そして…、ホームに立つふたり…。
まだ…残暑厳しい9月の夜空。
口を尖らせながらポケットに片手を突っ込んでいる凛久。
スマホを手にして、恵津子からのラインに文字打ち、そして送信の薫子。
そして凛久に、
「ぷっ。おっかしぃ。」
そんな薫子に首だけ振り返る凛久、
「えっ…???」
少しだけ顔を傾げたくらいにして薫子、
「ふふ。仕事の時はあんなに喋るのに、こと、プライベートの事となると、まずだんまり。おとなし過ぎて、なんとも可笑しくなっちゃう。」
僅かに凛久に近づいて薫子。
凛久、
「えっ…???」
「霧島さんよ~~。いっつも、そぅ。仕事以外で、私とあなた。そして羽田さんがいると、霧島さん、まず、口を閉ざした貝殻になっちゃうもんね~~。」
そんな薫子の話に凛久、途端に頭を掻きながら、
「そぅっすか~~。」
そしてにっこりと…。
薫子、そんな凛久を見て、口を噤んで、
「茉祐子の事、よろしくね。」
そして薫子、
「あなたなら…、お願い出来る。」
まっすぐ前を見て。そして凛久の顔を見て、
「霧島さんなら…。」
凛久、
「先生…。」
薫子、そんな凛久の右腕に両手を絡めながら、
「頼んだぞっ!!!」
電車のドアがゆっくりとふたりの前に。そしてドアが開く。
「さっ、帰ろ。」
薫子に半ば引っ張られるように…。
吊革に捕まっている乗客もいるが、
空いている席に右腕を絡まれながらも薫子と一緒にシートに腰を下ろす凛久。
数秒後、電車は静かに動き出す。
薫子の左側、そして凛久の右側、共に密着されたままで…。
薫子の右隣りは学生だろうか、耳にイヤホン。
そのイヤホンから小刻みのサウンドが漏れて薫子の右耳に…。
そして凛久の隣には、僅かに空間を作って座っている女性ふたり、
ОLだろうか、懸命に小さな声で会話している。
凛久、何故かしら極々自然に…。
「先生…。…僕、先生の事、好きです。」
その瞬間、薫子、
「えっ…???」
僅かに凛久に顔を向けて…。
凛久、まっすぐ前を見て、
「僕、先生の事、好きです。」
薫子、柄物のアシンメトリーのワンピースを着ている。
薫子、そんな凛久の顔は、今度は見ずに、顔は下げたままで、
「そっ。」
そう言って、今度は薫子、少し顔を上げて…。
薫子のヘアスタイルは、後ろで結んで、団子。
凛久はまだ真っすぐ前を向いたままで…。
薫子、そんな凛久に、
「知ってた。」
すぐさま返事の凛久、
「えっ…???」
「…って言うかぁ~~。もしかしたら…、私の方が、ず~~っと前に、霧島さんの事、好きになってたから…。」
その声に凛久、
「えっ…???うそっ???」
薫子、にやりと笑いながら、
「ううん…、ほんと。」
そして薫子、
「私…自身…、それに気づいたのって、多分…、六条さんのお宅でのバーベキュー???」
凛久に顔を向けながら…。
凛久もそんな薫子に顔を向けて、
「あ~~。はい。」
「多分、その時。まっ、逆に…、その…、私が霧島さんを好きになる、切っ掛けづくりって言うのが…、ほら。ジョギングでのバッタリ。」
「あぁ~~、えぇ~~。はい。…あの時は僕も、うそだろって…。」
「私だって、びっくりしたんだから、なんでここに霧島さんがいるのって…???」
お互いに笑いながら。
薫子、右手首を左手で握って…。
「…で、六条さんで、バーベキュー。」
「えぇ…。」
「…でね…。帰って夜、書斎で仕事しながらバーベキューの時、写した写真、見てたのよ。」
「えぇ。」
「そこに、何と、5枚も連続して、霧島さんの写真。」
「えっ…???」
「撮った犯人は、茉祐子。」
その声に凛久、途端に、
「え~~~~~。」
「だ~~って、茉祐子以外に考えられないじゃない、私のスマホに触れて、写真撮れる人なんて…。」
凛久、それを聞いて、目をキョロキョロと、
「…そっか…。うん。うんうんうん。」
「それから…、だねぇ~~。少しずつ…では、あるけど…、霧島さん、意識…、するように…なったかな~~。」
「せ、先生…。」
そして凛久、
「先生…、じゃあ。」
そして薫子、すぐさま凛久を見て、
「ふん。私も霧島さんの事好き。好きだよ。」

薫子と茉祐子~その愛~ vol.211. そして…、ホームに立つふたり…。
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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。
