真輝、スマホの画面を見て、ようやくニッコリと。そして、スマホの画面を閉じて、
「いただきます。」
途端に咲耶、
「え〜〜。お兄ちゃん、画面、閉じちゃうの〜〜。見たかったのに〜〜。」
その声に真輝、
「へっ…???…なんで…???…うそだろ。」
咲耶、兄を見て、いきなり頬っぺたを膨らませて、
「ぶ〜〜〜。」
そんな咲耶を見て愛佳、
「咲〜〜耶っ。」
吾大、咲耶を見て、
「かかかか。変な奴だな〜〜。」
真輝、唐揚げを一口、目を見開いて、
「うん〜〜まっ。はははは。」
けれども咲耶、兄に、
「…でも…。ははは。良かったね。お兄ちゃん。」
ニッコリと。
そんな咲耶に真輝、顔を傾げて、
「ふん…???…何が…???」
柚香、遅めの夕食。幸乃は茶の間で洗濯物の畳を…。
台所で柚香、食事をしながらスマホを…。
真輝にはライン、送ったものの、未だ返信が来ない。
「ご飯…かな〜〜〜。」
方やこちら。何度もスマホ画面を見ても一向に来ないメッセージに、
「何やってんのよ〜〜。こっちだって、心配するじゃんよ〜〜。あんな事言っといて〜〜。」
愛実である。
さすがに痺れを切らして文字打ち、
「送信っと〜〜。」
柚香、
「わっ。」
そして、
「ヤッバ〜〜〜。メグだぁ〜〜。…しまった〜〜。メグにライン、してなかった〜〜。」
ラインのメッセージには、
「あれからどうなってる…???…全然連絡来ないんだけど…。」
柚香、メッセージを見て、顔をかなり傾げて歪めて、小声で、
「だよね〜〜〜。」
けれども、
「まっ。…でも…。こんな事って…、考えてみると、他人に平気で話せる…訳でも…。」
以外と柚香、数時間前の出来事で、かなり心理的にも落ち込んでいるかに見えたが…。
…何故か…。…そうでも…。その理由が…、
幸乃が言う、自分たちが2歳の頃に起きた交通事故。
この事故が原因で柚香は両親と妹を失った。
確かに奇跡的に命は救われたものの、事故後の柚香は子供ながらに悲惨なものだった。
気付いてみれば、今まで一緒だった妹がいない。
しかも、母親の顏も父親の顏すらも目の前から消えていなくなってしまったのだった。
2歳の柚香、実際、病院でも中々心を開いてくれると言う事はなかった。
当然である。2歳にして…、幼くして両親共々。
毎日遊んで暮らしていた妹も事故で亡くしてしまったのである。
小さな体。そして小さな心に刻まれた事実は、柚香そのものを残酷にも傷みつけた。
まず…。毎日見舞いに来る祖母の幸乃には全くと言って懐かなかったと言う。
病室に入ればすぐに布団で顔を隠す始末。
しかも、そんな柚香に、それでも優しく言葉掛けても枕を投げつけたり、
いきなりベッドから飛び出して病室中駆け回って幸乃を困らせた。
遂には…、病室中を駆け回る柚香を抱き締めた瞬間、腕を噛まれたり喚き叫ばれたりとか…。
その騒動に病室に入ってきた看護師や医師たちも、何とか手立てを考えてはみたのだが…、
いかんせん、その当時、柚香が入院していた病院の小児科では手が終えずに…。
幸乃も医師に相談した結果、
偶然にも同じ病院の医師の先輩が地方のある小児科医院の院長をしているとの事。
すかさず調べてみると…。
何とその医院、何と柚香と陽織の母親が東京に転職する前まで勤務していた小児科医院だったという。
幸乃、その事に驚いて、
「えぇ〜〜〜。まさか…、萌衣さんの前に勤務していた。」
柚香を担当している小児科医師も、
「えぇ。僕の先輩なんですよ〜〜。何と、聞いてみたら、柚香ちゃんのおかあさんの同期で診療所に入った医師だと…。今ではすっかり院長してます。確かに、村に一件しかない診療所なんですが…。評判は上々。…そして、ここではあんまり、言えないんですけど…。…長野と言う…、環境的にも…、東京と比べたら…。」
その医師の話に幸乃、何度も何度も丁寧にお辞儀をするしかなかった。
その後、幸乃は萌衣の実家に連絡して、半年ほど、萌衣の実家に厄介になったのである。
季節は6月後半。萌衣は旧姓が我孫子(あびこ)。
萌衣の実家は萌衣の妹の流伽(るか)の子供が3人。
男の子がふたり。女の子がひとり、末娘である。
しかも、柚香の一歳年下。
この兄弟と、そして子供診療所の御蔭で柚香、僅か半年の間でガラリとその性格が明るくなった。
…と、言うよりも、以前とは比べ物にならないくらいに好奇心に目覚め、
何事にも興味を示す女の子に変わったのである。
そんな半年で小さな柚香の心に…逆に、刻み付けたのが、
小さな体に自然に溶け込んでいくように…。それでも受け入れられた妹の陽織の死。
そして…悲しくも…、こちらも自然に心の中に受け入れた母親と父親の死。
診療所からも優しく教えられた。
「…確かに。悲しいけど…。柚香ちゃん、いつかは、事実…、受け入れないとね。」

LIBRA~リブラ~ vol,044. 真輝、スマホの画面を見て、ようやくニッコリと。
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