「ほら…これ…。」 そう言って、自分の名刺を…紗友莉に差し出す拓哉。
「言っておくが…、悪戯電話…よこすなよ。」
開いた窓から手を差し出し拓哉の名刺を受取り、
「うん、分かった、ありがと。」
「じゃな、気を付けてな…。」
助手席の窓を上げながら、左手を振りながら、今来た道を戻る拓哉。
全くこの前のジミーとのこれと同じシーンを思い出し、
けれど、全く異なる感じに浸り、ある意味では、
新鮮で温かい感触に浸っている紗友莉だった。
「河合…拓哉…。か…。」
その日以来、紗友莉からジミーに電話をすることはなかった。
それよりも、逆に、数回はジミーから紗友莉のスマホに電話が掛かっては来るのだが、
一切紗友莉がその電話に出る事はなく、
やがて、ジミーからも電話は掛からなくなっていた。
そして遂には、紗友莉のスマホからも消えてなくなっていた。
それとは逆に…、
「もしもし…河合さん。鮎川です。」
「だから~悪戯電話掛けてよこすなって言っただろ…。」
「…んもう…、河合さん…、冗談ばっかり…。ハハ…。」
「…ハハ…悪りぃ、悪りぃ…。…で、どうした…???ん…???」
ジミーの電話と入れ替わり、今度は河合の電話番号の登録、
そしてリダイヤルが頻繁になっていた。
けれども…、そんな紗友莉の新しい出逢いなど、
知るはずもない健介。
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