僕が住んでいる街のイオンには、4階に駄菓子の専門店があり、
子供が一歩足を踏み入れたなら、
テンションが上がること間違いなしの夢の場所です。
わくわくと心躍るようなお菓子が棚いっぱいに並んでいます。
数日前のこと。
別の用事でイオンに行ったはずの僕は、
何故だか引き寄せられるようにその駄菓子屋に入りました。
さっきはああ言いましたけど、すぐさま訂正させてもらって、
大人でもテンションがあがること間違いなしの奇跡の場所です。
「あ~、これ好きだったなぁ」、などと感慨にふけりつつ、
店内をくるくると回っていました。
子供の頃なら、もちろんお金なんか全然持ってなくて、
ごく限られた金額の中で果たして何をいくつ買うのかという、
壮大かつ高尚な問題に頭を悩ませたものです。
ここで回想・・・(副題 : 300円しか持っていない僕)
「んー、あと50円か~。
ラムネは買いたいんだけど、
一つでも買うとチロルチョコが買えなくなってしまうしなー。
両方買うなら、カプリコを我慢するしかないか。
でもさー、カプリコを手放すなんてそんなのありえるのか?
いや、さすがにそんな選択肢はないよなぁ」
10円単位で悩むなど、大人にはない思考です。
イオンの駄菓子屋を回っていた大人の僕は、
いつの間にか買い物カゴを握りしめ、
そしていつの間にかカゴの中には駄菓子が一つ、
さらにそしていつの間にかまた一つと遠慮なく放り込まれ、
なおもさらにそしていつの間にか気づいたらレジに並んでいて、
大人の資金力で、大人買いした駄菓子を、大人ぶって買おうとします。
僕の前には小学生の女の子が三人。
楽しそうに笑いながら並んでいました。
日に良く焼けて、元気いっぱいなのが一目で分かります。
彼女たちは一人ずつ会計を済ませていき、
三番目の子に順番が回ってきました。
その子が急に困ったような声を出します。
「あっ、5円足りないかも・・・」
ちょっと焦った声。
すると、二番目の子がすぐに財布を開け、
硬貨が乗った手を差し出しました。
「わたしの10円あげる!」
そう言って、三番目の子に手渡します。
「あっ、ありがとう。じゃあ、後で5円返すね」
「大丈夫だよ~」
「でも、悪いもん」
「じゃあ、家に帰ったら」
無事に事なきを得た彼女たちは、
ニコニコと機嫌良く帰っていきました。
それを後ろから見ていた僕は、
「いつからこういう大人になってしまったんだろう・・・」と、
少し憂慮の気持ち。
お釣りの5円。
たったの5円が、彼女たちにはとても大事なものだったんです。
そう・・・。
たしかに自分もそうだったのに・・・。
今の僕なら100円でも、いや、コーヒー代の300円とかですら、
なんとも思わずに相手に返さなくていいと言うでしょう。
ましてや1円単位の5円など、思考のはるか外にあります。
さっきまでのうきうきした気持ちはどこかへ消え失せ、
自分の会計を済ませます。
「あの子たちが食べるお菓子の味と、
僕が食べるお菓子の味は、
きっと全然違う味なんだろうな・・・」
そう思いながら。
総額で千円オーバー。
お札で支払ってやりました。
大人の僕には全然高い買い物じゃありません。
5円の価値ーー。
「ラムネかチロルで迷うなら、両方買っちゃえば?」なんて、
子供の頃は考えもしなかったのに。
