リビングで新聞を読んでいる女性。
睦美と晄史の母親である。眞鍋暁美(まなべあけみ)。
暁美、
「あ~~。はい。おかえり~~。どうだった~~???…ははは。ジャズフェス。」
すぐさま晄史、
「もぅ~~。最高~~。」
その声に睦美も、
「ふふふ。」
誓、
「もぅ~~。感動しまくり。お義母さんも来れば良かったのに~~。」
そんな誓の声に暁美、右手を振って、
「いやいやいや。とんでもない。どうも私は、人込みが苦手でねぇ~~。まぁ、普通に街を歩くって言うのは良いんだけど。映画を観たりは。…けど…。立ち見でしょ。人気のジャズフェス~~。人だってもぅ~~。」
睦美、
「ははははは。まま、確かに。」
晄史、
「うんうんうん。さすがに。混雑はしてたよね~~。」
その瞬間、暁美、また右手を振って、
「あ~~~。かあさん、それはもぅ勘弁。」
晄史、にこやかに、
「まま。確かに。だから~~。僕も姉さんもかあさん、無理強いには誘わないし~~。人込みはね~~。」
誓、買ってきた食材を冷蔵庫の中に。そして、
「みんな~~。何か飲む~~???」
暁美、
「私は、ただいま、お茶を頂いております。」
睦美、
「あん。じゃあ~~。コーヒー。いいかな。」
晄史、
「あん、僕もコーヒー。」
誓、ふたりの声に、
「ラジャ~~。畏まりました~~。」
晄史、睦美を見て、
「…って言うか、姉さん。サンキューだね~~。あのジャズフェス。嬉しいお値段のチケットゲット。あらためて感謝。」
睦美、
「へっへ~~。どんなもんだい。…って言うか、私の方こそ、ビックリだったけど。」
誓も、
「うんうんうん。私もビックリだったわ。えっ!!!このミュージシャンのこのジャズフェス。こんなんでいいのって…、半額以下だよ、半額以下。」
睦美、口を真一文字にニコリと、
「まぁ~~。言うなれば、亜耶乃(あやの)先生に感謝だね~~。」
誓、
「お義姉さんを教室に紹介してくれた人ね~~。私は、まだ、会った時はないけど~~。」
睦美、
「まぁね~~。亜耶乃先生、とにかく忙しい人だから~~。日中は教室でピアノの講師。…でぇ、夜はコンサート。日本中、アチコチだよ~~。だから~~。出来る限り、決まった生徒さんしか教えないんだけどね~~。クラッシックからジャズ、そのピアノセンスって言ったら、申し分なし。」
「まぁ。そのおまえをピアニストにしてくれた名講師でもあり、睦美贔屓でもあるからね~~。」
暁美。
ここで言う、亜耶乃(あやの)とは、ヨシカワ音楽教師のピアノ講師、
小白川亜耶乃(こじらかわあやの)の事である。
「睦美のピアノの才能を一番最初に見込んでくれた人だからね~~。この子は出来るって。」
暁美。
「かかかかか。あの頃はあんた。」
睦美を見て、
「ピアノ一本だったからね~~。…って、言うか、亜耶乃先生が優しかったのか。」
睦美、
「うん。その通り。…まっ。でも、昔の事だからね~~。」
玄関のチャイム。
暁美、
「あ、は~~い。」
暁美、モニターを見て、
「あは。脇坂さん。は~~い。」
モニターのスピーカーから、
「暁ちゃん、回覧だよ~~。」
「今、行きま~~す。」
玄関を出て暁美、女性と束の間の立ち話。
…そして、お互いに手を振り、
「うん。じゃね。」
「わざわざありがとう~~。」
暁美、回覧を見て、
「おやおや。物騒な世の中だ。」
高齢者を狙った悪質な詐欺関連とロマンス詐欺防止の回覧である。
因みに。ここ、眞鍋家は3人の韓国人。
既に帰化している、眞鍋暁美(まなべあけみ)と長女の眞鍋睦美(まなべむつみ)。
そして長男の眞鍋晄史(まなべあきひと)の3人家族。
その中に新婚として、旧姓、張本誓(はりもとちか)が同居する事となったのだった。
ただ…。確かに、この一般住宅に初めから3人の韓国人が住んでいた。
と、言う訳ではない。ある男性が、結婚のためにこの敷地と物件を購入。
そして、大掛かりなリフォームを経ての眞鍋家として生まれ変わった家である。
その男性の名前を、眞鍋武敏(まなべたけとし)と言う。
所謂、暁美の日本の夫であった男性である。
大手ゼネコンの黎和(れいわ)建設に勤務していた。
15年前に暁美以下、睦美と晄史が日本に移住する事になる。
暁美の夫、眞鍋武敏の元に。睦美と晄史にも新しい父となる訳である。
暁美の旧姓は、韓国名で、ハン・ヘギョ。
そして睦美の韓国名はハン・ユジュン。
そして晄史の韓国名がハン・ジュノ。
元々、東京の大手ゼネコンの黎和(れいわ)建設が韓国に進出。
後に暁美の夫となる眞鍋武敏も韓国で自社建設の施工に携わる事に。
その時に会社が選んだ日本語の通訳にハン・ヘギョが抜擢されたのであった。
当然ながら、武敏が韓国語を話せるのは殆ど、挨拶が主。
その他は全てハン・ヘギョが通訳する事になる。
その為に武敏が韓国に在住している間は通訳であろうと、
ハン・ヘギョが日常の世話をするようになったのだった。

ママでいい…。 vol,041. 「誘ってくれたのは、弟さんの方だけどね。」
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