橙が椅子から立ち上がる。
その時、
「ヨッ。お疲れさん。」
橙を見て手を出して橙を制するように…。
薫郎である。
「あっ。お世話様です。毎度です。」
巽。
そんな巽を見て薫郎、
「ごめんね~~。みんな忙しくって…。秋、冬物の…企画…構成、その打ち合わせ。もう~みんな、バタバタ。」
全くスタッフの誰ひとりも巽に構えないフロア。
お昼休みの凡そ30分前。
奥から呉羽、
「ユッキ、ごめんね~~。お願い。」
薫郎、そんな呉羽に向けて、
「OKで~~す。」
巽、
「じゃ~~。これ、お願いできますか。」
「うん。OK、OK。」
そしてバッグの中からオーダーされた食品を出して、リストと照らし合わせて…。
薫郎、
「ふん。OK。これは…。はい。奈都~~。そして…、これは…飛香。これは…コバちゃん。」
巽、
「コバちゃん…???…えっ…???そういう人…???」
薫郎、
「あ~~。ごめん、ごめん。こっちの話~~。かかかか。」
受話器を左の耳に当てながら、
そして椅子をぐるりと回して体を反転させて机の端にお尻をピッタリと付けて、
スタッフを眺めながら翠、受話器を口元に、
「え~~。はい。」
そしてゆっくりと壁の方を…。
思わず目に飛び込んできた巽の顔。ドキン。
薫郎が相手をしている。
橙はと言えば、スタッフと懸命に仕事。
巽、全ての食品をバッグから出して、薫郎に一礼。
薫郎にっこりと右手を挙げて。
巽、奥の呉羽に一礼をして、呉羽も応えて右手を。
そして今度は翠の方に顔を。さりげなくお辞儀をしたような…。
その時また翠、ドキン。
「えっ…。」
受話器の向こうで、
「…それではお願いします。また何かありましたら、私、草島までお願いします。」
翠、
「わざわざありがとうございました。こちらから電話するはずが…。」
「いえいえ、とんでもございません。」
「失礼します。」
その時、
「あっ。逢坂さん。」
翠、
「あ…、はい。」
「もし…、仕事で名古屋まで来ることありましたら、ご連絡ください。」
「あ…。はぁ…。」
「一緒にご飯でも…どうですか…???」
翠、その声に、
「あ…。あ~~。はい。」
にっこりとして、
「喜んで連絡させて頂きます。美味しいお店、お願いします。」
「了~解。ではでは。失礼します。」
翠、電話を切って、
「ふふ。よ~~し。」
薫郎、
「みんなの名前、くっつけておいたから、あとはよろしく~~。」
万美、
「は~~い。サンキュ~~。」
翠、呉羽まで。
「今、ロンドの草島さんから連絡で…。」
呉羽、
「うん。」
「今て分納中の…。」
「ふん。JC365PK…???」
「なにやら…、増産という事で…。」
呉羽、その声に、
「へぇ~~。やってくれるわね~~。」
「品切れの店舗が続いてて、問い合わせまであるようで…。」
呉羽、いきなり、
「かかかか。瓢箪から駒とはこのこと。どの工場からもクレームのあの商品が…。」
「えぇ…。売れてるみたいです。」
「ふ~~ん。」
「…で、名古屋に来る機会あったら、連絡してくれって。」
「草島さん…???」
「ご飯食べよって。」
「あら~~。みど~~。気に入られたみたいじゃ~~ん。」
翠、
「ふふ。」
にっこりと。

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