男爵師匠のサマースクールで緊張気味な日本人のため、場の空気をやわらかくする役を買ってでる私…
見るからに震えている生徒A君に、
私:『グリュミオー先生は全然コワい人じゃないからネ~』
小声で励ます。
すると男爵はA君に向かって、
『時計をはずしなさい~』
と諭した。
またA君、震えながら、ぎこちなく、右手で左手首の時計をはずそうとしているのだけど、うまくはずれなかった(みんなも注目しているし、恥ずかしそうなA君)。
私:『この腕時計、絵なんですぅ~!消すまで待っててください~!』
と、言ってみた。
するとみんな、ドッと笑い、男爵も吹き出した。
その間、A君も緊張ゆるんで時計をはずせた。
しかしA君、ばつ悪そうだったので、
私:『私も腕時計をはめたままでしたぁ~』
と網のカーディガンをまくろうとしたら、もはやバンドの穴を止める金具にカーディガンが引っかかっていて、脱がなきゃダメな感じだった。
なので、
私:『この桜吹雪が目に入らんかぁ~!』
と、日本語で言いながらカーディガンを脱いで、腕時計をはずした。
日本人だけクスクス笑った。
私:『お待たせしました!授業始めてください~!』
男爵師匠、しばらく笑いながら授業していた。
…と、まあ、こんな事があったのだけど、これをクレバース先生が見ていらっしゃって、2回目のデートの時に、肴にされた。
ヘルマン:『本当あなたたちのは、お笑い茶番劇だよ~あなたたち師弟は…』
私:『私、真面目だったんですぅ~!』
ヘルマン:『腕時計はずすのに、カーディガンまで脱がなくても!ワハハハハ』
私:『私のこと笑ってばかりいないで、クレバース先生、ご自身のこともお話ししてくださいよ~』
すると彼は、スケジュール帳を出してサラサラサラ~っと、文字を書き始めた。
お互いに母国語じゃないワロン語で話しているので、もしかして、“The 筆談”?と、思った。
が…
ヘルマン:『これは僕が滞在しているホテルの住所!』
と、紙を渡された。
私:『カンブルの森に近いんですね~。こんな所にホテルがあるの、知りませんでした!シュナイダーさんとサッカーやってる近くなのに…』
ヘルマン:『来てくれる?
』彼は笑みを浮かべながら真面目に言ってるのだけど、私は返事をしなかった。
まだ、彼のことよく知らないし…。
しかし。
フランクちゃんの言葉、
『シュナイダーさんとルームメイトになってから反射神経が移ったみたいだ。風邪が移るように…』
というのを思い出していた。
反射神経が移るなら、あさましくホテルにお邪魔しちゃおうかな……
悪女的な思考になってきた私。
…つづく