敬嗣、
「つまりはその学生。自閉症との事です。」
小埜瀬、
「自閉症。」
優維香も悠里も、
「自閉症。」
「いやいやいやいや。」
小埜瀬、
「何と。」
優維香、
「…って。…そんな~~~。」
小埜瀬、口を噤んでそして。
「確かに。…有り得なくは…、ないかぁ。…厄介ですね~~。」
顔を傾げて、腕組しながら。
敬嗣、小埜瀬の声に頷いて、
「えぇ。」
小埜瀬、神妙な顔で、
「もし、万が一、何事か怒れば、必ずパニックになる。居ても立っても居られない。」
敬嗣、
「そういう事になります。」
小埜瀬、敬嗣に、
「…で、その子、高校へは…???」
「いや。」
敬嗣。
「残念ながら、私の耳に入ってきたのが、榊がその学生を見染めて絵にだけ専念するように。との事で。…それまでは高校も中退して、親戚筋の小料理店でアルバイトしていたそうです。保護者は同居している祖母と、身寄りは料理店の叔父さん夫婦のみ。」
そこまで話して敬嗣、
「但し。」
小埜瀬、優維香、悠里、
「ふん…???」
「但し。」
「うん。…で…???」
「先ごろ、その学生、亡くなったそうです。」
いきなり目を見開く小埜瀬、
「亡くなった…???」
優維香、いきなり目を見開いて、
「う~~っそ。」
悠里も、
「マジでっ!!!」
敬嗣を見て。
敬嗣、コクリと。
「えぇ。おばあさんが、その子の部屋にいつも通りにおやつを…。けど、その時にはもう…。絵を描きながら…。…おかしいと思って何度も体を揺らしたそうなんですが…。その時には全く。」
小埜瀬、
「何と。」
敬嗣、少し体を椅子から背伸びするように、
「ですから、今の伊玖伊那は、何かしらない限りは、今の延長線かと…。ただ、デザイナーは存在、してはいるんですけど…。残念ながら、それほどのヒットは…。言い方は汚くなりますが、今もって、他人のデザインをそのまま採用するところですから…。」
優維香、悠里、敬嗣の話に、
「うんうんうん。」
「まぁ…、確かに、社会的には貢献度はずば抜けてもいるでしょうけど…。インテリアとしては、日本随一までも名前が轟いている企業です。…けれども今は…。その点、小埜瀬さん。」
小埜瀬、敬嗣を見て、
「はい。」
「大いに期待、しております。」
その声に優維香も悠里も、敬嗣を見て、
「はい…???」
小埜瀬、目をパチクリとさせて、
「え、え~~ぇえ…???…どういう…???」
優維香と悠里を見て。
敬嗣、ニッコリと、
「ふふ。麗子おばさんが引っ張ってきた人。しかも…、大学時代、七瀬家に半年間、居候。励治叔父さんも見染めた男性。その男性が大学卒と同時に、海外に。しかも、世に認められたカメラマンであり、フリーターでもある。それも…、インテリアに関してはそれこそ専門的に。」
瞬間、優維香、悠里、ふたり共に両手を叩き、
「凄~~~。」
「わ~~お。優維香~~~。」
優維香、
「うんうんうん。はは。」
僅かに目が潤んで。
敬嗣、続ける。
「祖父が、小埜瀬さん、あなたを七瀬家で見掛けてるんです。その時から中々の人物って。」
小埜瀬、
「祖父って、横井土先生が…???」
思わず鼻を啜る優維香、
「あは。」
「時に。世界で羽ばたいてくれていれば嬉しい限りだ。うん。と。麗子おばさんがここに来て食事をするときはいつも言ってます。まぁ~~。祖父もあれでいて、人を見る目はずば抜けています。しかも、どのくらいの人脈を持っているのか、僕なんて全く、想像も付かない。」
悠里、
「凄~~ご~~。」
敬嗣、小埜瀬を見てニッコリと。
「だから、あなたが日本に来た時には、いつか、会ってみたいものだって。麗子おばさんが来た時には必ず言ってますけどね。…まぁ…、そんな小埜瀬さん、あなたに、僕が最初に会っちゃいましたけど…。」
微笑みながら。
小埜瀬、顔を横に振りながら、そして右掌をヒラヒラと、
「いえいえいえ。僕なんか…。そんな…。」
「まっ。僕も楽しみにしているんです。今後のジョエルを。とにかく、今まで以上に、躍進続けてますから。特に、今年は。」
思わずニッコリと、
悠里。
「はは。」
優維香、ほんのり赤い目のままで、唇をガッシリと。
小埜瀬は、一言。
「ありがとうございます。」
敬嗣、3人を見ながら、
「スタッフコレクションからリッツカルバン。まっ。確かに、夢蔵は逃しましたけど…。それでも、あのSNSで盛り返した。つまりは、コンペよりも、ネット上の一般の人たちの目には…。ははは。コンペ以上ですけどね。」
そして敬嗣、優維香を見て、悠里を見て、小埜瀬を見て。
「この、トライアングルは、何かしでかす。」
敬嗣、微笑ましく、
「僕は、そぅ、睨んでいます。…と、言うか、睨ませて下さい。」
ニッコリと。
思わずまた優維香、目を潤ませて、そしていきなり頭を下げて、
「ありがとうございます。」
小埜瀬も姿勢を正して一礼、
「ありがとうございます。」
悠里、そんなふたりを見て、同じく頭を下げて、
「あ、ありがとうございます。」

好きになれない。 vol,305. 「ふふ。麗子おばさんが引っ張ってきた人。」
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