「悔しいのですが…。そして、残念ではあるのですが…。」
熊沢。
「この現実は…、受け止めておく以外には…。」
幸乃、今まで、一命を取り留めて何とか安心感を…。…けれども…。またポッカリと…。
「…けど。」
熊沢、
「私は信じたくありません。ひとりの体の中で、ふたりの意識が交差して。…そしてこれまで…。」
幸乃、
「先生…。」
熊沢、きつく口を搾って、
「回復を…待ちましょう。」
幸乃、ポツリと一言。
「はい。」
靄が掛かっていた。煙の向こう、景色が全く見えない。
「ここって…、どこだ…???…亮輔~~。阿須賀~~。」
陽織、おろおろとしながらも手探りで歩いていた。
突然、頭の上からけたたましい音。上を見るとヘリコプター。そして、ビルの向こうに…。
すると、いきなり太陽の陽がビルの窓に反射して陽織の目に。
と、同時に頭に強い衝撃。
「わっ!!!」
はしゃぐ陽織。そして、こちらもはしゃぐ柚香。
ガレージの周りでふたり走り回りながら…。
2歳児の陽織と柚香である。
車の中では母親の萌衣と父親の裕司が、ふたりで後部席にチャイルドシートを。
やがて…、準備も整い出発。
幸乃がその車の後ろで手を振り、
「行ってらっしゃい。気を付けて~~。」
チャイルドシートの陽織と柚香、未だにはしゃぎながら。
その声に運転席の裕司と助手席の萌衣も楽しそうにお喋りをしながら…。
18年前のゴールデンウィーク。車は横浜に向かっていた。
ちょっとした車での小旅行である。
夫婦それぞれ、一応プランを立ててのドライブがてらの小旅行。
その時々でプランを変えてもOK。高速を軽快に走行。
そして、一般道に。天気も快晴。交差点で停止。
その瞬間、
「バンッ!!!」
一瞬の出来事。
前の車は4トン車。そして…。追突してきた車は、大型ダンプトラック。
しかも、何故かその追突した大型ダンプトラックの車体は僅かに斜めに。
4トン車と大型ダンプトラックの間の白い普通車は完全大破。生存者はゼロ。
そんな情景を、宙を漂いながら涙を流しながら見ている陽織。
騒然としている現場。その後、救急車が何台もその現場に。警察車両も当然ながら…。
そして…、自分の体が別の誰かに引っ張られたと言う訳ではないが、スゥ~~と、
その現場から引き離されて行く。
スゥ~~っと、息を吸って。そして、傍と目が覚めた。目をパチクリと。
そして、
「あれ…???…私~~。ここ…???」
目をキョロキョロと…。
「えっ…???」
僅かに起き上がり、そして、
「うそ。」
周りを見回して、
「はっ…???…もしかして…、病院…???…えへ…???…ってか…、なんで…???…えへ~~???全~~然…、記憶、ないんですけど…。えへ~~~。…って、事は~~。あ~~ん。陽織~~~。どうなってる~~~。」
柚香。で、ある。
「あ~~~ん、もぅ、この際。どうにでもなれっ。」
ナースコールのボタンを。
聞こえてくる看護師の声、いきなり、
「お待ちください。」
柚香、
「…に、なるよね~~。」
心肺停止から蘇生。そして…、3日目の午前9時。
ドアをノック。そして、入って来る看護師、そして野呂。
「汀さん。」
柚香、ベッド上で起き上がり、そして右手を上げて、
「はい。汀、柚香で~~す。」
看護師も野呂もいきなり両肩を落として、
「あは~~~~。良かった~~~。」
看護師は、思わず涙を浮かべて、目に指を、
「柚香さん…。今まで、意識、なくって…。心肺停止まで。」
その声に柚香、びっくり仰天、
「うそ~~っ!!!」
そして、
「いやいやいやいや。有り得ない。有り得ない。なんで私が、心肺停止~~。死ぬトコじゃん。」
野呂も薄っすらと涙を浮かべて、
「いやいやいや。驚きました。陽織さんではなく、柚香さんですよね。」
その声に柚香、口を真一文字に、そして頭をコクリと、
「はい。間違いなく、柚香です。あ、おばあちゃんに。」
野呂、ニッコリと、
「はい。畏まりました。」
看護師に。
看護師、ニッコリとして。

LIBRA~リブラ~ vol,177. 熊沢、「私は信じたくありません。」
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