椅子に深く。そして背もたれに右肘を。そして頬杖。右脚に左脚を組んで空を見る汐梨。
そして…。時折、チラリと耀司に流し目をしながらも…。
バセットはいつも通りにサッシから外を…。
麻沙美、動物図鑑を見ながらに、
「はは。これ、バセット~~。」
図鑑の中のバセットバウンドに指差してバセットに。
バセット、そんな麻沙美に、
「クゥ~~ン。」
耀司、テーブルに、右肘を。そして、右手で右頬を当てて、
「ん~~~。」
汐梨、姿勢を戻して耀司を見て、
「…ってかさぁ~~。兄さんの方から、決めた。って、言ったんだからね~~。このままうだうだと~~。な~~んて言っておきながら、何…???…肝心要に、睦美さんからもお付き合いって~~、言われた途端、何々何…???…これからどうすれば…。ある意味、それって、卑怯でしょ。…って言うか、睦美さんにも申し訳ないでしょ。」
そのままの姿勢で汐梨を見つめる耀司。
汐梨、
「んなもん、たかが義姉さんの時の逆をやればいいって話じゃん。…それくらい。」
「はいはいはい。分かりました~~。分かりましたよ~~。やればいいんでしょ、やれば~~。」
睦美、休憩時間中にまた…、教室でピアノを…。
それを見ていた生野、
「はははは。うんうん。弾いている、弾いている。」
メロディを聞きながら、
「これは~~。」
顔を傾げて…。そして、
「あ~~。」
納得したようにフィンガースナップ。
「はいはい。リチャードクレイダーマン。ドランの微笑~~。ははは。どうして、どうして~~。」
そこに有紀。
「あら、事務局長~~。」
そして聞こえるピアノのメロディに。
「あは。弾いてますね~~。眞鍋さん。」
生野、有紀にニッコリと。
「えぇ。」
「奇麗なメロディですけど、これ…。ん~~~???」
「リチャードクレイダーマン。ドランの微笑と言う曲です。」
有紀、
「リチャードクレイダーマン。」
顔を傾げて、
「うん…???…クラッシック…???」
その声に生野、
「あ、いえ…。」
そして顔を傾げて、
「多分…、黒川さんたち…。いや、事務局のみなさんも知らないと思います。なんせ、まだ生まれてませんから。」
その声に有紀、
「い~~~ぃ…???」
「当時から、イージーリスニングと呼ばれているジャンルの楽曲。この曲が日本で聴かれるようになったのが、リチャードクレイダーマン、20代後半ですよね~~。日本でも一世風靡されたピアニストのひとりです。」
有紀、話を聞きながら、
「へぇ~~ぇえ~~。…でも、良く、眞鍋さん、この曲。」
「まっ。ご存じ、なんでしょうね~~。」
そして生野、
「はははは。この前もここで、元嶺さんが眞鍋さんのピアノを聞いて、凄い。初めて聞いたって。」
瞬間、有紀、
「え~~~ぇえ~???…それはない。あの子、私や珠里さんと、眞鍋さんのピアノ聞いて感動してたのに~~。」
生野、その声に、
「えへ…???…それじゃあ~~。」
「多分、完璧に忘れてる。まま。仕方ないかも…。事務の仕事はまぁまぁだけど…。とにかく、友達付き合いが物凄いですから。音楽なんて眼中になしって顔。」
生野、すぐさま、
「ははははは。まま。ここで一番の若手ですから。しかも…、大卒ですから。まだまだ。」
そして生野、
「…それにしても…。眞鍋さん、いつもはクラシックですけど…。珍しいですね~~。他のジャンルの…。…しかも…。…ドランの微笑。」
すぐさま有紀、生野を見て、
「えっ…???」
生野、
「何かしら…、ありましたか…???…ははは。」
有紀を見て笑顔で。
そんな生野に有紀、瞬きをして、
「何か…って、何…。」
すると有紀、途端に、
「あ~~~。」
生野、
「はい…???」
有紀、書類封筒を抱き締めながら生野に耳打ち、
「もしかしたら~~。」
生野、また、
「はい…???」
…そして…。有紀から…。
生野、目を真ん丸にして、
「えっ…???…うそ。」
有紀、ニコニコとして、
「…かも、で~~~す。」
そして、
「専ら、事務局の、ある種の裏話になってま~~~す。」
そして、
「では。速達のようですから教室長にお届け~~。」
抱き締めた書類封筒をアピールするように。
生野、有紀から耳打ちされた話に、
「何と。」
睦美、実は、音楽教室では、事務局員たちとのプライベートに関しては…、
と言うか、コミュニケーションを余り得意とはしていない。
…が、それでも、子供たちの母親からは時々、お誘いはある。
友達感覚ではないのだが、時にランチなど。
そのため、他の事務局員たちよりもむしろ、
子供たちの母親たちとのコミュニケーションは良好であるとも言える。
逆を正せば、子供たちの母親たちも、
同じ日本人同士の事務局員たちよりも眞鍋の方が誘い易いし、
お気楽的な部分もあると言う訳だ。
睦美の方も、月に2、3回程度ではあるが、それを楽しみにしている風でもある。

ママでいい…。 vol,162. 「事務局の、ある種の裏話になってま~~~す。」
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