橙、カウンターの上で、小さく、ポツリと、
「ユッキと…いたい。」
その瞬間、橙の右にいた飛香。そして左にいた尋音、
「えっ!!!」
尋音の隣の万美、
「…ん…???」
尋音、
「ゆず…。今…何か…言った…???」
橙の隣で飛香、
「ユッキと…いたいって…。」
その途端、尋音、万美、
「え――――――――っ!!!」
その尋音と万美の声に、テーブルを拭いていた絃、
「へっ!!!」
翠も厨房で洗いものをしながら、
「はい…???」
尋音、
「ゆず。あんた、まさか…、ユッキ……。」
橙、唇を尖らせて、紡ぐように、
「……。」
翠、カウンターの方に近づいて、
「何々、どうした…???ん…???ん…???」
尋音、隣の橙の顔を覗くように、
「ゆず…、ユッキといたいって…。それ…。」
雅樂、俯いた橙の顔を見て、
「……。」
翠、
「……。ゆず…。」
尋音、続ける。
「ゆず…。それって…つまりは……。ユッキの事…、好きだって…???」
その瞬間、一同、顔を見合わせて、
「……。」
飛香、
「ゆず…ちゃん…。」
数秒後、いきなり雅樂、
「けけけけけ。えへ~~。かかかか。いやいや。いいねぇ~~。羨ましいじゃねぇか…。え~~。ユッキ、モテるね~~。」
途端に万美、
「ちょっ。ちょっと雅樂じぃ。からかわない~~。ゆずには、列記とした遊馬、巽君と言う彼氏…いるんだから。」
そんな万美の声に雅樂、キョトンとした顔で、口を尖らせて、
「おぅ、おぅ、ほわ~~い。」
万美、
「ゆず、遊馬君と…なんか…あった…???」
その万美の声に、一同、橙の顔を見て…。
橙、俯いたままの状態で、顔を右左に…。
飛香、
「ゆず…ちゃん。」
翠、
「ゆず、とにかく…、遊馬君と何があった。言ってごらん。」
尋音、
「でも…ゆず…。ユッキは、列記と今、みどと一緒に生活…してんのよ。…それに、今のゆずの気持ち、ユッキは…???」
小さな声で橙、
「分かってる。分かってる…。けど…。」
数秒の沈黙。
そして、
「…でも、巽、前の巽と、違ってきた。」
その声に尋音、万美、
「えっ…???」
翠、
「……。」
そんな4人を傍で観るように絃、
「……。」
尋音、万美と翠を見ながら、
「今までの遊馬君と…違うって…。」
そして尋音、
「みど…。」
そんな尋音の声に翠、いきなり手を振り、
「いやいやいや。私にそれ…訊かれても…。」
橙、
「巽…、脳梗塞になった頃かな…。」
尋音、万美、
「えっ…???」
「前…みたいな…笑顔…、見れなくなった。」
尋音、万美、
「……。」
万美、
「いやいやいや。いや…、それは…ほら、遊馬君、病気だよ。病気と闘ってるんだよ。それなのに…そんな…笑顔…。普通じゃ…ないんだよ。」
その時、翠、いきなりドキン。
頭の中で、
「…ユウマ…。」
そういえば、確かに…。10年ぶりに再会した翠と巽。
けれども、それからは巽の表情は、翠の事を思い出し、
それからというもの、翠には笑顔が絶えなくなっていた。
それは、例え病室の中であったとしても…。
そんな記憶を辿っての翠、頭の中で、
「ユウマ…。」
「みど…???みど…???」
万美。
名前を呼ばれて翠、
「へっ…???」
「どしたの…???何か…???」
翠、
「あっ。ははは。いや…。」
ほくそ笑みながら。
尋音、
「ふ~~~ん。どうしたものやら…。」
雅樂、
「ほぃ、ゆずちゃん、上がったよ。5本、盛り合わせ。」
橙、そのお皿を受け取って、小さな声で、
「ありがとうございます。」

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庄司紗千 花笠音頭
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。