昨日、この場所のTNRに入った際に
こう言った人がいた。

「ここの猫たちを連れて行かないでよ。
手術なんかしないでいいよ。
みんな子猫を見るのが楽しみなんだからさ。
ここのひとたちはみんな餌だってあげてるよ。
俺だってあげてるもの。
手術なんかして子猫が産まれなくなったら、みんなあなたを恨むよ。」



このヒトが住む部屋のベランダには野良猫の餌が置いてある。
昨年までこのヒトの家にも猫がいた。

少し開いた窓から野良猫たちは部屋に入り込むようになり、ある母猫はそこで出産したという。

少し大きくなった子猫たちが部屋に尿や糞をして臭くてたまらないから
子猫たちをダンボール箱に入れて土手に捨てて来たと
悪びれた様子もなく話した。





今日もこのヒトの部屋の前の芝生で日向ぼっこをしていた猫たちは
ワタシが少し近づいただけで走り去って行く。
そら逃げろ
怪しいおじさんが来た!



昼間だというのに猫が多い。
ベランダの掃き出し窓が開くたびに猫たちは上を見上げる。
時に食べるものを放り投げてもらえるのだ。




雄猫と若い猫は警戒心が少ない。







「ここの野良猫たちは60匹くらいはいるらしいですよ」と、ここの委託を受けている管理会社の女性は言った。まるで危機感もなく。
ワタシがその女性と話をしている最中にも野良猫の苦情を言いに来た男性がいた。


その彼は
すごいことを平然とした顔で話した

「また餌やりを突き止めましたから。写真も撮ってありますよ。
餌を置いてある場所に【餌やり禁止】の看板を貼らせたけど、それでもまだ餌をやる奴がいる。
私は全員突き止めますよ。
この場所から猫をいなくするか
自分がここから出て行くか
そのくらいの覚悟でいますからね。」

あなたがここから出て行く事に100万票!


餌やり場所を突き止めては
貼り紙を張るのだ。
自分が貼らせたのだと彼は嬉しそうに話した。


ある意味、彼の執念はすごい。
怖くもある。
彼を知らない人はあまりいないというくらいに
ちょっとした有名人だ。
変わり者として。
関わらない方がいい人物として。

彼とは幾度も話をした。
「私のことを頭がおかしいと言う人もいますよ。
でもね、嫌なものは嫌だし、きまりはきまりなんですよ。
息子たちの家にも猫はいますよ。
ここにいる猫たちとは違いブランド猫ですけれどね。
だから金がかかりますよ。
孫たちにも言い聞かせてあります。
規則を破って野良猫に餌をやるような人間にだけにはなるなとね。
…………………………」
延々と彼の持論は続くのだ。
彼の信じる正義に於いて彼は正義の味方なのだ。
野良猫に餌をやるという決まりを守らないやつは悪いヤツ。
彼の正義に於いて断じて許してはならないのだ。

もちろん全く理解できないことはないですと
彼には話した。


ただやり過ぎである。
猫たちのいる場所を熟知し
野良猫たちに餌を与える餌やりさんを見つけてはその現場を写真に収め
時には警察に通報の電話を入れる。

証拠写真と呼ぶ彼の携帯には
わたしのバイクとわたしの姿を写した写真もあった。

名刺を渡し
その場で彼の携帯からワタシに電話をかけてもらい
当然わたしの携帯が鳴った事により
警察には通報されずに済んだ。

ご主人こそ
そのうちストーカーで訴えられますよ。
そしたらすぐに引っ越しましょう。
南極とか北極とか野良猫がいない場所がいいですね。




今日もみーこちゃんはいた。
さくら耳。
3年前にTNRした猫だ。





みーこちゃんは、何年間もずっと餌をもらっていた。
暗くなると、この場所に必ず容器に入れた餌を置いてくれる人がいた。




けど先月
先に書いた正義の味方の彼から
餌をあげるなと1時間に渡る叱責を受けた餌やりさんは
長い間の習慣になっていた餌やりをやめたと電話をくれた。



以来みーこちゃんは餌やりさんが来る方向を見ながら何時間かを過ごす。



この場所の猫たちのTNRに
どうぶつ基金の無料チケット11月分を使わせて頂きました。
ご寄付を頂いた皆さまありがとうございました。
大変助かりました。








ここはのりたまたちがいた場所でもある。




わたしが
この場所に始めて関わったのは何年前だったろう。
確か子猫を引き取って欲しいという依頼だった。
野良猫がたくさんいることを知った。
けれど、かなり広い団地敷地内ということもあり
TNRに入ることはしなかったことを
後に後悔した。











大きな団地ともなると
野良猫のTNRをすることも
そう簡単ではないらしい。
変なカゴを持ったひとがベランダの下をのぞいていると警察に通報が入ったらしい。
わたしのことだ。

明日も管理会社との話し合いになる。
「管轄」という言葉が頻繁に出てくる。
あちらに電話をかけこちらに話をして
また振り出しに戻る。
これではなかなか野良猫が減るわけがない。


TNRをする事なく餌やり禁止だけでここの猫たちを追い出そうとする力が
悪質な撒き餌を増やしていくのを
どう話せば分かってもらえるのだろう。

管理会社にとって
わたしの独断でのTNRは住民に不安を与える行動らしい。
個人ボラの限界なのだろうか…





ここを後にする時間にも
みーこちゃんは餌やりさんを待っているようにしか見えなかった。