そして、その雅樂の店に薫朗が住み始めたと同時に、
ひとつの出会いが芽生えたのが翠と薫朗である。
薫朗が住み込みで雅樂の店を手伝うようになった。
翠も父親の死。そして失恋よりも、事故から、心を救われた事に感謝して、
新しい自分探しを始めて懸命に生きていた。
そんな時に、雅樂の店で出会ったのが薫朗である。
いつの間にかしょっちゅう、休日には電車で埼玉の自宅から2時間掛けて、
薫朗の部屋まで遊びに来るようになっていた。
けれども、その時は単に、友達感覚で…。
その後、翠が短期大学在学中に、知らず知らずの内に、ふたりの間に恋が芽生えた。
それをうすうす気づいていたのが雅樂。
ふたりに関しては全くの奔放主義。
「勝手にやれ。かかかか。いいじゃねぇか。なぁ~~、若ぇもん同士。」
それが功を奏し、翠が短大卒業と同時に、薫朗の部屋に転がり込んだと言う事である。
埼玉に住んでいる翠の母は、最初は反対したのだが、雅樂から説得されて同意。
「親が子供の言う事、聞けねぇでどうする。その内、子供から面倒看てもらうんだからよぉ。みどなら、心配要らねぇよ。しっかりとした子だ~~。みんなから好かれる子だぜ、この子はよぉ。店の客からも気に入られてらぁな。かかかか。ユッキ同様だぁ。」
そして、その内に、常連客から仕事のスカウト。
その後、翠から今度は薫朗が、
「お願い、仕事、一緒にして。」
と、誘われて現在に至る訳である。
但し、何でもかんでも雅樂に甘えてばかり。
…と言う事で、翠の方から、家賃を願い出たが、雅樂も仕方がなく、
「んじゃ…、光熱費に、色つけりゃ、良いんじゃねえか。」
と…。けれども、
「2万しか…もらわねぇぞ。」
「たった…、それだけ…???」
「かかかか。それだけで、何がいけねぇ。俺ゃ、子供がいねぇからよ。おまえらふたりが、いてくれるだけで、充分でぇ。ほらほらほらほら、冷めねえうちに、食っちまいな。」
翠、
「雅樂じぃ…。」
それから数か月後、パート募集で、「雅樂」で働き始めたのが、絃である。
「へぇ~~。じゃ…、杉浦君って…、料理…出来るんだぁ~~。」
野菜サラダを食べながら、橙。
「うん。雅樂じぃ仕込みだから、滅茶苦茶上手。」
翠。
「うんうん。雅樂じぃの焼く焼き鳥も…絶品だもんね~~。」
万美。
「雅楽(がらく)かなり、流行ってんじゃない…。いっつも、夜なんて、お客さん、凄いでしょ。」
尋音。
「お蔭さまでね~~。」
翠。
「それに、可愛い店員さんもいるしぃ~~。」
「うんうん。絃ちゃん。物凄い、笑顔いいもんね~~。…あれじゃ、客も入るわ~~。」
「おっと、いたいた。みど。ユッキから伝言。」
呉羽。
「さて。仕事、仕事~~。」
万美。
「はいな~~。」
尋音。

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庄司紗千 つつじヶ丘の坂道で…。
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。