芙美花、道端で摘んだ小花を手に。それを見つめながら、
「それから…。おとうさんと私の生活が始まった。…って言うか、私が何とか、立ち直るまではおばちゃんが…。はは。」
そして芙美花、
「あっ。はは。」
真鍋を見て、
「バセット。…うんうんうん。バセットにも助けられた。ウチの愛犬。」
瞬間、芙美花、眞鍋を見て、
「あ、ごめんなさい。バセットの事。」
眞鍋に申し訳なさそうに。
睦美、そんな芙美花に、首を振って、
「ううん。」
睦美も前を向いて、
「でも…。さすがに…。…昔の、子供の時の、あの時が…。」
芙美花、眞鍋を見て、
「犬に噛まれた。」
睦美、コクリと。
「早くにね。病院に行ったのが幸い。時間が遅かったら。」
顔を左右に。
「だから…。あれからは、今まで。小さな犬を見ただけでも…。自然に体が…。シャットアウト。」
芙美花、そんな眞鍋を見て、
「おとうさん、トラウマって…。」
睦美、その声にコクリ、
「うん。…だからかな~~。」
息を吐いて、吸って、
「自然に、あんまり外には…。」
近くの公園に辿り着いていた。そこのベンチでふたり。
芙美花、
「ここから、あと10分くらいのところに、ヨシカワ音楽教室があるんです。」
その声に睦美。目を真ん丸に。あちこち見回して、
「あ、そっか~~。あ~~。うんうんうん。確かに~~。ヨシカワに近いって~~。」
芙美花、眞鍋に。
「眞鍋さん。」
睦美、芙美花を見て、
「うん…???」
「おとうさん、眞鍋さんたち、きっと、大切な人たちって思ってる。…まっ、確かに。会社がリモートになって、前みたいに、会社に行く訳じゃないから。…あまり、出掛けなくなった。…って言うか、私も、家におとうさんがいてくれると、何だか、不思議に安心できるって…。」
睦美、そんな芙美花に、
「うんうん。分かる気がする。…家にいても、仕事はしてるんだもんね。」
芙美花、眞鍋に顔をコクリと。
「うん。コロナになって、ウチは変わったのかも…。」
僅かな沈黙。
芙美花、
「眞鍋さん。」
睦美、
「うん…???」
芙美花、眞鍋を見て、
「バセット。好きになってくれたら、嬉しい。」
睦美、困ったようにも、何とか笑顔で、
「あぁ~~。」
脳裏に現れた晄史、
「…克服しないと。」
睦美、思わず顔を下に。そして膝の上で両手を握り、
「ん~~~。」
芙美花、
「私が~~。小さかった頃かな~~。もぅ~~。その時にはバセットはいた。はは。あの頃…。…って言うか~~。幼稚園の頃なんて、かなりバセットにやんちゃしてた。バセットに負ぶさってねぇ~~。もぅ~~。いっつもバセットと一緒で…。バセットに凭れて寝てたな~~。…って言うか、私…。ほら。ひとりっ子だから。」
睦美、その声に、コクリと。
「あ~~。うんうんうん。」
「だから。尚更ね~~。ははは。バセットってほんと、全く吠えたりしない。抱き締めるともぅ~~。ほっぺをペロペロ。」
そこまで言って芙美花、
「でも…。今じゃ、麻沙美だけどね~~。…もしかしたら、バセットも、懐かしいんじゃないかな。あの頃の私が戻ってきた。みたいな。」
そして芙美花、眞鍋を見て、
「だから。バセットは絶対に、人を怖がらせない。それだけは自信を持って言える。…っというかぁ~~。私の。」
口を搾って、
「ん~~~。私の…、おねえさん…???」
顔を傾げて。
睦美、芙美花を見て、
「あの犬…、メス…???」
芙美花、目をパチクリと、
「うん。そうだよ。」
「へぇ~~~。」
芙美花、
「はは。暗くなるのが早い。…帰りましょうか。」
睦美、
「ですね。」
家の前まで。カーポートに車が…。
芙美花、
「あ。おばちゃん。」
睦美、
「木守…さん。」
「うん。」
睦美、車を見て、
「…と、言う事は~~。レッスン。」
芙美花、
「終わったみたいですね~~。」
芙美花、ドアを開けて、
「ただいま~~。」
リビングで耀司、
「おっ。帰ってきた。」
汐梨、キッチンで、
「うん。みたいね。」
麻沙美が玄関に、
「キャハハハハハ。」
駆け足で。そして、玄関のフロアにしゃがむように滑りながら、
「おかえり~~。」
芙美花、
「はは。ただいま~~。」
睦美も、ニッコリと。
「こんにちは~~。」
そのまま麻沙美、また起きて駆けながらリビングに。
キッチンから汐梨、睦美に、
「はは。こんにちは~~。ささ。どうぞ。うん。」
ニッコリと。
睦美、ペコリと。
「お邪魔、しま~~す。」
耀司、内心、心臓がドキドキ。
そして…、芙美花と睦美、リビングに。
耀司、ニッコリと。
「ども。」
睦美、高井戸に、
「さっきは…。」
鼓動が高鳴ってはいる。
耀司、その声に顔を左右に、そして右手をヒラヒラと、
「いえいえ。」
既に麻沙美はバセットに凭れて絵本を。
睦美、口の中の物をゴクリと飲み込むように。
バセットに凭れている麻沙美を見て睦美、僅かに目を潤ませて。けれども…。
汐梨が、睦美に、
「はい、どうぞ~~。」
コーヒーを。そして、
「ごめんね。インスタントしかなくって。」
汐梨、申し訳なさそうな顔で。
睦美、その声に恐縮そうに、
「あ、いえいえ。」

ママでいい…。 vol,127. 芙美花、眞鍋を見て、「あ、ごめんなさい。バセットの事。」
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庄司紗千 つつじヶ丘の坂道で…。
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。
