小説・記録天使 | カツオシ D の小説ブログ

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 右イラストはMECHAさんに書いて頂いた「餓鬼ども!」のキャラクター、餓鬼ちゃんズです。    ⇒

 猫たちがストレスなく毎日を過ごすために

 

 シマポンママが乗っているのは、部屋の中に置いてあるダンボール巣箱。

 

 最近、こうした空き箱が部屋の中に増えてきました。

 

 屋内なのでハチワレ君の背後にあるような猫テントとか猫ベッドを置いてあったのですが、飽きやすいのでねえ・・・。

 

 猫テントもシマポン親子が使っていたものが、今ではこのドロシーとハチワレ君が愛用しているようです。

 

 シマポン親子は寒い夜にはコタツの中がお気に入りのようで、昼寝は気に入ったダンボールを探して入っています。

 

 ベッテルはいつもニャーニャー言ってるのでストレスがだいぶ溜まっているのかも。

 

 遊んでやろうかと思っても近寄ると・・・、

 

 こんなふうに遠ざかるみたいです。

 兄弟猫のアロンソは呼ぶと寄って来たんですけどね。この頃、来なくなりましたし。今、ベランダにいるのはこのベッテルだけなんですよ。

 

 待機所だけは暖かくしてやろうかと屋根をつけてみました。

 

 これは先週の写真。二重になっていたダンボールの下のやつを傘のようにかぶせたのです。気に入るかどうかですね。

 

 モッチ君はあんまりストレスがないみたいですね。

 

 ハッチ君はよくケリケリしてますが・・・、

 

 ハッチ君は、こういう狭い場所に隠れるのも好きなようですし

 

 猫も性格がだいぶ違うので、その猫の好みを把握しないとストレスを溜めてしまうのだと思います。

 

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   小説・記録天使

 

イスラムにおいてはキラーマン・カティビン(Kiraman Katibin)と呼ばれている。

キリスト教では記録天使(Recording Angel)聖書の「マラキ書」などに登場し、善悪の行いを記録する神の使者と言われている。

 

 

「あ~、これは叱られますわ」

 パソコンでユーチューブのオカルトものを見ていた俺の背後から女の声がした。

 

 振り返ると裁判官のような黒いローブを羽織った若い女性が部屋の真ん中で一枚の書類を見ながらブツブツ言っている。

 

 仕事から帰って来た時にワンルームマンションのドアは鍵を掛けたはずだし、そもそも若い女など還暦間近の俺の周りにいない。

 

 管理人の娘さんだろうか? それにしてもノックもせずに勝手に部屋に入ってくるなんてちょっと酷いんじゃないか……。

 

「誰ですか」

 俺は憮然として言った。

 

「私? 精霊。カティンっていうの。篠崎和真君、あんた見える人だったのね」

 カティンはちょっと驚いたようだったが、すぐにまた目線を書類に戻した。

 

 精霊? 幽霊ってことなのか? そう思ってよく見ると下半身が透けていて背後にあるテレビ台が見えていた。

 

「うわぁ~!」

 俺は驚いてパソコンラックを離れ部屋の隅に逃げた。

 

「何よ急に大声出して。別に怖がんなくていいよ。どうもしないから。ずっと昔から近くにいたっしょ。あんた見える人なのに何で今頃驚いてんの?」

 そう言われてみると、古くから見知ってるような気がして、恐ろしさは無くなった。

 

「見えたのは今日が初めてですよ。何故だかは知りませんけど」

「たぶん原因はあれだね。ユーチューブのオカルト番組。そういうのを見てると霊が本当に見えたりするようになるって聞いたことない?」

 

 そういえば、霊の話をしていると霊が寄ってくるというのは聞いたことがある。しかし、記録天使が見えるようになるという話は知らない。

 

「で、精霊のカティンさんが俺に何の用なんですか?」

 オズオズと尋ねてみると、

 

「定時報告ってのがあってね。普通は人間が夢を見ている時に無意識下で行うものなんだけど、あんたの夢にはなかなか入り込めないから」

「だから起きている時に現れたと」

 

「そう。でも頭の中にそっと囁くだけのつもりだったんだけど、まあ見えたんなら仕方ないね。私の正体はあんたの記録天使ってやつでさ。生まれた時から日常を何でも記録して天界に送っていたの。で、今日はその集計の査定が届いてさ。これがまた酷い成績だったのよ」

 そう言いながら書類を見て溜息をついた。

 

「そういう集計の査定なんてものが天界から届いたということは、俺、もうすぐ死ぬってことですかね? それとも既に死んでいたりして」

「いやいや、あんたまだ少なくとも十数年は生きられるって」

 カティンは片手をヒョイヒョイ動かして否定した。記録天使ってこんな軽い人物がなっていいのか?

