他の客たちもそれには、
「何々…???」
「一体、どうした…???」
男性客、傍に駆け付けたふたりに、
「おぅおぅおぅ~~。何だってんだよ、えぇ~~。俺は客だぞ~~。へへへへ。」
そしてまた隣りの女性の肩を抱く。
女性は嫌がりながら、
「やめてください。ねぇ、あんた、この店の店員でしょ、何とか言ったらどうなのよ~~。」
その声に肇とルシアも、
「申し訳ございません。」
そして男性に、
「お客様、困ります。他のお客様の迷惑にも。」
その声に男性、
「はぁ~~???何~~。じゃ、何かぃ…???全部俺が悪いってぇのかぃ…???俺ゃ、おめぇよ~。気分良く酒が飲みてぇ、気分良く女と酒が飲みてぇ、それだけだっつぅの~~。文句あるかぁ~~???」
そして、また隣の席の女性の髪にも手を。
その女性、嫌がりながらも、
「やめてください。」
その時である。いきなり、
「えぃえぃえぃ、おっさんよ~~。何さっきからてめえの都合ばかり。他の人の迷惑だっていうのが、分かんねぇのかぃ。え~~???」
両脇に両手を突いて陽織。
その声と形相にルシアと肇も、
「陽織ちゃん。」
女性の放つ言葉の凄さに度肝を抜かれた男性。けれども、逆に女性に、
「何だと~~。」
陽織より10センチは身長が高いだろう。
いきなり立ち上がり、女性の頭の上から女性を睨み付け。
「おぅ。警察呼べや。警察。」
ルシア、肇、
「陽織ちゃん。」
男性、女性のブラウスの胸倉を掴み、
「このアマ~~。何様…。」
けれども陽織、こちらも男性の胸のシャツを右手で握り掴み、
「なんだって~~。もぅ一遍言ってみろ~~。」
「あぁ~~。上等だ~~。警察呼べや警察~~。この店ごと、訴えてやる。」
肇、客に、
「お客様、困ります。」
ルシアも、
「お願いします、お客様。」
この騒動に、玄関の近くの客が、静かに、
「ご馳走様~~。じゃ、また…。」
陽織、途端に、大声で男性に眼を付けるように、
「あんたもとっとと、出て行け――――――っ!!!」
玄関に右手を。
一番端の奥のボックス席でその一部始終を見ていた男性が、
「いい加減にしろよ。酒がまずくなっちまう。女に手ぇ出して、そんなに面白ぇのかぃ。」
その声に男性、
「うるせぇ~~。」
すると、男性の向かいで飲んでた女性、椅子から振り向いて左腕を椅子の背もたれに。
「あ~~。そんな事言っていいのかな~~。この人、神奈川県警の刑事さんだけど…。」
その一言と、前の女性の睨み付ける形相に男性。
「ちっ。覚えてろよ。しっかりとケチつけてやっからな。」
そう言って、帰った後の客のボックス席のテーブルを蹴飛ばし、
乱暴にドアを開けて、また乱暴にドアをバン。
数秒、静まり返る店内。その後、あちらこちらの客から、
「ふ~~~。」
「やれやれ。」
「帰った~~???」
「陽織ちゃん。かかかかか。天晴。や~~るじゃん。」
と、客たちには擁護される陽織だったが…。
ルシア、陽織の右腕を。そして、
「陽織ちゃん、ちょっといらっしゃい。」
瞬間、陽織、目をパチクリと、
「あっ。」
ドアを開けてスタッフルームに。
そしてルシア、陽織に、困った顔に怒った顔、
「何やってるの。」
その一言で陽織、いきなり涙が…。そして、体全身が震えて、
「あ~~、ははははは~~。恐かった~~。」
ルシア、困ったような顔で、
「あ~~、ははははは~~。恐かった~~。じゃない、もぅ~~。」
そしてルシア、陽織を抱き締めて、
「あなたの身に、何かあったらどうするの。私もパパも、それが心配で心配で。もぅ~~~。」
陽織、涙が流れて仕方がない。
「ごめんなさ~~い。私…。自分でも何言ったか、何をどうしたのか…、分かんない。」
陽織を抱き締めながらのルシア、
「うんうんうん。仕方ないよ、いきなりだったもん。」
陽織の背中をトントンと。
「でもね、陽織ちゃん。」
「はい。」
「今日は、もぅ、帰りな。」
「えっ…???」
「世の中の人は、どう見ているのか分からない。…例え、客が、みんな陽織ちゃんを良い人だ。と。口では言ってるけど…。実際は…。…あんな…、啖呵を切ったくらいだから…。どうにかなる。…って言うのは分かんないけど…。しばらくは、店への出入りも禁止。陽織ちゃんのためだよ。」
「オーナー…???」
「それに…、もし、陽織ちゃんが柚香さんに戻ったとして、今日のお客様、どこでどう見ているか、分かったもんじゃない。確かに、お客様を信用するのが私らの仕事。…なんだけど~~。あくまで。それは…、店の中にいればこそ。…もし、客のひとりが柚香さんを目撃したら、それこそ一大事。」
陽織、ゆっくりと顔をコクリと、
「うん。」
「もし、そうなったら、陽織ちゃんも困るだろ。悲しいだろ、柚香さんまで…。」
「う、うん。」
そして、陽織はルシアに促されながらエンカントを後にする。

LIBRA~リブラ~ vol,183. 「あんたもとっとと、出て行け――――――っ!!!」
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