一瞬…目を逸らしたのではあるが、「まさか…。」と、思い、 もう一度同じ方向に目をやれば、やはり…数時間前に見た女性、
そしてその隣にはハッキリと健介の顔…。
逆に紗友莉の方が、顔を見られたらまずいと言う気分になり、
目を逸らしながらスタッフと共に歩き続ける。
そんな紗友莉の表情に気が付いた一人の担当者スタッフが、
「あの…鮎川さん…どうかしました…???」
最初は、そんなスタッフの声も聞こえなかったが、
「鮎…川さん…???」
と、少しだけ声を高く自分の名前を呼ばれた時には…。
「…えっ、ハイ…???えっ…あっ…、何…???」
「どうか…しました…???気分でも…???」
「…あっ、いえ…別に…何でも…ハハ…。」
「びっくりしましたよ…、いきなり口元を左手で覆いましたから…。気分でも悪くなったかと思って…。大…丈…夫ですか…???」
「…ええ…大丈夫です。ちょっとこの景色観てて、ある事…思い出しちゃって…。」
「何々…、以前に、ここで素敵な事あったりして…。」
「やだ…、そういう事じゃないですよぉ。」
そう言いながら、紗友莉、少しだけ目を潤めて、
鼻水を啜り、スタッフと共に…。けれども歩きながら…。
「…えっ…、何で健介…ああいう人と…、そんな…。…でも、もしかして…あの人が、健介のあのワイシャツ…???」
あの日、お昼に土砂降りの中、
会社のアトリエに雨にずぶ濡れで入ってきた健介を思い出していた。
その時の健介の着ているワイシャツ…。
「あれって、あの人から…。新品の…。」
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