室越、一樹に、
「…で、退院の方は…???」
その声に一樹、ニッコリと、
「もぅ…、間もなくかと…。」
「そう…ですか~~。うん。それは何より。まっ、病院側でも、早くベッド…空けなければ…。」
坂崎、いきなり、
「教頭先生~~。」
一樹、
「ぷっ。」
室越、思わず直立になって、
「あっ、これは…、したり。」
そして数日後。瑞樹家。
蒼介、
「ふぅ~~。かかかか、和奏さん。何とか…。間に合いましたか…。」
和奏、
「うん。蒼介、頑張ったね~~。」
夫の腰に右腕を回して。
蒼介、
「大事な家族のため。あっ、そうそう。八倉先生にも、お礼…。一昨日の日曜日、ベッドとか…、2階から1階に。それに…1階から2階に…。」
和奏、その声に、数回頷き、
「うんうんうん。」
そうなのだった。出来る限り自分たちで…。の、つもりが…、
確かに、重量のあるもの、それに大きなものは…、家族3人だけでは無理もあり、
一樹にお願いしたのだった。
それにもうひとつ。瑞樹家の隣近所には…、
確かに、理沙が下半身不随になった事は周知となってはいるが、
それ以上の事は話してはおかなかったのである。
蒼介、
「いやいやいや。こう見ると。新発見。家の中が、見事にバリアフリー。」
そこにヒョコンと、70代の男性。
「おぅ、蒼介、元気かぁ~~。ほぃ、回覧。」
和奏、
「あ~~。田崎のおじいちゃ~~ん。」
この男性、田崎巌(たざきいわお)と言う。町内会長である。
御年72歳。一匹のチワワを連れている。
蒼介、
「田崎さん、どうも。」
巌、
「おぅ。とうとう出来たかね~~。」
和奏、腰を下ろしてチワワを抱いて、
「ルリちゃん、元気~~。うんうんうん。」
和奏の頬を舐めるチワワ。
蒼介、巌の声に、
「えぇ…。ようやく。」
家の外をグルリと眺めながら巌、
「しかし、凄いね~~。今は、こんな風になるんだねぇ~~。玄関からスロープ。うんうんうん。理沙ちゃん、これから、大変だけど…頑張んなきゃね~~。すまんね。何も手伝えなくて…。」
蒼介、すかさず、
「いえいえいえ。とんでも…。」
町内会にも様々な人間がいる。
中には手伝いたい人もいる中で…。また何かやっかみ半分の人も…。
そのために、個々の家庭は個々で…。そういう周辺環境でもあった。
巌、
「…で、理沙ちゃんは…、帰ってから…、2階へ…???」
蒼介、
「いえいえ。まっ、ガレージから2階へ…とも、考えたんですが…。理沙がそれ…、嫌がって…。私は1階で…、おとうさんとおかあさんが私の部屋、使ってって…。」
「そぅかぃ、そぅかぃ。うんうん。今じゃ、いろんな事…、出来るようだが…。まっ、理沙ちゃん、おとうさんとおかあさんに…、迷惑…、掛けたくなかったんだろ。優しい子だからね~~。」
そして、腕組みして、
「うん。まっ、確かに。家庭環境上、いろいろな家庭の事情で…。車椅子でも仕事をしなきゃならない。…そういう場合なら、話は別だが…。」
蒼介、
「えぇ…。」
「うんうん。あっ、蒼介。理沙ちゃん帰ったら、よろしく言っておいてくれ。かかかか。んじゃ、私はこれで…。」
蒼介、
「わかりました。はい。じゃ。」
和奏、チワワを放して、
「ルリちゃん、元気でね~~。」
巌、
「んじゃ。」
和奏、お辞儀をして、
「ありがとうございます。」
そして…、いよいよ…。
理沙、
「先生、いろいろと、ありがとうございました。」
駒田に右手を…。
駒田、
「おぅ。」
けれども口をグンニャリとさせながら、
「先生、寂しいな~~。」
隣で、夏希、
「もぅ~~。先生~~。もぅ、そればっかり~~。若い看護師もいるんですから~~。」
逆に駒田、
「いやいやいや。師長、それって…。ある意味、物凄い発言ですよ~~。」
大袈裟なゼスチャーで…。
他の看護師も、
「あ~~。師長~~。」
いきなり夏希、
「あっ!!!私…と…した事が…。」
瞬間、その場で笑いが起こる。
「でもね~~。」
凪。
「本音。私たち看護師も、理沙さん、別れるの辛いのよ~~。もぅ~~。とにかく前向き。こんなに頑張る女子高生。凄いなぁ~~って。だ~~って、もぅ、車椅子なんて簡単に操作できるし、それに移乗だって完璧。」
春風に須美、
「うんうんうん。」
和奏、丁寧にお辞儀をして、
「ありがとうございます。」
駒田、
「ただ、これが…、最後じゃ…、ないからね~~。」
蒼介も、
「今後とも、何かありましたら、お願いします。」
駒田、
「もちろん。何なりと。」
そして理沙、車椅子に乗ったままで看護師たちと抱き合いながら、
「ありがとうございました~~。」

信じて…良かった。 vol.051. 蒼介、「大事な家族のため。」
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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
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