野人の価値観念は普通よりも極端にズレているようだ。同じような男にはまだ会った事はない。大学、会社などには関心もなく受験勉強もしなかったしノートも持たない。教科書よりも魚を突くモリのほうを大切にした。いきさつから海外をあきらめて仕方なくヤマハ本社に入社したが、組織に合わせられるはずもなく、口癖は「文句あるならクビにしろ」だった。東シナ海時代は、毎月離島から鹿児島に上がった3日間で給料を使い果たした。20代半ば、給与は普通の倍近くあったが紙切れ同然だ。一晩平均5万は夜の街に消えていった。そんな豪遊が4年間も続けばさすがに飽きる。それ以来自分からバーやクラブに行った事は一度もない。寿司屋通いだけは続けた。命を削るような仕事だったから貯金などは考えていなかった。命の洗濯代のようなものだ。
「物」に対してもこだわりはなかった。身の回りの道具や家具、衣類などは何でも良かったし無くても良かった。どちらかと言えば持ちたくない。必要な車は何台も買い替えたが、それは壊れたからだ。新車は買ったことがない。床に穴が空いたり、壊れて修理不能になると、知人の修理業者に「すぐ使える車持って来い」と頼む。車種も色も価格も指定しないから20万だったり100万だったりするが気にしない。車は「動けば良かった」のだ。「車は移動する道具」という以外何の感情も持っていないしワックスがけも洗車もしない。ドアや後部をぶつけられても機能を損なわない限り修理もしないし、相手に請求もしないから感謝もされる。車が凹んだからと言って困るわけでもないのだ。
土地や家にもまったく執着がなく、株式会社の社長をやって8年だがいまだに家賃5万の個人事務所を兼ねた借家で一人暮らしだ。家財道具はほとんど持っていない。まあホームレスとあまり変わりないのだ。唯一こだわって買ったのは「冷蔵庫」くらいだろう。食い意地が張っているので冷蔵庫だけは一番大きな高性能を選ぶ。後はもらいもの拾い物しかない。何年も布団に寝る習慣がなかったが、昨年立派な羽毛布団をもらったのでたまにはそれで寝るようになったが、腰が痛くなるのだ。硬い床のほうが快適な気がする。道具は使う為にある。自分が必要とする機能さえあれば十分だ。その機能がなければ作るしかない。このコーナーではそうやって作った道具や武具、買って何十年も使っている道具などを紹介する。ただ、大切にして磨いたりしているわけではない。必要ない時は押入れに放り込んでいる。中にはあまり目にしないものもあるだろう。手裏剣とか・・・(笑)