陽織は祖母に背を向けて横になっている。微動だにせず。
幸乃はスマホに、
「うん。メグちゃん。じゃあね。」
そのまま通話を切る。そして柚香に、チョコンと顔を傾げて、
「何々…。今日、大学で何か…。」
そして幸乃、
「ふ~~ん。玄関には、スニーカーが脱ぎっぱなし。いつもなら端に片付けておくのに、変だな~~って、おばあちゃん、帰ってきてすぐに2階、来ちゃったよ。そぅ~かぃ。大学で~~。友達と~~。そぅ言う事なら、おばあちゃんの出る幕は…、なさそうだね~~。」
テーブルにスマホを置いて、
「スマホ、ここに置いとくよ。おばあちゃん、下にいるから。」
そして柚香を見ながら幸乃、ドアを開けて部屋を出る。
数秒後、ブランケットを剥いでムックリとベッドから起き上がり、
「スマホ…???…その硬くて平べったいものが…。それに…、電話…???…何なの一体…。」
そして、ベッドから滑るように絨毯に降りて、その…スマホと言うものを…。
けれども、今度は幾ら表面を手の平で、指で撫でても黒いまま。
「どうなってんのよ~~、もぅ~~。」
右手で頭を掻いて。そして陽織、今度は立ち上がり、
「…っとにもぅ~~。」
あちらこちらを物色。机の上。そして引き出しの中。
それからカラーボックスやらファンシーケース。小物入れから押し入れまで。
凡そ1時間近く、経ったろうか。けれどもその全てが今の陽織には到底理解できるものでは…。
その時…、何やら下から声が…。その声の内容も、今の陽織には…。
けれども、トントントンと階段を上ってくる足音。
そして、ドアをコンコンコン。
そして…、
「おっ邪魔っしま~~す。ははは。来ちゃった~~~。」
いきなり部屋の中に入ってきた女性に陽織、目を真ん丸にして、びっくり。
「あんた、誰っ!!!」
すると下から声が。
「柚香~~。メグちゃん来て、今、2階に上がったからね~~。」
陽織、いきなり部屋に入ってきた女性を見て目を真ん丸にして、
「だ…、誰…???…あんたっ。」
愛実、ニッコリとして。そしてドアを閉めて、
そして、目の前の柚香そっくりの女性に、頭をペコリ。
「こんにちは。私は柚香の友達の愛実。井島愛実っていうの。よろしく。」
陽織、何が何だか分からない。目の前の女性を見て、
「い…。いじま…、めぐみ…???…柚香の…。お姉ちゃんの友達…???」
愛実、ニッコリとしたままで、
「そっ。柚香の友達。井島愛実。あなた、柚香の妹の、陽織ちゃんでしょ。」
その声にまた陽織、目を真ん丸にして、そして目をパチクリ。
「えっ…???…って、なんであんたが私の名前。」
「そりゃ知ってるよ~~。柚香に聞いてるから~~。…でぇ~~。元々はあなたは、柚香なんだから~~。」
その声にまた陽織、目をパチクリとさせて、
「へっ…???…うそ…???…私が柚香…???お姉ちゃんに…???」
けれども陽織、右目を歪めて、
「はん…???…何言ってるのあんた…???」
「とぉ~~。」
愛実、テーブルに置いてある柚香のスマホを、
「あった、あった。」
手に取って、
「ちょっと借りるね。柚香のスマホ。」
陽織、すぐさま、
「あっ。」
とは言ったものの、自分ではどうする事も出来ずに。
愛実、スマホの画面をササササッと。
「……。おっ。あった、あった。」
そして指をトン。
3回のコールで相手が出る。
「もしもし、僕だけど、どうかした~~???」
男性の声。
愛実、
「もしもし、すみません、いきなり。私、柚香の友達の井島愛実と言います。こんにちは。」
その声に真輝、顔を傾げて、
「はっ…???…井島愛実さん…???」
けれども、
「あ、あ~~~はい。柚香さんから聞いてます。」
けれどもまた不可思議な顔で、
「…って…???…えっ…???…どういう事…???…柚香さんのスマホ…から…???」
「…と、言う訳で~~。真輝君。」
愛実。
真輝、
「あ、はい。」
「私、今、柚香の部屋にいるんだけど…。柚香、陽織になってる。」
瞬間、真輝、
「え――――――っ!!!」
「何かの切っ掛けで、また陽織になったみたい。」
「うそ。」
真輝、慌てて、
「い、いや…。そんなはずは…。確か、さっき、駅で別れた時は。」
愛実、陽織を見ながら、
「うん。ふたりで病院、行ったんでしょ。」
「あ、あ~~。うん。」
「駅で別れたのなら、家に帰ってから…、かな…。私、柚香に電話して、それから、どうも様子がおかしいと…。柚香のスマホにおばあちゃんが出たから。」
「えっ…???」
「とにかく、真輝君、柚香の家に来れる…???…場所って…???」
その声に真輝、
「あ、あ~~。うん。大丈夫、分かる。」
「私、柚香のスマホ、持ってるから。すぐ来て。」
「あ、あ~~。うん。分かった、今から行く。」
そして通話は切れる。
愛実、目の前の陽織に、
「と、まぁ~~。こんな訳で。陽織ちゃん。」
と、言って、愛実、ニッコリと、
「別に、怪しい訳じゃないからね~~。はは。」

LIBRA~リブラ~ vol,086. 今の陽織には到底理解できるものでは…。
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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。
