「ほら…、いつだったか、私がメーカーのイベントに招待された時、あったじゃない。」 直ぐ様、健介の頭に浮かんだのが、初めて見る奈々子のモデルの姿。
そして、夕方の、また仕事姿になった奈々子…。
「あの日の夕方…、イベントの帰りの二次会に向かう途中で、遠くから…健介と彼女が、肩寄せ合って歩いているところを見たのよ…。」
「……。」
「でも、その時はまだ、その彼女が、片倉奈々子だとは知らなかった。」
健介は左手でしっかりと口を押さえるようにして…。
「…でも、あの、辺見さんとの食事の時…、お店を出て行く彼女を見て、どこかで見たような印象を受けたの…。」
ゆっくりとため息を突き、空を上目遣いで見ながら、
一度紗友莉を見てまた前を向き、
「…で…???」
「…そして…今日のお昼過ぎ…。…ある書店で…、ばったり…、彼女に会ったの。余りに偶然…。」
「…それで…か…。」
「あんな綺麗なモデルが…、本屋で…、しかも…あんな…恰好で…。」
そう言いながら、また涙が溢れて、小さな言葉になって…。
唇を震わせながら…。
「レジ…してるのね…彼女…。はぁ…ん…。黒縁の大きなメガネ。そして髪型なんて…、両側からフィッシュボーン。全く目立つ訳ないよ、あんな恰好…。うっ…あぁ…。」
黙って紗友莉の泣きながらの話を聞く健介。
「…でも…あの人が…片倉…奈々子。ネームプレート見て…、確信した。…彼女も…私を見て、驚いてた。」
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