侑佳、震える唇で…、
「ばかみたい。だめだぁ~。はは…。」
バッグからハンカチを出して、そのまま目と鼻に。
そして、弱々しい声。
「浩……。ごめんね。」
そして舌をペロリと。
「泣かない。…って決めたのに…。…やっぱり…。」
そして、
「へへ。」
真っ赤な目をして鼻を啜り…。両腕をお腹の前に真っ直ぐ伸ばして…。
泣き顔にも笑顔で、涙を目に溜めて、
「赤ちゃん…、流産したの…。」
浩一、
「流産って…、おま…。」
「直道さん…。」
「うん…。汀…社長…???」
「うん。」
「優しく…してもらってる。お義母さんも…お義父さん…にも…。」
「…うん。」
そして、また涙…流して…。
「…でも…。…でも…、辛い。」
浩一、泣き顔の侑佳を見ながら…、
「…つ…ら…い…。」
侑佳、声も出さずに、首を縦にコクリと…。
「…でも…。でも…全部…、私のせい…。」
「おま…えの…。せい…って…。」
「分かっていた…。分かって…いたけど…。でも…。」
平凡な家庭で暮らしていた侑佳。
それがいきなり事業家の家に嫁ぐ事になった侑佳。
優しい夫、義母。けれども、結婚後の生活は、
今までの生活とは環境から何から何まで違っていた。
優しいけれど、格式が高過ぎたのだった。しかも、結婚後は確実に汀の家で、
会社勤めなど許されなかった。当然の事ながら、今まで付き合っていた友達も…、
ひとりふたりと、侑佳の元から去っていった。
ただ…、直道と結婚した後には事業家の奥様としての友達が出来てはいたが…。
今までの友達とは体質が違っていた。
浩一の顔を見て、今までの事が頭の中で巡り巡っていた。
けれども、わずかに、頭の中に浮かんだ顔があった。
義父の惠の顔だった。
そして、
「浩…。」
浩一、
「…ん…???」
「会ってくれて…、ありがと…。」
「えっ…???」
「ほんとは…。」
顔を浩一から逸らしてレストランの雰囲気を感じながら、
「浩の…、顔に…会いたかった。」
「侑…佳…。」
「ううん…。でも…、勘違いしないで…。私は…、汀直道の妻…。」
浩一、
「……。」
「私…、バカだった~~。」
目は赤いものの、涙は止まっていた。
そんな顔で無理やり笑顔を作って…。
テーブルにウェイトレス、
「お決まりでしょうか…。」
侑佳、
「あっ、ごめ~~ん。」
いきなり目の前で両手を合わせて、
「ねね、浩…、何食べる…???」
浩一、
「えっ、え~~……。」

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