「そうだったんか~~。てぃへんだったなぁ~みど~~。」
焼き鳥を焼きながらカウンターの丁度真ん中の席の翠をチラ見しての雅樂。
「大将~、生くださ~~い。」
隅の客。
雅樂、
「あいよ~~。絃~~。」
絃、
「は~~い。」
「生きた心地…しなかった。」
ジョッキを両手で握るように翠。
そんな翠を両隣で見つめる万美、尋音、そして橙と飛香。
「私…なん~にも…できなかった。…ただ、あたふたしていただけ…。」
そんな翠をまたチラ見する雅樂。
「…んなもん、なんだ~~。できる訳、ねぇ~だろうよ。」
焼き鳥焼きながら、
「黙って、傍についていれば、それでいいんでぃ。」
万美、
「雅樂…じぃ。」
翠、
「……。」
「それに…、その方が、周りだって、安心するって~もんだろ。」
その雅樂の声にまた翠、沈黙。そして、
「ふぅ…。」
そして、
「…って、言うか…ゆず…???」
何やら巽の事を気にして、目が潤んでいる橙。
飛香、
「ゆず…ちゃん。」
鼻水を啜って。唇を絞って。指先で目尻を拭って。
「ふぅ…。んん…。従姉に…電話したんだけど…。通じない。…多分…仕事…してる。」
翠、万美、
「うん。」
尋音、
「へっ…???ゆずの従姉って…???」
万美、
「看護婦なんだって。聖露奈理亜医科大の…。」
「へぇ~~。」
「ほぃ、上がったよ~~。ゆずちゃんに、隣の…。」
そしてにっこりと雅樂、
「お初で~~す。」
「鑑飛香と言いま~~す。わぉ、おいしそ。」
にっこりと飛香。
「飛香ちゃんか~~。けけけけ。」
翠、
「何よ、その笑い。」
「バカ言ってんじゃねぇよ。可愛いから笑ってんじゃねぇかよ。なぁ~~ゆずちゃん。」
その声に橙、目を潤めながらも、
「かかかか。」
「おぅ、おぅ、笑っちまえ。お前さんたちにゃ、泣いた顔なんて、似合わねぇからよ。いつも笑ってな。なぁ、万、尋。」
そして、
「折~~っ角、そんな可愛い、綺麗な顔、してんだ、勿体ねぇだろ。」
万美、尋音、鼻の下を思いっきり伸ばして、顔を見合わせて、
「久しぶりに聞いた…。」
「ねぇ~~~。」
「てやんでぃ。そんな毎回言ってたら、白けちまうだろ。」
そして、
「たま~~に言うのが…、愛情ってもんだ、なぁ~~。」
飛香、食べながら目を真ん丸くさせて、
「おいっしぃ~~。うんうん。生、お代わりお願いしま~~す。」
翠、
「はいはい。あっ、絃、いいよ、私やるから。」
カウンターの中でフライパンを使いながら絃、
「ごめ~~ん、お願~~い。」
飛香、隣の橙の右二の腕をコンコンと、
「綺麗な店員さ~~ん。」
橙、
「ふふ。でしょう~~。」
テーブル席の客、雅樂に、
「大将、綺麗処ばかりで、羨ましいね~~かかかか。」
そんな客に雅樂、
「おぅ。ありがとよ~~。こいつらがいる限り、あんたらがここに来てくれる。千客万来で、嬉しい悲鳴でぃ。」
その瞬間、万美、尋音、同時に後ろに振り返り、そして飛香の生のジョッキを持ちながら翠、
丁寧に客に挨拶して、
「いらっしゃいませ。ありがとうございます。」
その声に客、
「こりゃやられた。教育も抜群と来た。ははははは。」
そして向かいの客も、
「かかかか。なんでもかんでも、旨ぇ訳だ。ここのは…。」
カウンターの中で絃、にっこりと。
そして雅樂、翠と万美、尋音に、小さな声で、
「ありがとよ。」
3人、顔を見合わせて、
「ふふ。」

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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。