 

「まあいいや。その査定によると、あんた死んだ後で、かなり叱られると思うわよ。日常をずっと見て来て有りのままに報告していた私が言うのもなんだけどね」

 

 俺は女の精霊にずっと生活を覗かれていたのかと思うと恥ずかしくなった。たぶん顔が赤らんだと思う。からかわれそうなので、すぐに別の質問をした。

「で、査定にはどんなふうに書かれているんですか?」

 

「一言で言えば何事においても怠惰ってことね。それを治す気もないし、書物を読んで学ぶ努力もしない。社会貢献度に至ってはFランク! これって猫以下じゃないの」

 

 その言葉はズギュンと胸に刺さった。確かに俺の生活といえば、この年に至るまで家庭も持たず、仕事は必要最小限度。適当に食べてテレビやユーチューブを見てゲームを楽しみ、後は眠るだけというものだったからだ。

 

「これじゃあ単位不足もいいとこで、煉獄で百年位は働くことになりそうね。クックック」

 精霊はどこか楽しそうだった。

 

 こいつには血も涙もないのかと思って睨んでいると、カティンの背後からもう一人の精霊が忽然と現れ、手にしていたファイルで彼女の頭をパコンと叩いた。

 

「忘れ物だ。バカ!」

 そう言ったのは後から現れた男の精霊だった。

「痛いわね。ロギ!」

 カティンが抗議した。男の精霊はロギというらしい。

 

「おまえね。書類を半分しか見てないだろ。後半部分を見落としてどうすんだよ」

 

「それって重要?」

「あたりまえだ。後半部分にちゃんとこいつ(俺のこと)の適正とか期待値が書かれているだろうが。査定はそれと対照して判断するもんだって習ったはずだよな」

 

「あっ」

「あっじゃない。こいつのこの世での適正を見ろ。信じられるか? 僅か6だぞ。6!」

 俺はその言い方が気になって「あの6というのは?」と聞いてみた。

 

 ロギはギロリと俺を睨みながら「なんだお前、俺たちの話を盗み聞きしていたのか。まあいい教えてやろう。つまりお前は初めから殆ど期待されていなかったってことだ。例えば普通、人間の場合、社会貢献の期待値は1000前後だ。猫の場合でも期待値が20とか30位はある。だがお前の場合は哺乳類、いや鳥類を含めても最低レベルで、およそ人間に与えられた数値とは思えない」

 

「そ、それはどうしてなのでしょうか?」

「ランダム。としか言いようがないな。時々、そういうハズレ値が出るんだよ。バグだろうと思うがな。6だとスズメ級の期待値でしかない。それでいて貢献度がF査定なら、よくやっている方で、本来は期待値0.2しかないミジンコ並みのG査定でも文句を言われない。カティンが余計な事を言ったようだが気にするな。これからもスズメのように自由気ままに生きてセミのように死んでいけばいい。良かったな」

 

 俺の肩をポンポンと叩いてそう言うと、ロギはカティンの手を引っ張り、部屋の真ん中に空けた異次元の穴に消えていった。

 

 

 

「あっそ。良かった。F査定でも煉獄で働かなくていいんだ」

 俺は何だかスッキリして、自由になった気がした。

 

 が、しばらくすると無性に腹が立ってきた。

「期待されないのにも程があるじゃないか!」

 俺は腹立ちまぎれに手元のカラーボックスを押し倒した。

 

 すると、積読専門の本が部屋の中にバラバラと散らかった。

 

 ハンナ・アレントの「人間の条件」、ラッセルの「幸福論」、ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」、トーマス・マンの「魔の山」、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」といった、今まで書店の店頭で読むべき本というポスターを見て興味本位で買ったものの、ページを開くことさえなかった本や、

 

 それらに混じってカツオシDの「東京都知事選・8人の泡沫候補」(これは作者である友人がかってに送り付けてきた本)とかが目についた。

 

「これから先、俺の寿命は数年で尽きるかもしれないし、カティンの言うように十数年か、それ以上に生きられるかもしれない。ロギはその寿命がある間、スズメのように生きればいいといいやがったが、ふざけやがって。こうなったらやつらの期待値なんか軽く超えてやる。まずは読書だ。本気で読めば、1年もあればこんな本は20冊以上読めるだろう。それから何か思いつくことがあれば積極的にやってみよう。5年もあれば何かやり遂げることができるだろう。どうせ最後はセミのように死んでいく身だ。もう何も恐れまい」

 

 そう言って俺は力強くカツオシDの本を手に取った。

 どこからか「違うだろ」という声が聞こえた気がした。

 

        おしまい