その…、
「…確かに。悲しいけど…。柚香ちゃん、いつかは、事実…、受け入れないとね。」
の、田名部康孝(たなべやすたか)医師の声が柚香の心には響いたのだった。
長野の田舎村にある子供診療所の名前が、子供診療所「たなごころ」
時折、地方のローカル放送で、テレビ番組やラジオでも番組を通して紹介されている診療所だとか…。
そして、その診療所に時々、柚香と一緒に遊びに行く、我孫子家の男子2人の言葉もそうである。
診療所では、その男子2人から柚香、しょっちゅう、
「柚香、先生の言う事、その通りだよ。覚えとけよ。」
そして、必ずこう言うのである。
「柚香。おまえが困った事があったら、いつでも助けてやる。おまえがここにいる以上は、おまえの兄ちゃんだからな。」
柚香の頭を撫でてニッコリと。
その声に、柚香もどのくらい助けられたか。
僅か3歳年上のお兄ちゃんである。
名前を我孫子崇(あびこたかし)、そして次男は我孫子総(あびこそう)。
そして…、この長野での夜の星が、後の柚香の将来を決定させる事になったのである。
半年間の長野生活。
実際、東京に帰ってからも、その感覚は変わる事なく…。
逆に常に自分から積極的に。しかも、別に大人びる様子はないものの、
しっかりと自分で、受け入れるものは受け入れる。
小さな体ではあるが、その事を柚香自身が自分に課せたのだった。
…逆に、そんな柚香を見ていての幸乃が、気持ち的に、少し若返った感じで…。
近所の友達からも、
「何、どうしたの~~幸乃さ~~ん。何か…、肌…、全然、今までと違うんだけど~~。うそでしょう~~。…どっか…、クリニックか…???」
そんな幸乃も、思わず、笑って、
「いえいえ。…そんな事は…一切~~。もぅ~~。揶揄わないでくださ~~い。」
どうやら…。還暦を迎えて4年経過した幸乃にも、
長野の環境は…、美容的にも良かったような…。
長野での半年の滞在が…、
行く行くは、柚香の小学時代には忘れられない体験となっていたのだった。
ただ…、中学と高校に入ると、時代の流れで、中々長野に赴く機会は閉ざされてはいったが…。
たま~~に、お兄ちゃんの崇とはラインや電話で話す程度。
その都度、
「おまえも頑張れや。」
と…。
柚香も、
「うん。お兄ちゃんもね。」
「おぅ。」
そういう幼い頃を経験しての柚香、自分の両親の死にも、
しっかり、幼少時代に克服したのである。そのために、ちょっとやそっとの事では…。
…けれども…、そんな柚香ではあったが…。
今回の事は…。現実的には、いとも簡単に、頭を鈍器で殴られたような…。
…しかも…。肝心の…、自分の兄的存在の崇も、ここ数年、連絡は途絶えていた。
…逆に、柚香も大学入れば、もはや、自分の事は自分で…。
それを数年、習慣付けさせてはきていた。そんな柚香ではあったが…。
…けれども、何とか持前の気力で…。最愛の親友でもある愛実にラインで…。
「ごめん、ごめん。ちょっとね~~。バタバタと立て込んでて~~。」
送信。
するとすぐにライン。
「何が、バタバタと立て込んでてよ~~。最愛の親友の存在、どうなってんの~~。」
そして柚香、
「ん~~~。…ごめん。後で電話する~~。今、ご飯食べてるから~~。」
「オッケー~~。待ってるから~~。」
「あ~~い。」
そして柚香、そそくさと食事を済ませて洗い物をして…。
「おばあちゃん、ご馳走様~~。」
茶の間にいる幸乃、
「あぁ~~。うん。そのままにしといて~~。おばあちゃん、後で片付けるから~~。」
「あ~~。はい。…うん。でも、もぅ終わった~~。」
「はは。そうかぃ。うん。ありがと。」
そのまま2階に上がる柚香。そして部屋に入るなり、スマホの画面を指でトン。
いきなり、スマホから、
「もしもし~~~。」
愛実の声。
柚香、スマホに、
「ごめん、ごめん。」
「…でぇ~~。一体…、どうなってる訳~~???」
柚香、ベッドに腰掛けながら、
「それが…さ。」
「うん。」
柚香、右目を歪めて。
「…ちょっと…。…かなり…、ヤバイ事に…、なってる…。」
「ヤバイ事っ!!!」
その声のトーンの高さに柚香、
「耳痛ったっ!!!」
瞬間、愛実の笑い声、
「かかかか。ごめん、ごめん。はは。…で…???…何よ、そんな…ヤバイ事って…???」
瞬間、柚香、思いっきり顔を傾げて…。髪に指を差し込んで、
「ん~~~~。…なんて、表現していいのか…。…これ…、完璧に…、私、ひとりでは…。なんとも…。」
「は~~い。」
いきなり愛実、
「うんうんうん。分かった。…では、この…、愛実様がなんとか…。」
「…と~~。是非に、お願いしたい…。…なの…だけど~~。ん~~~。」
その声に愛実、
「はっ…???」
「そぅも…、簡単には…、行かない事…。なのだよ、愛実君。」
愛実、
「はい…???」

LIBRA~リブラ~ vol,045. 「おまえがここにいる以上は、おまえの兄ちゃんだからな。」
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