「昼頃に、俺に電話してきた。亮輔から。」
藪岡、ルシアに。
ルシア、
「あらららら。」
「…で、亮輔には、病院に来たらって…。」
「うんうんうん。」
「3人で、俺んトコ、来たよ~~。」
その話にルシア、
「へぇ~~ぇえ~。」
藪岡、陽織に、
「…陽織ちゃん、おばあちゃん、元気…???」
瞬間、ルシア、不思議な顔をして藪岡を…。
肇もふいに陽織を…。
陽織、藪岡の声に、
「えっ…???」
目をパチクリとさせて、僅かに顔をぎこちなく、
「あ、え……っと~~。」
少し考える風に。そして、困ったような笑みで、
「あは…。」
顔を傾げて、
「ちょっと…。分かんない…、かな~~。あ、はははは。」
そんな陽織に藪岡、けれどもニッコリと、
「そっか。うんうんうん。」
そして藪岡、
「まっ、陽織ちゃん、3時間しか、記憶、ないからね~~。」
陽織、そんな藪岡に、コクリと顔を…。
「ご、ごめんなさい。」
藪岡、そんな陽織を見て口を尖らせて、
「いやいやいや。陽織ちゃんが謝る事ないよ。うん。肇ちゃん、いつもの…。」
肇、既にできている飲み物を藪岡に、
「もぅ、出来てますよ。」
藪岡、
「はは、ありがと。」
洗い物が終わって陽織、カウンターからまた自分の席に。
その時にまた客から、
「申し訳ない。生ひとつ、お願い出来る…???」
陽織、
「はい。ありがとうございます。」
客からグラスを受け取って、肇に、
「店長。」
「OK。」
肇、新しいグラスに。
客が、
「はは。ママ~~。嬉しいね~~。陽織ちゃんが来て、店、若返った。かかかか。」
その声にルシア、
「あら晃(てる)さん。嬉しい事、言ってくれるね~~。」
藪岡も、背中でその声に、
「はは。うん。ありがたい。」
肇、陽織に、
「ほぃ。お願い。」
陽織、
「ありがとうございます。」
客にグラスを渡して自分の席に…。
藪岡、隣の席に右手を。
「陽織ちゃん、ここにどうぞ。」
その声に陽織、
「いいんですか~~???」
「もちろん。」
肇も、ニッコリと頷いて。
陽織、両肩を僅かに上に。そして舌をチロリと…。
椅子から離れて、ゆっくりと藪岡の隣に。
いきなり後ろから、
「藪岡海路~~。」
女性客。
「陽織ちゃんを独り占めにするなんて、許せないね~~。かかかかか。」
藪岡、その声に、後ろを振り向いて、
「かかかかか。こうでもしないと、ウチの娘、ただいま反抗期でして…。」
女性客、
「あらららら、可哀想~~。んじゃ、たっぷりと陽織ちゃんから優しく~~。」
藪岡、ニッコリと笑って、
「ご期待に添えますように…。」
そして女性客、陽織に、
「陽織ちゃん、変な事、喋っちゃだめよ。」
その声に陽織、困ったような笑いを、
「あはははは。」
藪岡、
「おぃおぃ。勘弁してよ~~。はははは。」
陽織、藪岡の右隣りに。
藪岡、そんな陽織に、自分のグラスを持って、
「取り敢えず、乾杯。」
陽織、思わず目をパチクリと、
「か…、かんぱい…???」
藪岡、
「うん。グラスをこう持って。」
陽織に、
「持ってごらん。」
陽織、
「あ、はい。」
「お互いのグラスをこんな風にして、カチンと合わせる。」
陽織のビールグラスに藪岡がグラスをカチン。
肇、カウンターで笑みを…。
ルシアは藪岡の隣で煙草をくゆらす。
藪岡、
「これが、こういう店での…、いわゆる、挨拶って訳。」
陽織、
「あいさつ。」
「そぅ~~。あいさつ。」
「ん~~~。なんだか、分かる気がする。誰かと会ったら、こんにちは。的な…。」
「そぅそぅ。そういうの。」
ルシア、
「陽織ちゃん、店に入って来る時、私と肇ちゃんにも言うでしょ、入りました~~って。あぁいう感じ…。」
陽織、ピンと閃いたような感じで、
「あぁ~~。はいはい。言いました。」
けれども陽織、その時に、僅かに顔を傾げて、
「…って言うか…。私…、自然に口から…出てた…ような…???」
藪岡、その声に、
「へぇ~~。…と、言うのは…、もしかして…、意識しての…じゃ…???」
陽織、目をパチクリと、
「あ、はい。全然。全く…。私、さっき目を覚まして…。もぅ…、辺り、真っ暗になってて。…そしたら、自然に…、起きなきゃってなって…。…そして、ここに。」
肇、そんな陽織をグラスを磨きながらに見て…。
藪岡、
「な~~るほど~~。さっき…、目を覚ました。…じゃあ~~。…もしか…して…。陽織ちゃんのおばあちゃんには…、最近…???」
「あっ。昨日…、会った。…ちょっとだけ。」
ルシア、藪岡の隣で、小さな声で、
「ちょっとだけ…???」
藪岡、
「そっか。ちょっとだけ、おばあちゃんと会ったか。うんうんうん。」
「…でも、あの時…。」
陽織、僅かに顔を曇らせて、
「私に着いてきたひとりの男の人も…、いたんだよね~~。」
「ひとりの…、男の人…???」
陽織、両眉の先を吊り上げて、
「はい。初めて会った人で、しつっこく。」
ルシア、藪岡の左肘を自分の右肘で突っついて、小声で、
「誰なのさ。」

LIBRA~リブラ~ vol,068. 「陽織ちゃん、ここにどうぞ。」
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