「さ~~て。仕事、仕事~~。」
橙を見ながら椅子から立ち上がる万美。
「ゆず。頑張ろ。」
先に立って歩き出す万美。
そしてその万美に合わせて尋音。
「さ~~てと。んじゃ、私も。」
数秒後、こちらも席を立つ翠。
「チーフ…。」
橙。
「ん~~???」
翠。
「私…、みんなに…。」
「はい…???」
「なんだか…、嫌われて…。」
その声に翠、
「ゆず。怒るよ。」
口を尖らせて、少し、険しい顔で…。
けれどもそれも一瞬。ゆずのオデコに左人差し指でツン。
そして軽く押して、
「可愛い妹ができたって思ってんだから、万の言う事、肝に銘じな。あれだけ人に親身になってくれる友達って、なかなかいないよ~~。物凄い包容力の持ち主。万は。」
橙、
「チーフ…。」
廊下を歩きながら万美、
「尋~~。」
尋音、
「…ん…???」
「多分、みどの初恋の人って、遊馬君。…私の勘が…正しければ…。」
尋音、
「うそ…。」
「…でも、みども…薄々…それ…、感ずいてる。」
「え~~~……。」
「だってさ。高校時代でしょ。そして男性の名前…みたいのが、ユウマ。遊ぶ馬と書いて、ユウマって読めるし。それがアスマって。…しかもよ。しかも。」
「うん。」
「みどが言っていた右足骨折…。これも遊馬君、自分も右足骨折だって…。」
「……。」
「ただ、病院名だけはわかんないけど…。偶然、重なりすぎ。」
「うんうん。」
「そして、もう一つ。」
「ふん…???」
「あのみどよ。確かに高校時代…かも…しんないけど…。そんな…普通の男子に、惹かれると思う…???」
その万美の声に尋音、歩きながら右人差し指を顎に、
「うんうん。」
「ユッキがその証拠。みど、今、みどにユッキがいなくなったら、大変よ~~。」
それを聞いて尋音、
「かかかか。それは確かに。言える~~。」
「でっしょう~~。」
「それはそうと。最近、税(ちから)さんの名前、出てこないけど…。」
その尋音の声に万美、
「へっ…???税…???ば~~か。出るわけないじゃ~~ん。2年間、シンガポールだよ~~。今頃躍起んなって仕事、してるよ。初のシンガポール進出。その支店長だもん。逆に、頑張ってもらわないと。」
「…で…、2年後には…めでたく、ゴールイン…???」
その尋音の声に万美、
「まね~~。今のところ、その予定。その証拠に…。ほれ。」
ポケットからスマホを取り出して。LINEのやり取りを…。
尋音、
「おやおや、これは、これは、御見逸れいたしました~~。」
税とは、万美の恋人、綾小路税(あやのこうじちから)。
シンガポールに初進出した日本食料理の支店長である。
万美の3歳年上の男性である。
「それよりあんたの方はどうなのよ。あの可愛らしい壇(だん)くん。」
尋音の左二の腕を自分の右肘で突っついて。
その声にいきなり赤くなって尋音、
「や~~だ、もぅ~~万美~~。ひひひひ。はい。ご心配なく。」
万美、その声に、
「おほ。」

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庄司紗千 つつじヶ丘の坂道で…。
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。