悪魔の杖 | 夏衣優綺の活字中毒

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小説の感想や日常のつれづれをゆるりと発信するブログです☆

 

 

子供の頃から喘息を患っており、気候が穏やかな時期はわりと大丈夫なのですが、ここ数年は冬場になるとどうも具合が良くなくて、健康でいることの大切さが身に沁みます。

 

 

数十年前は今ほどいい薬もなくて、喘息が出たらそれこそ地獄みたいな状態でした。

 

夜中に発作を起こすと、「ヒュー、ヒュー・・・」と喉が鳴り続け、近くにいてそれを聞いているだけでも気が滅入るような音がします。

 

一本のストローで呼吸しているような感じです。

 

時間的に病院も開いてないし、かといって発作が出るたびに夜間救急に走るのも大仰で、やむを得ず、症状が落ち着くまでじっと耐えるというのが日常でした。


学生の頃、二度ほど大発作を起こして入院しているのですが、その時に隣のベッドにいた高齢の男性もまた喘息の患者さんで、夜中に「ヒューヒュー、ゼーゼー」と、それは苦しそうで、同じ音を自分も周囲の人たちに聞かせてきたのかと思うと、ひどく悲しくなったのを覚えています。

 

 

発作が出ている時は、横になることができなくて、夜中じゅう一人で起きていることになるわけですが、布団を軽く山積みにして、壁際にもたれ、少しでも気をそらすためにずっとファミコンをしていました。

 

当時、ファミコンは1日2時間までと決められていたので、ファミコンが好きなだけ出来るのはなんだか嬉しかったです。

 

 

寒い日の体育の時間にランニングなんかがあると、少し走るだけでもすぐに喘息が出て、ほんとに難儀な身体でした。

 

よく使っていたメプチンエアーという吸入薬は、心臓にかなりの負担がかかるため、吸い込むと喘息そのものはすぐ治まるのですが、その代わりに動悸がして、それはそれでつらくて、いつもおそるおそる使っていました。

 

 

世の中には色々な病気があります。

 

苦しい、辛い、痛い--本当にいろいろです。

 

どれも嫌には違いありませんが、『呼吸が苦しい』という症状は、幼い頃の僕の精神状態にどれほどの影響を及ぼしたのでしょうか。

 

子供でしたし、あまり自覚はありませんでしたが、おそらくかなりのストレスになっていたはず。

 

 

呼吸というのは、当たり前ですが人間なれば一日中ずっとしています。

 

発作が出て、一度それに意識が向いてしまうと、それこそ気が狂いそうな瞬間が幾度も訪れます。

 

「次の一呼吸で止まるんじゃないか?」

 

「次に息をはいたら、もう二度と息ができなくなるんじゃないだろうか?」

 

パニックの一歩手前みたいな心理状態が延々と続きます。

 

 

つまるところ、子供の僕はきっと、『死の恐怖』にさいなまれ続けてきたのだと思います。

 

そして、いつからか自分の中で、『悪魔』の姿を想像するようになりました。

 

その悪魔が、僕の背中を杖でつついては、こう言うんです。

 

「ほら、次の瞬間に死ぬぞ・・・」

 

「息が止まって、あの世へ逝くぞ・・・」

 

振り返って確認しなくても分かるほど、悪意もたっぷりの表情で。

 

 

そんな調子の幼少期だったので、「一日一日を大事にしないといけない! 可能なかぎり精一杯生きなければならない!」と思い続けてきました。

 

それは今も変わってなくて、何もできなかった日の夜などは、「今日はぜんぜん頑張れなかったなぁ・・・」と嫌になるほど落ち込みます。

 

いくらか大人になりましたし、焦って生きる必要はないと知っているつもりですが、のんびりとした生き方がなかなか難しいです。

 

とはいえ、人間として休息は必要です。

 

もうこれ以上無理がきかないというところまでくると、さすがに自分でも気づいて、「今日は何もしない!」と決めては、料理を作ってみたり、ぼんやり散歩に出たりしてみるのですが、果たして心から休めているのかあやしいところだったりします。

 

 

いつだって、悪魔が杖で背中をつついてきます。

 

「いいのか、そんな風に過ごして? 明日死ぬかもしれないのに?」

 

「今日、無駄に過ごしただろ? のんきだな、もうすぐ死ぬのも知らないで」

 

 

だからきっと、自分が確かに生きていたことの証を残したくて、僕はつたないながらも物語を書くようになったのだと思います。

 

自分が書いたものが残れば、少しは悪魔に抗える気がして。

 

 

これを書いているたった今も、少しだけ胸の中で炎症が起こっていて、なんとなく嫌な感じがします。

 

夜中の二時。

 

部屋で一人。

 

眠れそうもないので、もう少しだけ起きているつもりです。

 

 

健康でいられることが、どれほど素晴らしいことか。

 

普段、意識はしなくても、それがどんなに大切なことか。

 

あなたも健康でいて下さい。

 

夏場は夏バテしないようにしっかり食べ、冬場はなるべく身体を温めて、体調を崩さないようにしていて下さい。

 

心も身体も、ずっと元気でいてください。