仏壇の前に座り、両手を合わせて、
「行ってきます。…っと。」
キッチンに寄り弁当を手に。そして応接間に寄り、
「おかあさん、行ってきま~~す。」
茉祐子(まゆこ)。
「は~~い、行ってらっしゃい~~。ふっ、ふっ、ふっ。」
ジョギングウェア姿でフィットネスバイクを使っている薫子(かおるこ)。
茉祐子、
「相変わらずだね~~。」
薫子、茉祐子に向かって、
「ふっふっ。」
右手を振って。
茉祐子、
「はいはい。行ってきます。」
薫子、
「あ~~、茉祐子ちゃん、今日…遅くなる~~???」
その声に、
「ん~~。大丈夫…だとは…思うんだけど…。遅くなるとき、電話するから…。」
薫子、
「ふっふっふっ。オッケー。」
茉祐子の自宅から最寄の駅から勤務先の、「エクレール」化粧品メーカーまでは凡そ40分。
都心のビル、明応ビルディングの5階と6階にある。
その5階の営業部、セールスプロモーション部が大学卒業から入社した勤務先である。
成宮茉祐子(なるみやまゆこ)26歳。
部署に入り、
「おはようございま~~す。」
「おはよ、マユ。」
茉祐子の同期、渡会千晶(わたらいちあき)。
「おはよ、ライチ~。相変わらず早いよね~~。」
その数分後には、
「おっは~~。」
茉祐子の一年先輩の一ノ瀬和歌葉(いちのせわかば)。
そしてこの年の4月から他の部署から配属されてきた来栖巴(くるすともえ)、
「おはようございます。」
それぞれが挨拶をしながら部署に入ってくる。
そこに颯爽と歩いて部署に入って来た宇治川愛耶乃(うじかわあやの)。
営業部、セールスプロモーション部の本部長である。
「では…、始めますか。」
椅子から立ち上がり、愛耶乃に一礼をしての榛名迅(はたなじん)、
セールスプロモーション部の課長である。
「はい、みんな、おはよう。」
愛耶乃。
「さぁ~~。今日は、夏に向けての新商品、アイリーンのお披露目イベント。しっかりね~~。」
セールスプロモーション部一同、その声に、
「はいっ!!!」
アイリーンとは、オールインワン化粧品のひとつ。
2年前に、ある研究から、企画開発されて、何度も検討し、その都度研究も繰り返し。
そして試験も繰り返し、その後、モニターでも、「これなら…。」と言える、
「エクレール化粧品」の新商品である。
「よ~~し。やっちゃいますか~~。」
威勢よく張り切る千晶。
「ふふん、期待してるよ~~。」
茉祐子。
方やこちら、薫子、
「さて。私も…そろそろ~~。」
成宮薫子(なるみやかおるこ)34歳。
実はこの薫子、茉祐子の母親である。茉祐子の8つ年上。
料理研究家である。そして趣味がフィットネス。
着替えを済ませ、こちらも仏壇の前に座り、両手を合わせて、
「パパ、行ってきます。」
9時にはテレビ局、スタジオ入りである。
「エクレール」のイベント会場、午前10時から開始され、
滑り出し上々、多くの人々が会場入り。
テレビ局でも、簡単な打ち合わせから番組の段取りを熟していた。
成宮親子。母と子のふたり家族である。
そして、この成宮家の仏壇には、ふたりの写真が飾られてある。
午後6時、イベントも終日盛況、茉祐子、スタッフたちと一緒にエレベーターで1階まで。
こちらも番組が全て終了。
テレビ局から真っすぐ、茉祐子の勤務する会社が入っているピルのエントランス。
スタッフたちと歩きながら、エントランスのベンチに座っている薫子を見つけ、
「わあ、おかあさん。」
薫子もその声に、
「はい。茉祐子ちゃん。」
その時、一緒にいる巴、その女性を見て、
「えっ…???…おかあさん…???うそ…。」
そんな巴に、一緒にいる千晶、
「あっ、そっか~~、来栖ちゃん、マユのおかあさん、見たこと…ないもんね~~。」
薫子、
「はい。千晶ちゃん。」
千晶ににっこりと…。
千晶も、
「は~~い、こんにちは~~。薫子さ~~ん。」
巴、
「か…、薫子さ~~んて…???茉祐子…の…、おかあさん…???」
頭の中で、
「…って、あまりに…、若くない…???」

薫子と茉祐子~その愛~ vol.1.「おかあさん、行ってきま~~す。」
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庄司紗千 つつじヶ丘の坂道で…。
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。