峻だ。
モデル事務所の後輩、梨沙とあれ以来会っていない。
あの事があった翌日に事務所へ行き、彼女の携帯電話のメアド、番号は調べ済みなのだが。
梨沙を考えれば、原因を作った杏梨を思い出してしまう。
峻は重いため息を吐いてからベッドに寝そべった。
読みかけの推理小説を手にした時、机の上の携帯電話が鳴った。
誰だよ・・・こんな遅くに。
すでに真夜中の12時を回っている。
着信の名前を見て再びため息が出る。
「もしもし?姉貴?」
電話を耳にあてた途端に大音量の音楽が耳に響く。
うるせぇ・・・。
「姉貴?なんだよ こんな時間に」
『峻くぅ~ん』
ろれつの回らないしゃべり方。
「もしかして酔っ払ってる?」
『そうなのぉ~ なんだか酔っちゃって・・・・』
最後の方の言葉は尻つぼみで小さくなっていく。
もともとお酒に強くない彩は酔わないように気をつけている。
こんな彩は珍しい。
何かあったのか?
「どこで飲んでるの?」
『えー・・・・っと・・・』
酔っ払い相手の返事に苛立ちを抑えて待っていると、違う女性の声が聞こえてきた。
『もしもし、峻?真緒だけど』
「そこって真緒さんの所?」
姉貴の親友、真緒さんはクラブを経営している。
大会社の社長令嬢の真緒さんは政略結婚が嫌で家を出て勘当中。
立地条件の良い所にクラブがあるから経営はうまく行っているらしい。
と、姉貴から聞いた事がある。
『そうよ、何かあったみたいよ?珍しくベロンベロン』
酔っ払いは見慣れているから、いつも真面目な姉貴が酔って楽しんでいる様子。
「すぐに迎えに行きます」
あそこならこの時間、20分もかからない。
『運転気をつけるのよ~』
「姉貴に大人しくそこで待っているように言っておいて下さい」
電話を切ると、車のキーを手にして部屋を出た。
* * * * * *
杏梨はお風呂から上がるとピンク色のキャミソールとタオル地のホットパンツ姿でキッチンへ行った。
「お水、お水♪」
ちょっと長く入りすぎちゃったかな。
体が水を欲している気がする。
それにしても・・・ゆきちゃん、どこに行ったのかな・・・。
行き先を言わない事は珍しくないけど。
あ!ダメダメっ!気にしちゃダメなんだからっ!
自分に叱咤して、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出した。
続く