真輝、2階に上がって。ドアは開いている。
中から女性の声、
「どうぞ〜〜。」
真輝、お辞儀をするように、
「お邪魔…。」
目の前には女性がふたり。ひとりはベッドに座っている柚香。
そして椅子に座っている初めて見る女性。
その女性が、
「こんにちは。初めまして。柚香の友達の井島愛実です。」
真輝に顔をコクリと。
真輝もペコリと、
「は、初めまして、勝巳真輝と、言います。」
そしてベッドの柚香を見て、目をパチクリと、
「ゆ…ず…か、さん…じゃ、ないよね。」
陽織、部屋に入ってきた男性を見て、
「あっ。この前…。」
真輝、そんな柚香に、
「…っと、言う事は…。ひ…お…り、さん。」
愛実、
「うん。陽織になってる。」
真輝、自分を見て、何の反応も示さない柚香じゃない陽織に。小刻みに頷きながらも、
「う、うん。確かに。柚香さんじゃ〜〜ない。」
愛実、真輝に、
「ねね。真輝君。…一体、何処まで話…???」
そこまで言って愛実、
「あっ。いきなり会って、いきなりこんな話に。」
けれども、
「あっ。…でも…。この状況じゃ…。仕方…、ないか。まっ。柚香がいれば…の、話しでも、あるけど…。」
真輝、その声に、
「あっ。うん。…けど…。この状況…、柚香さんのおばあちゃん。」
愛実も、その声に、少し困ったような顔で、
「あ、あ〜〜〜。」
ベッドの陽織、何が何だか全く…。
真輝、
「でも…。先生からは…。おばあちゃんには、話しをしないと…。」
愛実、その声に、
「えっ…???」
「僕たち、今日、長篠観音総合病院に。」
「うんうんうん。聞いてる。」
「熊沢先生に会って、病院でも、入院してた時に何か柚香さん。って…。」
「うんうんうん。…で…???」
「やっぱり、変わってたって…。」
「つまりは…。解離性…同一性…障害。」
愛実、真輝を見て。
真輝、その声に顔をコクリと。
「…と、言う事は〜〜。」
愛実、
「幸乃おばあちゃんも、その事。」
「うん。知っている。…けど…。…柚香さんには、心配掛けたくない。そんな訳で、柚香さんには言ってない。」
「そっか〜〜〜。…あっ。で…???…最初に戻っちゃうけど…。何処まで、話し…???…あ、それから…。亮輔、そして…、アスカって…???」
真輝、
「あ〜〜それ。柚香さん、大学で、そのふたりに会って。…で、そのふたりも、柚香さんの事…、解離性同一性障害。…知ってる。」
愛実、途端に、
「へっ…???…大学って…、柚香と同じ大学…???」
真輝、その声に頷いて、
「うん。柚香さんもそれを聞いて驚いたらしい。」
愛実、いきなり目をパチクリと。
「へぇ〜〜〜。…私は…、まだ…、そこまでは…。」
「うん〜〜〜。…まっ。柚香さんとしても、とにかく、現実的には、有り得ない。」
陽織を見て、そして愛実を見て、
「本人にしてみれば、パニック。何がどう…。」
愛実、その声に頷いて、
「うんうんうん。」
けれども、顔を小刻みに左右に振って、
「いやいやいや。私だったら…。…こういう…状況…。パニックって言うか…。」
目をキョロキョロと、
「怖くて…。普通じゃ、いられない。」
真輝、その声に頷いて、
「…だ、ろうね〜〜。…でも。…柚香さんは…。」
「とにかく、知りたい。」
愛実、椅子に座ったままで腕組みをして…。愛実、真輝を見て、
「あっ。真輝君。」
真輝、
「えっ…???」
愛実、真輝に申し訳なさそうに…。
「立ったままで…。」
顔をペコリと、
「ごめんね。」
真輝、そんな愛実に、にこやかに、
「あ。あ〜〜。いや。うん。」
そして、
「さて…と。」
ズボンのポケットからスマホを…。そしてサササッと。指でトン。
「出てくれれば…。」
5回のコールで相手が出る。
「おぅ〜〜。勝巳〜〜。どした〜〜???」
男性の声。亮輔である。
真輝、
「あっ、亮輔、俺、真輝だけど。」
スマホから、
「うん。」
「柚香さん、陽織になってる。」
瞬間、亮輔、
「うそっ!!!マジでっ!!!…って、言うか、おま、今、何処…???」
真輝、スマホに、
「うん。今、柚香さんの家。」
「えっ???…えぇ〜〜え〜〜???」
遠くから、
「誰よ〜〜。」
女性の声。
「ちょっ。黙ってろって。」
亮輔の声。
その瞬間、真輝、顔を傾げて、
「あれ…???」
ある事を思い出して、スマホに、
「あっ。亮輔、ゴメン、一旦、電話切る。俺、藪岡先生とも電話してたんだ。そっち掛ける。」
その声に亮輔、
「あ、あ〜〜。うん。分かった〜〜。何かあったら、俺にも、電話。」
その声に真輝、
「うん。分かった、ありがと。」
通話を切って、真輝、今度は、別の電話番号に。
愛実、そんな真輝を見て、
「真輝君…。」
陽織は、そんなふたりをただ見ているだけ。
3回のコールで相手が出る。
「はい。藪岡です。」
「藪岡先生。真輝です。勝巳真輝です。」
スマホから、
「おぅ〜〜。真輝君。うんうんうん。」
「柚香さん、陽織さんになってます。」
瞬間、藪岡、
「えっ!!!…本当か…???」
「今、目の前にいます。…で、僕、今、柚香さんの家に。」
藪岡、一瞬、目をキョロキョロとさせて、
「あ、あ〜〜。分かった。一旦電話、切るよ。」

LIBRA~リブラ~ vol,088. 「こんにちは。初めまして。柚香の友達の井島愛実です。」
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