龍二、
「七瀬さん。向こうにも素敵なの…ありますよ。尾田さんも…。」
伸永、
「あっ、はい。」
奈都美、
「あ…、ありがとうございます。」
萌咲と龍二、奈都美が見ているふたり連れを気にしながら…。
そのまま通り過ぎる翔と優里亜。
伸永、小さな声で、
「翔さん…。」
萌咲、奈都美に、
「七瀬さん…、知っている人…???」
その声に奈都美、
「えっ…???…えぇぇぇぇ。いえいえ…、別に…。うん。うんうんうん、はい。大丈夫です。」
そんな奈都美を隣で見ながらの伸永、難しい顔をして、
「七瀬さん…。」
帰りの電車。夕方前だと言うのに、吊皮に掴まっている人もいない。
しかも、他に乗っている乗客と言えば、遠くに、老婆と小さな女の子。
反対側には耳にイヤホン、そして頭を窓に当てて居眠りをしている男性。
言葉のない奈都美。そして、とうとう頭を項垂れて、
「うっ。うっ。」
伸永、
「七瀬…さん。」
奈都美、自然に身体が左に…。伸永の右肩に。
伸永、そんな奈都美に、
「ななせ…さん。」
奈都美、次第に、
「あ~~~。」
「ななせ…さん。」
そして…とうとう、耐えられなくなって、伸永の肩に掴まって泣く奈都美。
結局、クック・ル・ポットの最寄駅まで、伸永の右肩に凭れながら…。
伸永、
「着きましたよ。」
奈都美、目をキョロキョロと…。そしてようやく…、
「ありがと…。」
ホームに降りて、なんとか歩き出す。
けれども、右側に電車が自分の後ろをゆっくりと動く、
その流れについ、体がフラリと…。
伸永、
「お~~っと。」
伸永に体を支えられる奈都美。伸永に、
「ご…、ごめん…。」
伸永、奈都美を支えながら…、
「少し…休みましょう。」
近くの椅子に…。
伸永、
「ぼ…僕…、飲み物…買ってきます。」
まだ人もまばらなホーム。
伸永、奈都美にカフェラテを…。
「はい。」
奈都美、
「ありがと…。」
穏やかな風が頬を撫でる。
伸永、
「七瀬…さん。」
奈都美、
「うん…???」
「翔…さん…。」
「うん。」
「加瀬…さんと…。」
奈都美、目をパチクリと。そしてカフェラテを一口。
「ふん。…仕方ないよ。」
奈都美を見ながら伸永、
「七瀬…さん。」
「…この前…、翔と会ったじゃない…。」
「あ~~。そうでしたね。ユッコさんに見舞いに行ったとき、電話で…。」
「うん。」
顔を上げて奈都美。
「…で、約束通り、翔と会った。そして翔に言われた。これからも、今のまんま。…だって…。」
伸永、
「えっ…???」
「翔と私…、これからも…、今のまんま。そして、翔は、優里亜の事…、断り切れないって…。」
その声に伸永、
「えっ…???いや…、だって…。翔さんは七瀬さんの事…。そして七瀬さんだって…、翔さんの事…。」
奈都美、
「うん。今も私…、翔の事…好き…。けど…。」
伸永、すぐさま、
「だったら…。」
「どうしようも…ないのよ。今の状態じゃ~。」
声高に。そして一拍置いて。
少し、落ち着いて、
「…うん。今の状態じゃ…。どうしようもない…。翔と優里亜の中に…、私…。入っていけない。」
伸永、
「七瀬…さん…。」
「…って…言うか…。…これ…、カンちゃんにも…話したんだけど…、翔…、私から、だんだん遠くなっていっているようで…。」
「七瀬…さん…。」
奈都美、カフェラテを飲み終えて、
「さっ、社に戻ろ。ありがとね、ノブ…。話…、聞いてくれて…。」
そんな奈都美を見て伸永、
「七瀬…さん。」
奈都美、自宅に戻って、部屋には向かわず、そのままリビングのソファにドカッ。
「あ~~。疲れた。」
一足先に帰って寛いでいた広武、
「なんだ、おま…、帰って早々、そんなところにドッカリと…。」
キッチンで奈留美、
「どうしたの~~。珍しい…。」
「とうさん。今日、一緒に…飲もうか…。」
その声に広武、
「はぁ~~あ…???」
「…っと…、その前に、シャワー、浴~びよ~~っと。」
ソファから立ち上がり、スタスタと歩いて自分の部屋に。
奈留美、そんな奈都美を追いかけるように…、廊下に…。
広武、
「なんか…あったか…あいつ…???」
奈留美、首を傾げて、
「さ…あ…???」
「俺と一緒に飲もうかって…。何考えてんだ…???」

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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。