パリの朝、
近所のマルシェに出かけた。

トマトを選んでいると、
ぼくの後ろに、
少し行列ができてきた。

日本のくせで、
つい急ごうとしたぼくに、
店主が笑って言った。

「急がなくていいよ」

後ろに人が待っていても、
彼は目の前のひとりとの時間を、
ちゃんと大切にしていた。

一つひとつ手に取って、
「これがおいしいよ」と話しながら。

その光景に、
ぼくは少し、はっとした。

いつのまにか、
「早く」「効率よく」が、
体にしみついていた。

でも、ゆたかさは、
たぶん反対側にある。

目の前のひとりと、
いまこの時間を、味わうこと。

急ぐことをやめると、
見える景色が、変わる。

予定を詰めこんだ日より、
ゆっくり過ごした日のほうが、
なぜか、よく心に残っている。

早さは、
何かを片づけてはくれる。

でも、味わう時間までは、
つくってくれない。


あなたが最近、
急ぎすぎていることは何ですか?