暁美、
「かかかかか。まだあんた、2歳だったから、そりゃ、覚えてないだろう~~。まっ。…けど、あの時の事はかあさん、とにかくビックリ。」
「はいはいはい。」
睦美、
「何度も聞きました~~。」
「おとうさん、信じなかったけどね~~。本当にあんたが小さなピアノであれを弾いたのには驚いて~~。かかかかか。」
また睦美、
「はいはい、絶対音感ですぅ~~。」
暁美、
「かかかかか。」
そして、キョトンとして、
「その子も、絶対音感なのかね~~。」
すぐさま睦美、変顔をして、
「はぁ~~ぁあ~???」
そして、
「かかかかか。そんなの…。私が、分かる訳ないじゃ~~ん。」
その時、一瞬、睦美、韓国の、自分の本当の父親の顔が脳裏に…。
けれどもその顔は僅か2秒程で消えて…。
暁美、お茶を一口、そして、
「まぁね~~~。」
すると暁美、何を思ったのか、
「高井戸さん、大事にしなさい。折角の日本の友達~~。無駄にしちゃいけないよ~~~。…音楽にはあんた、真向から、だけど~~。異性にはからっきし~~。まま。…一途なところは一途だけどね~~。…それにおまえ、自分の事はあまり喋らないし…。」
睦美、いきなり現実に戻されたような…。
そして、口をへの字にして、
「おかあさん…???」
「ほれほれ。食事の準備でもしようかね~~。…今日は、カレーだね~~。」
睦美、
「あ。…う~~ん。」
そして、
「では、始めますか~~。」
少し、何かしら思い出したような顔をして、口を尖らせながら。
そんな睦美を見て暁美、
「う~~~ん~???…どうしたい。なにやら…。」
その声に睦美、母を見て目を丸く、
「うん…???…あ、はは。うん。小さなピアノでね~~。小さかった頃の事、思い出しちゃってね~~~。」
暁美、そんな睦美を見て微笑んで、
「はは。うん。」
コクリと。
「懐かしいよね~~~。…韓国時代。」
睦美、思い出すように、
「うん。」
そして…。ニコニコとしながらも、顔を傾げて、
「はは。…うん。懐かしい~~。パパ。」
そんな睦美を見ての暁美も、
「うんうんうん。」
そして…。リビングのキャビネットの上の写真を見ながら、
「今頃、天国で何してるかな~~。」
但し、キャビネットの上の写真には、韓国の父との写真はひとつもない。
韓国の父との写真は、暁美にしても、睦美にしても、晄史にしても、
自分たちのアルバムの中にいる。
暁美の夫であり、そして睦美と晄史の父親の韓国人、ハン・ドファン。
睦美が高校、晄史が中学の頃に亡くなっている。
晄史と誓が一緒に、
「ただいま~~。」
晄史、
「お腹空いた~~~。」
誓、
「かかかかか。駅からそればっかり~~。」
暁美、
「あら、ふたりお揃いでの帰宅~~。」
晄史、母を見て
「う~~ん。ホームに降りて歩いていたら、いきなり腕を取る人がいてびっくり。かかかかか。」
誓も義母を見て、
「ホームに降りて歩いていたら前を歩く人が晄史だったから~~、思わずワオッって。」
晄史、
「今日はカレーって聞いてたから~~。駅で何かって。でも、我慢、我慢。ははは。」
晄史と誓、自室に…。
そして…。仕事の話しをしながらの食事。
「いただきます。」
晄史、
「お~~。おいしそ。」
みな、カレーを食べながら…。
誓、晄史に、
「ヴァリエット、良い感じじゃない…???」
その声に晄史も、
「うんうんうん。お蔭様で、好評でチケットが嬉しい程。…来月は韓国だね~~。そっちのチケット予約も順調だから。」
日韓合同ユニット「Valietteヴァリエット」の立ち上げスタッフになっている晄史、ニコニコと。
暁美、
「え…???…何…???…じゃあ、あんた。来月は韓国…???」
「ふん。そっ。ん~~。でも、韓国、日本、行ったり来たりになっちゃうかも…。立ち上げスタッフにはなってはいても、それだけじゃないから。こっちの仕事との並行だからね~~。」
睦美、
「何…???…じゃあ~~、忙しいんじゃん。」
晄史、そんな姉に、
「そうだよ、忙しいよ。…けど、プライベートはプライベートで別~~~。」
そして晄史、ニッコリ。
暁美、その話に、キョトンとして、
「何…???…そのプライベートって。」
いきなり睦美、顔をクシャリとさせて。そして口をへの字に。
その顔を見て誓が、思わず、
「ぷっ。」
暁美、誓を見て、
「う~~~ん~~???」
晄史も、何かしら、見ていたようで見ていないようで、
「くくくくく。」
暁美、
「な~~ぁに~~???…ふたりして~~。」
晄史、
「べ~~つ。」
誓も同時に、
「あのねぇ~~。」
晄史、誓、共に顔を見せ合って目を丸く。そして、また、
「ぷっ。」
「くくくくく。」
睦美、口を捻じ曲げて。
暁美、瞬きしながらも、
「な~~によ~~。」
誓、口を押さえながら、
「晄史がね~~。」
仏頂面の睦美を見ながら、可笑しいのを堪えようとしながらも。
晄史、そんな姉を見て、可笑しがりながら、
「ぷぷ。あ~~~。あのね。かあさん。」

ママでいい…。 vol,098. 「高井戸さん、大事にしなさい。折角の日本の友達~~。」
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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
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