「急いでいますんで、これで。」
タクシーの運転手に1万円札を渡してすぐにドアを開けて。
運転手、
「あ、お客さ~~ん。」
急いで病院の中に。とにかく鼓動が激しい。
そして…。病室のドアを開けるや否や。
「祐里子(ゆりこ)っ!!!」
静まり返っている病室。
ベッドにうずくまっている少女がすぐさま振り返り、立ち上がって、
「おとうさん。」
泣きながら。
そして、男性に駆け寄りしがみ付くように…。
「おかあさんが。おかあさんが。」
ベッド上には…、顔に白い布の姿が…。
少女、頻りに、男性に縋るように、
「おとうさん。おかあさんが。おかあさんが…。」
ず~~っと、鼓動は高鳴っていた。そして、今も…。強張った表情は未だに。
そして、縋り付いている少女を抱えながらも、
「芙美花(ふみか)。」
ゆっくりとベッドへ…。
そして…、医師に。
「先生。」
医師、顔を下に…。そして、首をゆっくりと振りながら、
「申し訳ないが…。…力、及ばず。…無念です。」
男性、
「先生…。師長~~っ。」
師長と呼ばれた看護師。男性に向かって、歯を食いしばるような顔で、
「ごめんなさい。すみません。申し訳ありません。」
そして。ベッドの白い布を見て、
「祐里ちゃん。」
病室には他にも数人の医師と看護師たちが。
少女が男性から離れてベッドの白い布を。涙零しながら、
「おかあさん。おかあさん。」
啜る泣く音の病室。
男性、
「祐里子。祐里子。祐里子っ。」
両手を握り締めて食いしばるように。顔を上げて、
「祐里子―――――っ。」
「おとうさ~~~ん。朝ごは~~ん。」
ボサボサの髪に、パジャマ姿で、のっそりと出てくるひとりの男性。
ボサボサの髪を掻きながら。
「あ~~ん。また、いつもの夢~~???…って言うか、なんでか、見ちゃうよね~~。その夢~~。…って、言うか、私なんて、そういう、夢、だけは見ないんだけど。元気な時のおかあさんの夢ば~~っか。」
そして、
「ほらほら。私、学校、行かなきゃなんないんだから~~。」
ダラリと椅子に座って、両手を合わせて、親子で、
「いただきます。」
「いただきま~~す。」
髪はボサボサで少々髭面のこの男。高井戸耀司(たかいどようじ) 45歳。
現在、株式会社ウェルストン勤務。…が~~~。
今や、新型コロナ以来からの社会情勢で、会社に出勤する必要はなく、
在宅にてリモートワーク中…。
お味噌汁を啜り、いきなり、
「あち。」
そんな父の慌てようを見てクスリと笑いご飯を食べるこちら。
高井戸芙美花(たかいどふみか) 16歳。現在、都内、博楼(はくろう)高校の2年である。
そして…。30分後、全ての後片付けを終えて…。
「じゃ、行ってきま~~す。あ、おとうさん。お昼は。」
耀司、
「は~~い。分かってま~~す。冷蔵庫の中~~。」
ドアを開けて芙美花、
「行ってきま~~す。」
高井戸家、朝の7時半。
全てが整っている。
食器類は全てが整理され、そして洗濯物は外に干されてある。
リビングの床では、ただいま愛犬のバセットがのんびりと…。
どうやら食事は終えたようである。
前述してお分かりのように、この高井戸家に住んでいるのは高井戸耀司。
そして、娘の芙美花。の、ふたりだけ。耀司は芙美花の父親である。
…が、肝心の母親がいない。
つまりは耀司の妻となる女性である。
芙美花が中2の時に、3学期終了後に亡くなっている。乳癌である。
そのため、現在高井戸家の住人は耀司と娘の芙美花のふたりだけ。
…あ、いや。愛犬のバセットと併せて2人と1匹。で、ある。
そして、何より、どうして、この高井戸家で…、
今も主の耀司が未だパジャマのままで、キッチンで新聞を読み、コーヒーを…。
あ、どうやらそのまま新聞を畳んで椅子から立ち上がろう…と、している。
高井戸耀司。この男性、家事はからっきしダメ。
やっても失敗するし、逆に周囲が散らかってしまうという有様。
仮に、料理が出来たとしよう、完璧に味覚音痴。食べられたものではない。
但し。こういう男でも、電気関係、機械関係となると滅茶苦茶の技術者。
壊れたものでもすぐに直してしまう。
しかも、何故かは分からないが、柔道の黒帯である。
そして、何より、とにかく情に脆く素直な性格。しかも、曲がった事が大嫌いという。
されど、かなりのおっちょこちょい。
…と、まぁ。事実、良く分からない男性。なのでもある。
が~~。されど、そんな男性に惚れたのが以前まではこの高井戸家の主の妻として、
そして芙美花の母親として旦那を支え、
そして芙美花を耀司と共に育ててきたのが高井戸祐里子(たかいどゆりこ)。
耀司とは2歳年下。若くして看護師を目指し、めでたく看護の道に。
すぐに頭角を現し、看護主任の位置まで。
その間、耀司との出会いがあるのだが…。
それが…、
「合コン」

ママでいい…。 vol,001. 「あ~~ん。また、いつもの夢~~???」
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