踊り子が広場で舞い、大道芸人が火を吹き、女の講談師が『白衣の天使』の武勇伝を語っております。救済隊は西側に押し込められ、いまや町半分の防衛が精いっぱいのようです」
バシュラムが自分の兜を懲戒棒でゴンと叩いた。
「やはりガルビエス殿がご心配された通りでしたな。それにしても女講談師とは……」
信じられんという表情でバシュラムは祈りの言葉を口にした。
ダルーガ教徒であれば考えられないことだった。
彼らの間では女の言葉は汚れているとされていて、口を閉じ、ただ男に従順に仕えることで生存を許されている。
姉であろうと、弟に逆らえず、母であろうと息子に口答えはできない。
常に目線を下にして大人しく、神に感謝して生きるように教育されている。
大きな声で大衆に語り掛けるなどは論外で、それはきわめて非道徳な行いだ。
即刻、制裁の対象になることから、以前のモブリンでは考えられないことだった。
ところがガルビエスの反応は違った。
「女の講談師か……。面白いな。聖なるダルーガの救済隊をそのように語るとは。
これはぜひ我らの前で演じてもらいたいものだ」
そう言うと、ガルビエスは防具を脱ぎすて、行商人の服装を用意させた。
「閣下……その服はどこから?」
「これか? これは隠密に町を視察する為に用意してきたものだ」
ただ、身長がありすぎるガルビエスの場合、どう見ても似合っていなかった。
「バシュラム、貴公も退屈していただろう。ひとつ、その女講談師の演目を聞きに行こうではないか」
つづく







