全く微動だにしない麻衣子。
ひとりの男性が椅子を持って麻衣子に。
敏光、
「すみません。」
その椅子を持って、麻衣子に、
「麻衣子。」
ゆっくりと椅子に腰を落ち着かせる麻衣子。
順子、敏光に、
「パパ…、警察の…???」
敏光、
「あぁ…。」
年長の男性、
「実は……。」
祭壇のそばで母親の順子に寄り添うように虚ろな目の麻衣子。
読経の中、参列した弔問客の焼香が続く。
高志の友人知人が麻衣子の前で泣きながら挨拶をして、
また麻衣子の友達も麻衣子を抱き締めながら、麻衣子と一緒に泣いた。
そばの順子は、ただ、ただ、わずか1年数ヵ月の結婚生活に終止符を打たれた麻衣子が、
不憫でならなかった。
一番の友達の知寿子、涙でぐしゃぐしゃになりながら、
「私はいつもマコのそばにいるから。大丈夫。守ったげる。ねっ、おばちゃん、麻美。」
その知寿子の声に順子も泣きながら、
「ありがとうねぇ~、チズちゃん。マコの事、お願いねぇ。」
「はい。」
声にもならないような声で、
「だからマコ。今日は思い切り泣いちゃお。」
そう言いながら、お互いに抱き締めながら泣く知寿子と麻衣子。
棺の前で泣き崩れる2人の老人。
「高志~。」
高志の祖父、久島栄(さかえ)である。
「こんなに…なって…。うっうっ。」
そして高志の祖母、久島英(ひで)である。
「申し訳…、ありません。私たちが着いていながら…。」
老夫婦に腰を曲げながら詫びる敏光。
高志に両親はいない。高志が幼くして交通事故で亡くなっている。
その後、老夫婦が高志を育てていた。
高志の訃報を聞き、広島から駆け付けていた。
「ん~や。中川さんは…何も。」
栄。
「私ら、中川さんには助けてもろうとる。けど…、高志が…不憫でな…。うっ、うっ。」
葬儀は全て中川家に任せ、葬式が終わり、
お骨分けをしてもらい老夫婦は東京を後に…。
「麻衣子ちゃん。ありがとな。」
と、英のその一言を麻衣子に残して…。
「おじいちゃん。おばあちゃん。…ごめんね。」
麻衣子。
そして1ヵ月が過ぎた。
幾ら親友の知寿子の慰め、そして励ましの言葉であったとしても、
高志の死から10日間くらいは自分を見失っていた。

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庄司紗千 つつじヶ丘の坂道で…。
※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。