【ディーン・R・クーンツ】ウォッチャーズ | 夏衣優綺の活字中毒

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僕にとっては、読書の世界を爆発的に広げてくれることになった

思い出の一冊です。

 

 

僕が子供の頃は、ライトノベルなどというジャンルはなかったし、

今ほど色とりどりの本はありませんでした。

 

選択肢が限られていたんです。

 

当時の書店には、夏目漱石だとか志賀直哉などがまだ主流で、

『夏の100選』などにも純文学や文豪の作品が数多く選出され、

僕はそれらを少し難しく感じていました。

 

 

読書は子供の頃から大好きで、本当によく読んでいましたが、

ただ僕にとって小説とは、いくらか我慢しながら読むものでした。

 

中学時代に好きだった赤川次郎さんや星新一さんの本を読む時は

我慢などまったく必要としませんでしたが、

川端康成や坂口安吾などはいくばくかの忍耐が必要であり、

でも、それこそが読書なのだという認識でした。

 

 

大人たちがいい本だと言うのだから、これはいい小説なんだろう。

 

日本人なんだから、いずれにせよこういう本を読んでおく必要がある。

 

 

子供心にそんな一念で日本文学に触れていった訳ですが、

大学生になり、僕の世界は一変します。

 

 

中学から付き合いのあった読書好きの友達がいて、

ある日、その子の家に遊びに行った時に貸してくれたのが、

クーンツの『ウォッチャーズ』でした。

 

本を借りるのって、時としてちょっと抵抗感ってないですか?

 

それはたぶん、プレゼントに服やアクセサリーをもらう感覚に

似ているのかもしれません。

 

相手の好意はもちろんのこと嬉しいけれど、

自分の好みに合わなかったらどうしよう、

という逡巡まじりのあの気持ちです。

 

 

ですが、僕はその友達に絶大な信頼をおいていたので、

喜んで借りて帰りました。

 

帰ってから本を開くと、ほんの数ページで僕の心は鷲掴みにされ、

50ページも読み進める頃には呆然としていました。

 

「こんな本があったんだ・・・」

 

 

書店に並んでいた小難しい本。

 

国や大人たちが推奨するどこか堅苦しい小説。

 

 

手の中にある本はそれらのどれとも違い、

僕は活字を追う喜びに満たされていました。

 

上下巻の長編を本当にむさぼるように読みました。

 

我慢や疲れもなにも感じない読書。

 

 

ディーン・R・クーンツという名前も知らない海外の作家が

書いたその作品は、幾重にも折り重ねられた謎に包まれ、

ページをめくる手を止めるのはもはや不可能でした。

 

映画を観ているような疾走感と共に読了する頃には、

すっかり衝撃に打ちのめされていて、

どうして今まで海外文学を読んでいなかったのかといった

強い嘆きが過ぎりました。

 

なんとかして面白い本に出会いたいと、

そう思いながら書店で悩ましげに本を眺めていたそのすぐ側に、

僕が望む小説がたくさん並んでいたのに。

 

 

それからは海外文学ばかりを読んでいくことになるのですが、

ウォッチャーズとの出会いにより、

本当に自分の世界が圧倒的に広がっていく気がしました。

 

日本を出てまさに世界中を旅行するような気持ちです。

 

練達のスパイ、一国の女王、優秀な検視官・・・。

 

CIAやKGBなどが入り乱れる国際捜査が展開され、

銃撃戦やカーチェイスは言うに及ばず、

時にコメディータッチだったり、時にハートウォーミングだったり。

 

読書がこんなにも楽しいものだったのかと

びっくりしながら海外文学の世界に浸っていきました。

 

 

ウォッチャーズは、アインシュタインという天才犬を巡るお話です。

 

孤独なトラヴィスと、絶望に打ちひしがれていたノーラ。

 

アインシュタインが二人を結びつけ、心の救いと恋愛を絡めながら、

国家機関や殺し屋に追われる主人公たちの

壮絶な戦いが描かれます。

 

この本を読んで以来、

僕はゴールデン・レトリバーがいっぺんで好きになり、

街でレトリバーに出会うとアインシュタインに見えて仕方ないです。

 

 

本当に大好きで特別で大切にしている小説です。