その声に真宮、こちらも恐縮しまくりで頭をペコリと、
「あ、はい。」
「いいかぃ、みんな~~~。メンタル持てよ~~。絶対に、意固地になるな。いいかぃ。どんなイレギュラーにも強い意志で。…じゃなかったら、いいモンなんて、出来やしないよ。おまえさんたち、仕事、好きなんだろ。ここが好きなんだろ。」
メンバーたち、七瀬の声を真剣に…。
「いいかぃ。こういう時は、逆に敵を褒めてやれ。その方が、どれだけ気分が楽か。ほぉ~~。や~~ってくれるじゃないのよ~。…ってね~~。マインド、捨てたら、終わりだよ。」
そして七瀬、優維香の両肩に両手をパン。
「ほれ、優維香。」
そして、悠里の両肩にも。
「悠里もほれ。」
そして、友也にも。
「ほれ。友也。」
その声に友也、思わず目を潤ませて、そして嬉しそうに、
「はい。」
「瑛子。」
瑛子も、自分の両肩をパンとしてもらい、泣きそうな顔でもニッコリ、
「はい。」
「阿寿沙。」
涙を零して、
「はい。」
「遼子(りょうこ)。」
「はい。」
「志津恵(しずえ)~~。」
おおきな声で、
「はい。」
「そして~~巴月(はつき)~~。」
緊張しながらも巴月、
「は、はい。」
「亜樹歩(あきほ)。ほぃ。」
頭を撫でながら。
顔を真っ赤にしている亜樹歩、
「あ、はい。」
「美知留(みちる)も~~。」
泣きそうな顔で美知留、
「わっ。はい。」
「満寿美(ますみ)~~。」
自分の名前を呼ばれて、両肩と両腕を両手でパンとされて、
「あ~~、はい。」
真宮、クスクスと笑顔で…。
「ほぃほぃ、今度は早智子(さちこ)。ほれ、しっかり。」
早智子、二の腕をバンとされて、頬に流れている涙を左手で拭って、顔をコクリと、
「はい。」
そして七瀬、
「最後は亘夢(あだむ)だね~~。ほぃ、江間(えま)ちゃん。江間亘夢~~。」
事業部内で一番背が低い。日本人の母とドイツ人の父を持つハーフである。
そして、物凄いオープンな体質の持ち主。
七瀬から両肩と両腕を両手でパンとされて、真っ赤になりながらも、思わず七瀬に抱き付く。
「ありがとうございま~~す。」
そんな亘夢の頭を撫でながら七瀬、
「ははははは。」
そして七瀬、腰に両手を、そしてキッパリとメンバーたち見回し、鋭い目付きで、
「いいかぃ。」
けれども、今度はニッコリと、
「マインドだよ、忘れちゃあいけないのは。とにかく、いつ、何時でも、イレギュラーなんてやってくるもんさ~~。けど、そんなイレギュラー、アクシデントに一回一回、振り回されて、頭、悩ませてたら切りがない。鍛えるのは自分の心、マインド。」
社長七瀬麗子の声に静まり返る事業部。
顔の表情を変えながら七瀬、
「へぇ~~~、そう来たか。な~~るほどねぇ~~。逆に敵さんを褒めてやる。相手を認めてやるんだよ。それだけの器量がなくてどうする…???…どんな仕掛けを持ってくるのか分からない。」
メンバーたち、話を聞きながら頷く。
「野球で言えば、それこそ決勝戦9回裏。2アウト。その差6点。ランナーなし。最後のバッターが渾身の一発。ライトの頭上を超えてボールはフェンスにぶち当たる。打ったランナーは走りながらヘルメットすら頭から外れて。それでもランナーは2塁まで。そして、セカンドベース上でベンチに向かって両腕を思いっ切り振って大声を上げている。来~~~い、来~~~い、まだ終わっちゃいな~~い。観客も一斉に湧き上がる。しかも総立ち。それからだよ。怒濤の攻撃が始まる。」
口を尖らせて、そしてニンマリしながら話を聞いている真宮。
口を真一文字の池辺。
「味方ベンチも総立ち、誰ひとりとして椅子に座っていやしない。何故か分かるかぃ。ひとりひとりが、繋げる、繋げてやる。ヨシ、次は俺の番。次は俺の番。そぅやって待ってるんだ。監督なんてもぅ~~、指示なんて出さない。選手たちを全幅で信じている。もし、こんな時に監督が選手に指示を出したら、その瞬間、モチベーションガタ落ち。とにかく、さっきの一発で、選手たちのモチベーションが一気にハイテンション。」
七瀬、腕組みしながら、
「だから野球は面白い。」
そこまで言って、
「まぁ~~、野球だけの話じゃないけどね。相手に花を贈る事も時には必要。だ~~~って、逆に新しいアイデア、貰ったようなもんだもの~~。」
そして七瀬、
「いいかぃ。後がない。そんなのは言い訳さ。諦めたら、そこで試合終了。残り10秒。敵さんのゴールで同点が、一気に2点差。その瞬間、観客は一気にマックス。決まった――――――っと、思った瞬間、ボールはリンク下から勢い良くセンターへ。そのボールをがっしりと受けて、2度のドリブル。そして、ラインの手前で軽くジャンプ。ボールを…。奇麗な放物線を描いてボールはス~~~ッと、ネットに。床に落ちたボールの瞬間、ブザーの音。」
真宮、クスリと、そして小さく、
「スラムダンクか。ま、確かに。脚色はありますけど。…さすがは社長。」

好きになれない。 vol,031. 「いいかぃ、みんな~~~。メンタル持てよ~~。」
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
