菜帆子、順平にニコリと。そして目を閉じながらも顔を左右に、
「ううん。」
そして菜帆子、
「大事なのは、さっきの佐津香さんの涙。」
順平、眉間に皺を寄せて菜帆子に、
「涙…???」
そして佐津香を見て。
小野瀬、僅かに顔を傾げて、菜帆子を。そして佐津香を…、
「……。」
そして小埜瀬、そのまま佐津香を見ながらも、
「佐津香…さん…???」
菜帆子、
「佐津香さん、課長の事、物凄い、心配してたの。」
その菜帆子の一言に順平も小埜瀬も、
「えっ…???」
目を見開いて…。
順平、瞬きをして、
「えっ…???えっ…???」
また素早い瞬き、
「あ…。いや…。あ、でも…。…確かに、心配は…、していたのは…、分かるけど…。でも…。えっ…???…へっ…???」
菜帆子、そんな順平にニッコリと。
「順平も、その内、分かるよ。」
そして菜帆子、小埜瀬を見て、
「課長は…。」
菜帆子、僅かに顔を傾げて、
「ん~~~。…でも、長年、女性と、関わってないしね~~~。」
その声に思わず佐津香、
「ぷっ。」
菜帆子、順平に、
「ほら~~。順平だって分かるでしょう~~。課長が倒れた瞬間に、すぐに体が動くのは~~。」
その声に順平、思い出しながら、
「あ。あ、あ~~。はぃはぃはい。…確かに。」
佐津香を見て、
「佐津香さん。」
「でしょう~~。」
佐津香は黙って、小埜瀬を見つめて。
菜帆子、続ける。
「最初の時なんか、佐津香さんがいなかったら。」
「うんうんうん。」
小刻みに顔を頷かせる順平。
「確かに。タクシーの中であれこれと…。不動産に電話したのも佐津香さん。」
「それに、私たち女性の中でも佐津香さん、一番早く課長を…。」
菜帆子、佐津香を見ながら…。そして菜帆子、小埜瀬を見ながら…。
「…って言うか、私たち、女性…。どうしたって、私たちの上に、佐津香さんがいるからって…。…と、言う…。いわば、この…、何て言うか…。この人がいるからこそ、安心。…で、この人がいるから、こそ、この人が動いたら、その後に動く。…って、言うのが…。自然に…、出来ていた、のよ。」
佐津香、菜帆子を見ながら、そしてチラリ、チラリと小埜瀬を見て。
順平、
「あ、あ~~。うんうんうん。何か、分かります。そんな雰囲気…。」
けれども順平、
「でも…。そんな雰囲気は、分かりますけど…。でも。…そんな雰囲気って…、みんな…、それぞれで…。感じさせませんよね。それぞれが、個性あって。それに…、力強いって言うか。」
いきなり菜帆子、順平に右手親指を出して、
「ビンゴ~~、順平~。その通り~~。でもさ~~。それって言うのも、やっぱ。ある種の原動力がいるからなのよ~~。その…、とてつもないおっきな存在が、陰に…、いるからこそ。安心感。そして…、盤石。」
菜帆子、また佐津香を見て、
「そんな…、佐津香さんだからこそ…。佐津香さんが動いて、そして私たちが動く。ま。ただ…、これが、これからも先…???…何十年も続くとは。そんなの有り得ないけど…。…でも、今は…。…そして…。」
菜帆子、小埜瀬を見て、
「課長…。」
小埜瀬、目をパチクリとさせて、右手人差し指を自分に…。
「えっ…???」
「もし。」
菜帆子、
「課長が私たちと同じような…、それこそ、30歳前後だったら、逆に佐津香さん、動かない。それ以上に、愛結美さんや私の尻を叩いて、ほら、愛結美~~。菜帆子~~。何やってんの、こういう時こそ、あんたたちの番でしょ。こういう時は~~。…って事に、なる訳よね~~。」
そこまで言って、佐津香を見る。
佐津香、そんな菜帆子にニッコリと微笑む。
「つまりは…。」
菜帆子、
「佐津香さん、課長に亡くなった旦那様、重ねてるのよ。」
その声で佐津香、今までの、僅かに両肩にあったはずの、「しこり」のようなものが、
なんとなく、外れてしまったような…。何ともリラックスした感じで…。両肩をゆったりと…。
そして…、右手指先で首の後ろをなぞるように、
「菜帆子に、言われたな~~。」
俯き加減での佐津香。
小埜瀬、順平、佐津香を見て、
「えっ…???」
佐津香、菜帆子に俯いたままで横目を。
「気づいてたの…???」
その声に菜帆子、目を丸く、口を真一文字に。そして顔を傾げて、
「まね~~~。一応、相棒ですから。」
そして佐津香を見て、
「何年一緒にいると思ってんですか…???」
佐津香、
「まま。確かに。…あんたがここに入ってきた時からだよ。」
そして、佐津香、空を見て、
「ざっと、8年にはなるか。肝、据わってたからね~~。目鼻立ちもキリっとしてて、仕事が早い。しかも、気さくだと来てたから、すぐに打ち解けた。もぅ~~、それからはいつも一緒だったけど。」
順平、
「うんうん。確かに。僕なんてまだ2年ですけど…。このふたりはもぅ~~。最高ですから。」
小埜瀬も、
「確かに。」

好きになれない。 vol,225. 「大事なのは、さっきの佐津香さんの涙。」
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※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。